少なからずある「高齢」が理由の入居拒否

すでに周知のことだとは思うが、今後日本は急速に超高齢化社会へと突き進む。厚生労働省によると、2015年の65歳以上の人口割合は26.8%だが、2055年には39.4%になる見通しだ。全人口の10人に4人はシニア世代になるのだ。
これに伴い世帯主が65歳以上の単独世帯や夫婦のみの世帯も増加。2015年の世帯数全体に占める割合は23.1%だが、2035年には28%になると推計されている。

ここで問題となるのが高齢者の住居だ。経済的なことなど様々な理由で民間の賃貸住宅に引っ越そうとすると、「高齢」が理由で入居を拒まれることが少なからずあるという。その訳には次のようなことが考えられる。

・収入が少ないので家賃を支払えなくなるかもしれないから
・部屋で亡くなってしまうと事故物件となり次の入居者募集に困るから
・身寄りが少ないため連帯保証人が見つからないから

まだまだ十分に供給されているとはいえないサ高住

「ならば高齢者向けの住居に」と考える訳だが、有料老人ホームは月額数十万円のところが多く、一般的な年金受給者には高額だ。また比較的安価な特別養護老人ホームは、2013年秋の時点で入居待ちが約52万2,000人にのぼるほど人気がある(厚生労働省の集計)。

このような背景から2011年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が施行され、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が登場した。これは民間の賃貸住宅に一定以上の床面積やバリアフリーなどの設備や少なくても日中はケアの専門家を常駐させるなどのサービスを加えることで、各自治体が登録する高齢者向けの住宅だ。入所条件は「60歳以上の高齢者または要介護者・要支援者」「60歳以上の高齢者または要介護者・要支援者の同居者」。

この施設の建築、運営には様々な補助金や税制優遇などがあることも手伝って同法施行以降、急速に登録件数が増えている。
とはいえ、まだまだ十分に供給されているとはいえず、また民営ゆえに採算を考慮せねばならないため地域によっては今後も期待できないところもあるだろう。

さらにこのような高齢者向け住宅特有のデメリットもある。たとえば入居者が同世代のため密なコミュニケーションが求められることや健康状態に差が出ることで、馴染めない人が出てくる。また、周りに若く活動的な人が少なくなることなどで自身の生活も不活発になり心身の機能が低下する「生活不活発病」になる可能性が増すかもしれない。
やはり体が自由に動くうちは、多少不便でも住み慣れた土地で気ままに暮らした方がいい、という考え方もあるのだ。

サービス付き高齢者向け住宅の登録戸数は現在も増加し続け、18万戸に届く勢い。しかし、地域的に濃淡があり十分供給されているとはいえない(出典:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム)サービス付き高齢者向け住宅の登録戸数は現在も増加し続け、18万戸に届く勢い。しかし、地域的に濃淡があり十分供給されているとはいえない(出典:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム)

東京都には「東京シニア円滑入居賃貸住宅情報登録・閲覧制度」がある

以上のような多様化する高齢者住宅のニーズに応えるため、やはり高齢者を拒まない民間の賃貸住宅が求められている。
そこで昨今の各自治体では様々な施策を打ち出している。たとえば東京都には「東京シニア円滑入居賃貸住宅情報登録・閲覧制度」がある。これは都で定める一定の基準を満たす高齢者の入居を拒まない賃貸住宅について、都が独自に実施する情報登録閲覧制度により、高齢者等に広く情報提供を行うものだ。
こちら↓のサイトで、区や沿線などから高齢者の入居を拒まない賃貸住宅を検索できる。
http://www.tokyo-machidukuri.or.jp/sumai/senior.html

「東京シニア円滑入居賃貸住宅情報登録・閲覧制度」の物件は、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターのホームページで確認できる。市区町村や沿線、家賃など細かい条件から検索可能だ(出典:公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター)「東京シニア円滑入居賃貸住宅情報登録・閲覧制度」の物件は、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターのホームページで確認できる。市区町村や沿線、家賃など細かい条件から検索可能だ(出典:公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター)

文京区が高齢者等の入居を拒まない住宅を普及促進

文京区の「文京すまいるプロジェクト」では、「文京区スマイル住宅登録事業」などを行っている。
「文京区スマイル住宅登録事業」とは、高齢者・障害者・ひとり親の入居を拒まない住宅を普及促進し、高齢者等の住環境を向上させ居住の安定化を図ることを目的としている。具体的内容は以下のようになる。

1.住宅オーナーの登録・謝礼の支払い
高齢者等の入居を拒まない賃貸住宅に対して住宅オーナーが区に登録し、その住宅に区が斡旋する高齢者等が入居すると、区から住宅オーナーに月額1万円の謝礼を支払う。また当該住宅が「エレベーターの設置や段差解消などのバリアフリー設備を設けていること」「ペットと住めるなど生きがいに配慮した工夫があること」「住宅オーナーの負担で居室内の死亡事故保険に加入していること」など、高齢者等の入居への配慮がされている場合は住宅オーナーへの謝礼を加算し、月額最大2万円まで支払う。

2.入居者への助成等
住宅オーナーが入居者の家賃の未納や残存家財の処分等で損失を被らないように入居者に対し債務を保証。また、公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターが行う「あんしん居住制度」の活用を促し、その経費の一部を助成する。
さらに、入居者に対しては住み替え費用及び2年間の差額家賃助成を行うほか、安否確認サービスやLSA(ライフサポートアドバイザー)による生活指導などの無料提供を行うことで住宅オーナーに安心感を持ってもらい、高齢者等の居住の安定を図る。

同制度は、既存の民間賃貸住宅の活用を前提に、入居を拒まれやすい高齢者等への住宅提供とバリアフリー対応などの設備部分等に対し助成する仕組みを構築した全国初の取り組みだ。

文京区がこのような制度を行う背景には、高い地価などによって未だ区内に民間によるサービス付き高齢者向け住宅が建設されていない、ということがある。
くわしくは文京区のホームページで確認してほしい。
http://www.city.bunkyo.lg.jp/tetsuzuki/jutaku/sumairujyutaku.html

高齢者が増え続ける日本では、今後このような試みが全国的に広がっていくはずだ。もし、年齢がネックとなって賃貸住宅の入居を拒まれることがあれば、居住する自治体に相談してはいかがだろう。

2015年 05月28日 11時06分