住む場所をなくす高齢者は少なくない

世界でも類を見ない超高齢化社会へ突入している日本。医療など様々な分野で対応が迫られている問題だが、住まいに関しても例外ではない。

高齢者の住まいとしては、老人ホームを思い浮かべる人も多いだろう。これには大きく分けて2種類ある。
一つは民間企業が運営する有料老人ホーム。一般的な分譲マンションと同じような比較的豪華な仕様で、居室も広めのタイプが多い。その分費用は高く、入居一時金は1人当たり数百万円から数千万円。毎月の利用料は十数万円から数十万円となる。平均的な年金受給額が20万円前後なので、年金だけで住むことは難しいだろう。
もう一つは国や自治体から補助金が出ている特別養護老人ホーム。入居一時金がなく、月々の利用料も1人当たり10万円前後と安価。一般的な年金受給者ならば住める金額だ。しかし、それゆえ待機者が多く、厚生労働省によると2013年度で52万2,000人に上っている。前回調査の2009年度から約10万人(24%)も増加している状況だ。

また、昨今の高齢者は、病気などによって医療費がかさみ、住宅ローンや家賃が支払えなくなることで住む場所を失うといった事例も少なくない。いわゆる老後破産だ。

今までは何不自由なく暮らしていても、入院などをきっかけに医療費がかさみ、老後破産となってしまうケースがある今までは何不自由なく暮らしていても、入院などをきっかけに医療費がかさみ、老後破産となってしまうケースがある

無料低額宿泊所は玉石混淆の状態

老後破産をしてしまい、頼りになる身内もいない人の多くは、生活保護を申請することになる。
厚生労働省の被保護者調査によると、2015年9月時点の生活保護受給世帯は162万9,598世帯となり過去最高を更新した。世帯別では、高齢者世帯(男女とも65歳以上、またはこれらに18歳未満の未婚者が加わった世帯)が全体の49.4%を占め最多となっている。母子家庭は6.5%なので7.6倍だ。

このような経済的に困窮する高齢者の受け皿となり得る施設に、無料低額宿泊所がある。これは社会福祉法に規定されている「生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、または宿泊所その他の施設を利用させる施設」だ。
ところがこの施設を悪用するケースも少なくないようだ。運営者が利用者の生活保護費をだまし取るといった事件が度々起きている。
また、個人スペースは2段ベッドの1段分のみで、食事も粗末なものしか提供しないといった劣悪な環境の施設が存在することも問題になっている。もちろんすべての施設が悪いわけではないので、入居時は非常に困った状況だろうが、施設の見極めはしっかり行いたい。

年々増え続けている生活保護受給世帯数。そのなかでも高齢者世帯は半数近くを占めている(出典:厚生労働省HP)年々増え続けている生活保護受給世帯数。そのなかでも高齢者世帯は半数近くを占めている(出典:厚生労働省HP)

自宅を担保に生活費を借りられるリバースモーゲージ

総務省の2013年の調査では、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみ無職世帯の1か月当たりの支出額は27万2,455円だった。このうち21万4,863円は年金収入などでまかなっている。つまり毎月の収支は赤字。残りの5万7,592円は預金などを切り崩している。多くの人にとって老人破産は他人事ではないだろう。

しかしそのような生活に困る状況でも、やはり住み慣れた家でずっと暮らしたいと考える人は少なくないはずだ。そこで検討したいのがリバースモーゲージだ。これは自宅を担保に生活費などのお金を借り、自分の死後に売却して一括返済するという仕組み。現在は都市銀行を含め、様々な金融機関などが取扱っている。

その最大のメリットは、担保となる自宅に住みながら生きている間は返済義務がないということだ。しかも金融機関によって若干異なるものの、使い道は基本的に自由。生活費はもちろん、家のリフォーム、住宅ローンの返済などにも利用できる。
子どもがいないので、死後に家はいらないといった人には魅力的だろう。

損をするのか得をするのかは人それぞれ。専門家に相談を

ただし残念ながらリバースモーゲージにも次のようなデメリットはある。

・意外に低い融資限度額
リバースモーゲージの場合、金融機関がお金を回収できるのは、借主の死後。貸してから回収できるまでかなりの期間がある。その間担保となる不動産価値が暴落するかもしれない。このようなことから融資限度額は、不動産の時価の50%または一律1,500万円までといったように低めに設定されている。

・担保割れの可能性
ご存知のように不動産価格というものは常に一定ではない。もし市況が悪化して金融機関が担保不動産の評価額を下げれば、今まで借りた金額が評価額を上回る担保割れになるということもあり得る。その場合は、差額分を返済しなければならない。

・長生きをして限度額に達してしまう可能性
リバースモーゲージの借入額は、「1年間の生活費は○○万円で20年間」といったように生きている期間から計算して設定することになる。しかし、それ以上生きることも当然あり得る。そうなった時点で生活費をどう工面するかを考えておかなければならない。

ほとんどの人にとってリバースモーゲージを検討する機会は一生に一度だろう。知り尽くしている人は少ないはずだ。したがってこのようなメリット・デメリットを考慮して、自分にとって損か得かを判断するのは非常に難しいだろう。お金を借りずに自宅を売却して、近所の賃貸物件に住み替えるという手もある。ここはファイナンシャルプランナーなどの専門家と相談しながら最善策を探るのが得策だろう。

2016年 01月24日 11時00分