ワンルームマンションの建築規制は次第に強化されている

狭小ワンルームマンションの供給は年々減っていく?狭小ワンルームマンションの供給は年々減っていく?

ワンルームマンションの建築を抑制しようとする動きが強まっているようだ。建築指導要綱などによるワンルームマンションの規制は1980年代からあったが、2002年頃からはその内容が強化されたり、より実効性のある条例化が図られたりするようになった。東京都区部では2008年頃にその動きが周辺区にまで広がり、現在では23区すべてで条例または指導要綱による規制がされている。東京都区部以外でも、何らかの規制をしている都市は多い。

規制の大半は最低限の専有面積を定めるものであり、東京都区部ではほとんどが25m2を基準としている。これは2006年に定められた「住生活基本計画」において、単身者の「最低居住面積水準」が25m2とされていることによるものだろう。ちなみに同計画による「都市居住型誘導居住面積水準」は40m2だ。最低専有面積を20m2としているのは品川区と豊島区だけであり、品川区は第1種低層住居専用地域であれば25m2が基準となる。したがって、規制の対象は一定面積以下の狭小な住戸であり、ワンルームだけでなく、キッチンスペースを扉で仕切った1Kタイプの部屋も含まれる。

また、1997年から指導要綱によるワンルームマンション規制をしてきた渋谷区は、2002年に条例化(2003年1月施行)を実施し、その改正(2013年1月施行)によって最低専有面積をそれまでの18m2から28m2へ大幅に引き上げた。現在では最も厳しい面積基準となっているほか、駐車施設の付置や周辺の生活環境への配慮、ファミリー向け住戸の設置、一定時間以上の管理人の駐在なども求めている。

その他の区でも、ファミリー向け住戸の付置義務を課している例は多い。狭小住戸の数や規模に応じて、一定面積以上のファミリータイプ住戸を設置するよう義務づけ、1戸あたりの面積を40m2以上としているところが多いが、中には平均で75m2以上としている区もある。

その一方で、東京都区部の単身世帯数は約222万世帯(2010年国勢調査)にのぼる。ワンルームマンションの規制で専有面積が拡大することにより賃料が上昇し、学生や一人暮らしの高齢者が住みにくくなることも懸念されている。賃料の面で考えれば、都区部では規制前の古くて狭いワンルームしか選べない状況も生まれつつあるだろう。

ワンルームの建設に対して課税をしている豊島区

専有面積の拡大を誘導するため、ワンルームなど狭小住戸をもつマンションの建設に課税をしているのが豊島区だ。2004年6月1日に施行された「狭小住戸集合住宅税条例」に基づくもので、いわゆる「ワンルームマンション税」である。制度導入の背景として、区内の全世帯のうち単身世帯が約56%、区内の住宅のうち30m2に満たない集合住宅の占める割合が約40%に達し、いずれも東京都区部で最も高い割合であることが挙げられている。2014年度から5年間の制度継続も決まった。

この制度では、1戸あたりの専有面積が30m2未満の住戸が9戸以上となる集合住宅を新築するときに、1戸あたり50万円が課税される。ただし、狭小住戸の数が8戸以下であれば全額が免除され、9戸以上になれば全戸が課税対象となる。また、2012年4月1日からは「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)が減免対象となっている。ちなみに導入当初は29m2未満が課税対象だったが、条例の改正により2010年4月1日からは30m2未満が対象となった。

この税金は「法定外普通税」であり、使途を限定することなく一般経費に充当することも可能だが、豊島区では「ゆとりある住宅および住環境の実現、または生活環境の充実に資する施設整備の経費に充てる」としている。また、制度が導入された2004年度から2012年度までに約29億円の税収があったとされている。近年、住まいのアンケートなどによる人気エリアとして豊島区の順位が上昇傾向にあるようだが、この税金が寄与しているのだろうか。

ワンルームマンションのいったい何がいけないのか

自治体によって規制が進むワンルームマンションだが、単に狭い(最低居住面積水準を満たしていない)ことだけでなく、さまざまな弊害も挙げられている。もちろん、マンションの実態もそこに住む居住者も多様であり、心外に思う人も多いだろうが、一般的には単身居住者のマナーの問題を指摘されることが少なくない。

ゴミ出しのルールが守られず、適切に分別されなかったり指定日以外に出したり、指定場所以外へゴミを置いたり、出し方が乱雑だったりということもあるようだ。さらに自転車の路上駐輪や生活騒音などの問題が指摘されることもある。また、ワンルームマンションに住む単身者が地域に溶け込もうとせず、地元の行事に参加しない、自治会や町内会などに入らない、地域の住環境を良くしようとする意識がない、などといった理由で地域コミュニティの希薄化を懸念する声も多いようである。

さらに、住民票を異動させない単身者が多く、住民税も納めないのにゴミ収集などの行政サービスは受けるといった指摘がされることもあるようだ。入居者の入れ替わりが早いため、近隣の住民から見れば「顔も分からない、挨拶もしない」という「見知らぬ、よそ者」がどっと押し寄せてくる印象を持たれることもあるだろう。近隣住民と交流がもてないことに起因する感情的なトラブルも否定できない。

また、1人のオーナーが所有する賃貸ワンルームマンションでは管理人がいない例も多いほか、投資物件として分譲されたワンルームマンションでは所有者がバラバラなため、管理組合が機能しないこともある。そのぶん管理会社の役割は大きいわけだが、入居者が退出して家賃収入がなくなると、途端に管理費や修繕積立金を滞納する所有者も少なくない。あまりの滞納の多さから管理会社が自ら手を引いてしまい、一部に居住者がいるにもかかわらず廃虚化が進んでしまったマンションの事例もある。

その一方で、ワンルームマンションの規制には、税収や定住者の増加を図るため、ワンルームに居住する単身者よりもファミリー世帯を誘致したい自治体の思惑も絡んでいることだろう。

ワンルームにも家賃助成がある?

自治体による家賃助成制度として一般的なのは「特優賃」(特定優良賃貸住宅制度)だろう。また、一部の自治体には新婚世帯向け(大阪市、横須賀市など)、Uターン・Iターン世帯向け(松江市など)、中心市街地への居住促進などを目的とした家賃助成制度がある。さらに子育て世帯向けやファミリー世帯向けの家賃助成をしている自治体は比較的多い。

しかし、実質的にワンルームマンションはこれらの対象とならず、ワンルームを含む家賃助成の大半は高齢者世帯、障がい者世帯、ひとり親世帯、離職などにより住宅を喪失するおそれのある者、生活保護対象者など、いわゆる「住宅セーフティネット」の受け皿として活用される場合だろう。

一般の学生や会社員などの単身者を対象とした「民間賃貸住宅家賃助成」制度があるのは、東京都では新宿区だけだ。区内に居住して住民登録がある18歳から28歳の単身者で、家賃が9万円以下の場合に、月額1万円、最長3年間の家賃助成を受けることができる。ただし、募集期間は年に1回、2週間程度であり、その倍率は高いようだ。

ワンルームマンションの需要はこれからどうなる?

かつては単身者の住宅として広く受け入れられたワンルームマンションだが、規制によって新規に供給される物件の専有面積が広くなり、単身者向けもワンルームではなく、1DK、1LDKといった間取りが主流となっている。狭くても1Kの場合が多いだろう。

また、マンション設備の進化に伴い無料のインターネット、オートロックのエントランス、ホームセキュリティ、さらに最近はエコキュートなどの需要も増えているようだ。単身者であってもシステムキッチン、2口以上のコンロ、ウォークインクローゼット、独立洗面台などの設備を希望する例が多いという話も聞かれる。従来のワンルームでは対応できない希望条件だ。

希望はともかくとして、予算的に厳しい者が妥協してワンルームや1Kに住む例はこれからも多いと考えられる。ただし、物件が過剰に供給されているエリアでは賃料の水準が下がり、低予算でも1DKや1LDKへニーズが移ることもあるだろう。古くなったワンルームマンションは、かつての4畳半1間の木造アパートに似た位置づけになっていくのかもしれない。

ワンルームマンションに代わって2000年頃から注目を集めているのが、30m2以上60m2未満のいわゆるコンパクトマンションだ。こちらは投資需要だけでなく、単身者やDINKS、SOHO、あるいはセカンドハウスなどの実需の受け皿にもなっている。

いずれにせよ、単身者が安く賃貸物件を借りようとするとき、「新しいワンルームマンション」という選択肢は年々少なくなっていくはずだ。

2014年 05月18日 12時05分