不足している中所得者の高齢者向け住宅

介護の必要性を問わず低所得者層と高所得者層の高齢者向けの住宅が充実する一方で、自活できる中所得者向けの住宅にはあまり目を向けられてこなかった介護の必要性を問わず低所得者層と高所得者層の高齢者向けの住宅が充実する一方で、自活できる中所得者向けの住宅にはあまり目を向けられてこなかった

内閣府の2014年版高齢社会白書によると、65歳以上の高齢者人口は3,190万人、総人口に占める65歳以上人口の割合は25.1%でいずれも過去最高だった。

このような状況に伴い、高齢者向け住居の不足が顕在化している。たとえば特別養護老人ホームの入居待機者は2009年では42万人だったが、2014年には52万人と10万人増えている。

しかもこれは氷山の一角だ。高齢者向け住宅にも色々ある。特別養護老人ホームは、介護を必要とする中・低所得者向けの福祉施設。一方で自立した生活が可能な人で比較的低所得者向けの福祉施設とされているのが軽費老人ホームや養護老人ホームなど。そして自活可能、要介護に関わらず比較的高所得者向けとされているのが民間の有料老人ホームといった位置づけだろう。

ここで見落としがちなのが自活できる中所得者向けの住宅だ。公・民問わずこのカテゴリーにはあまりタッチしてこなかったため、持ち家のない人たちなどは通常の賃貸住宅を探すことになり、高齢者ゆえに入居を拒否されるといった問題があった。

2011年に登場したサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

そこで2011年施行の「高齢者の居住の安定確保に関する法律」を受けて登場したのがサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)だ。

これには基本的に民間の賃貸住宅ではあるものの、対象者を60歳以上に限定し、住居面積やバリアフリー構造、生活支援サービスの提供といった条件が定められている。中所得層の高齢者にとっては賃貸住宅の選択肢が増え、事業者にとっては人口減などで伸び悩む住宅市場の中で数少ないビジネスチャンスとなっている。

政府は高齢者の安定的な住環境を整えるため、次のようなサ高住の供給促進策を行っている。

・新築費用の10分の1、改修費用の3分の1を補助(上限100万円)
・固定資産税や不動産取得税の軽減といった税制措置
・住宅金融支援機構の融資要件緩和

市場のニーズ、そしてこれら政府の推進策などによってサ高住の登録戸数は、2015年4月末現在で18万戸に届く勢いだ。

東京都がサ高住に手厚い補助金

ところがこれでもまだ十分に供給されているとはいえないのが現状だ。特に地価の高い都心部では、採算の問題などからほとんど見当たらない地域もある。

このような背景から東京都では独自の補助制度を拡充した。具体的には以下のような内容で事業者を募集している。

・国整備費補助(100万円/戸)に加え都補助(100万円/戸)
・エレベーターを設置する場合、3分の2の国補助に加え、新たに3分の1の都補助を実施(補助率10分の10(1,500万円/基))
・従来のバリアフリー工事への補助に加え、サービス付き高齢者向け住宅への用途変更に伴い必要となる台所設置工事等を補助対象に追加(100万円/戸)

くわしくは東京都のホームページを確認してほしい。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/BOSHU/2015/04/22p4e100.htm

東京都はこの制度などによって、2015年3月1日現在1万5,886戸を2025年度には2万8,000戸にすることを目標としている。

1人暮らしをする60歳以上男性の約3割は1日に1回も会話をしていない

では、このように高齢者向けの住宅の供給を増やすことで、すべてのシニア世代は幸せな生活を送れるのだろうか。
どうやら問題はそんなに単純ではない。2014年版高齢社会白書によると、1人暮らしをする60歳以上男性の約30%は1日に1回も会話(電話やEメールを含む)をしていない。また、夫婦のみ世帯でも約10%は1日に1回も他人と会話をしていない。
近所づきあいに関しても、1人暮らしの男性の半数以上は挨拶をする程度で、親しくつきあう人はいないという。
このように孤独な生活をおくる高齢者は、出不精となることで心身の機能が低下する「生活不活発病」になる可能性が高くなる。

様々なサービスを受けやすい老人福祉施設やサ高住、有料老人ホームに住む人は、このような状況になりにくいだろうが、持ち家に住む人にも何らかのケアが必要だ。

高齢者の1割近くが1日に1回も他人と会話をしていない。特に独り暮らしの男性はその傾向が強い(出典:平成24年版 高齢社会白書(内閣府))高齢者の1割近くが1日に1回も他人と会話をしていない。特に独り暮らしの男性はその傾向が強い(出典:平成24年版 高齢社会白書(内閣府))

住み慣れた地域での生活を維持する「地域包括ケアシステム」

このような状況や高齢者の医療費の増加などを踏まえ、政府は「地域包括ケアシステム」の構築を急いでいる。これは団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステムだ。同システムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていく、としている。

このシステムの構築する上で、すべての市町村で2017年4月までに「介護予防・日常生活支援総合事業」が開始されることになった。
たとえば練馬区では2015年4月から以下のようなサービスが提供されている。

・見守り訪問、福祉電話
・外出の見守り
・生活必需品の買い物
・掃除や整理整頓
・衣類の洗濯や補修

くわしくはこちら↓で確認してほしい。
練馬区の「介護予防・日常生活支援総合事業」

多くの人にとって住み慣れた家から引っ越すことには抵抗がある。その気持ちは高齢になるほど強くなるのかもしれない。身近な市町村がきめの細かいサービスを提供してくれる「介護予防・日常生活支援総合事業」が、地元を愛する高齢者たちにとって幸せな制度となることを願う。

すべての市町村で2017年4月までに「介護予防・日常生活支援総合事業」が開始されることになった。画像は練馬区の例すべての市町村で2017年4月までに「介護予防・日常生活支援総合事業」が開始されることになった。画像は練馬区の例

2015年 08月04日 11時19分