ネット通販の普及などによって宅配物の約2割が再配達に

宅配物の約2割は再配達となっている。これはドライバーはもちろん、受け取る側にとっても負担だ(出典:国土交通省「宅配の再配達削減に向けた検討について」を元に作成)宅配物の約2割は再配達となっている。これはドライバーはもちろん、受け取る側にとっても負担だ(出典:国土交通省「宅配の再配達削減に向けた検討について」を元に作成)

最近になって宅配業界の労働環境に関するニュースをよく耳にする。たとえば、宅配便国内最大手のヤマト運輸は再配達について、2017年4月24日から当日再配達の受付締め切り時刻を繰上げている。また、6月中には宅急便の配達時間帯の指定枠を一部廃止し、6区分から5区分に変更すると発表している。

再配達が増加している背景には、宅配物そのものが増えていることがある。国土交通省が2016年7月に公表した宅配便取扱実績によると、1993年度は年間約12億個だった宅配物は、2015年度は年間約37.5億個になった。20年間で3倍以上増えている。その理由には、昨今インターネット通販やオークションが一般的になったことなどが考えられる。

この状況に加えて共働きや単身世帯も増えていることから、日中は不在がちとなり、宅配物が再配達となるケースが激増しているようだ。同省による「宅配の再配達削減に向けた検討について」を見ると、宅配物の約2割が再配達となっている。また、同検討会の報告書資料からは、いかに再配達による社会への影響が大きいかが分かる。

●労働生産性への影響
・年間1.8億時間⇒年間9万人の労働力に相当

●CO2排出量への影響
・年間で41万8,271tのCO2が発生

このように再配達は社会への影響が大きいだけでなく、そもそも受け取る側にとっても依頼の電話をかけたり、指定した時間に必ず在宅していなければならなかったりといった負担がある。やはり社会のためにも個人のためにも、再配達はなくすに越したことはない。

電源の確保がネックだった一戸建て向け宅配ボックス

再配達の低減策の一つとして期待されているのが宅配ボックスだ。これは玄関周りに設置する箱状の物。使い方は製品によって様々だが、大まかには以下のようになる。

1.ドライバーが扉を開けて宅配物を入れる。
2.内部に設置された印鑑で伝票に押印する。
3.不在伝票に暗証番号を記載しポストに投函する。
4.帰ってきた住人は暗証番号を確認して宅配ボックスを開けて商品を受け取る。

すでにマンションなどの集合住宅では一般的になりつつある設備だが、一戸建てにはまだまだ普及していない。しかし、一戸建て用宅配ボックスの歴史は意外に古いことをご存知だろうか。例えば、家電大手のパナソニック株式会社(以下、パナソニック)では1992年から発売している。当時はバブル期で、お中元やお歳暮が増加し、さらにスキー場やゴルフ場へ手ぶらで行ける宅配サービスも開始された。このような状況で宅配ボックスのニーズが高まっていたのだ。

ところが、「一家に一台」という状況にはならなかった。その理由の一つとして考えられるのが電源の確保だ。当時の宅配ボックスは施錠などに電源が必要だった。しかし、あらためて配線工事をするとなると、それなりのコストがかかる。わざわざそこまでする既存住宅は少なく、どちらかというと新築一戸建て向けだったようだ。

月日が流れて宅配ボックスは、ネット通販やネットオークションが一般的になった2008年頃から再び注目されはじめた。現在はパナソニックをはじめとして、大手ハウスメーカーや住宅設備メーカーなども発売している。最近の宅配ボックスには電源を用いなくても作動する機械式もあり、玄関周りの電源は不要。そのため、既存住宅でも後付けしやすい。また、大手ハウスメーカー中には分譲一戸建て住宅の標準装備としたり、屋外から入れた宅配物を玄関の中から取り出せるタイプなども提案している。

パナソニックの宅配ボックス「コンボ」(ミドルタイプ)。電気工事不要で後付けできる。暗証番号ではなく鍵式。印鑑は1回のみ押印できる。外寸:幅390×奥行457.5×高さ590(mm) 。受け取りできる荷物の最大サイズと重さは340×360×500(mm)で20kgまで(画像提供:パナソニック)パナソニックの宅配ボックス「コンボ」(ミドルタイプ)。電気工事不要で後付けできる。暗証番号ではなく鍵式。印鑑は1回のみ押印できる。外寸:幅390×奥行457.5×高さ590(mm) 。受け取りできる荷物の最大サイズと重さは340×360×500(mm)で20kgまで(画像提供:パナソニック)

宅配ボックスの設置によって再配達率が49%から8%に減少

このような宅配ボックスへの追い風を背景に、パナソニックは実証実験を行った。2016年、福井県あわら市の共働き・女性・育児を支援する「働く世帯応援プロジェクト」に参画。10月より106世帯のモニターへ宅配ボックスを設置し、103世帯の1か月間(12月1日から31日)の宅配便の配達状況を集計し、中間報告として発表した。

福井県の共働き世帯の割合は56.1%(2010年国勢調査)と全国で一番高い。その中でもあわら市の共働き率はさらに高く59.6%。そのため、モニター世帯の以前の再配達率は49%だった。しかし、宅配ボックスの設置によって再配達率は8%に減少。宅配物総数761個のうち宅配ボックスで受け取ったのは299個だった。つまり、299回の再配達を低減できたのだ。パナソニックによるとこれは約65.8時間の業務時間削減(*1)や約137.5kg(*2)のCO2排出量の削減に相当するという。

*1:国土交通省調査 宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会 報告書 2015年より算出。宅配便1個の配達に係る作業時間は約0.22時間。宅配便1個の配達に係る作業時間とは宅配便配達に係る、仕分け、積み降ろし、車両の運転、車両から消費者への配達、資材整理等を含む時間
*2:国土交通省調査 宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会 報告書 2015年より算出。再配達1回あたりの排出CO2は0.46kg

パナソニックが福井県あわら市で行った宅配ボックスの実証実験では、宅配物の再配達率が49%から8%に減少した<BR />(画像提供:パナソニック)パナソニックが福井県あわら市で行った宅配ボックスの実証実験では、宅配物の再配達率が49%から8%に減少した
(画像提供:パナソニック)

普及の加速によって様々な課題が解決されることを期待

実証実験に参加したモニター家族のスナップ。モニターからは再配達に対して「細かな時間指定をするのも申し訳なくて、正直『めんどくさい』と思っちゃいます」といった声があった(画像提供:パナソニック)実証実験に参加したモニター家族のスナップ。モニターからは再配達に対して「細かな時間指定をするのも申し訳なくて、正直『めんどくさい』と思っちゃいます」といった声があった(画像提供:パナソニック)

上記のように、あわら市の実証実験では再配達の回数が劇的に減少した。とはいえ、まったく無くなったわけではない。ここに今後の宅配ボックスの課題が見えていそうだ。

実証実験での宅配ボックスが稼働できなかった総数は57回。おもな理由の内訳は以下のようになる(合計で57回にはならない)。

1.ドライバーが宅配ボックスに入れてくれなかった:16回
2.ボックスがいっぱいだった:14回
3.宅配物が冷蔵や冷凍だった:14回
4.宅配物が大きすぎて入らなかった:6回

「1」に関しては、ドライバーが宅配ボックスの存在に気づかなかったり使用方法を知らないといった原因が考えられる。これらは周知徹底をすれば解決できるだろう。おもな課題となるのは「2」以下だ。「2」の対策としては2つ以上の宅配物でも対応できる仕組みにしなければならない。物理的には可能だろうが、扉が多くなるなどその分コストがかかる仕組みになる。「3」は保冷機能などを追加すればよさそうだが、それには電源が必要だ。「4」に関しては、どこまで大きくするのか、また、一般的な玄関周りにそのスペースが確保できるのか、といったことを細かく調査してから製品化しなければならない。

宅配ボックスの中でも特に一戸建て向けは、これから普及していく時期に入る。たとえば、パナソニックでは2015年度と2016年度を比較すると2倍以上の台数が売れたそうだ。2017年度は、4月の時点ですでに当初の目標台数を上回ることが見えてきたとのこと。ネット通販の市場拡大は今後さらに勢いを増すはずだ。ならば宅配ボックスの普及の勢いも加速するだろう。製品の普及時期は、その改良も加速する。上記の課題はノウハウの蓄積とともに改善するはず。そのことを期待しつつ、今現在の製品の中から自分にとって最適なものを選びたい。

取材協力:パナソニック株式会社
http://sumai.panasonic.jp/exterior/takuhai/combo/

2017年 05月02日 11時05分