約90年の歴史を持つ銭湯が、その面影を残す個性的な居酒屋に

2016年11月、東京都港区・JR田町駅近く。慶応仲通り商店街を進んだ場所に、一風変わった居酒屋がオープンした。約90年間営業した銭湯「万才湯」が閉店、その場所を改装した居酒屋「分福」だ。経営するのは複数の飲食店を営む食匠厨房。

「当社は田町駅周辺を中心に、独立した店舗を含めて15店舗ほど飲食店を経営しています。当社の会長が閉店した『万才湯』のオーナー様と懇意にさせていただいており、オーナー様から閉店の話を聞き、店舗としてリノベーションしました」と語るのは、同社取締役の浅井英彦さん。

銭湯から居酒屋へのリノベーションは珍しい事例だと思うが、「なぜ居酒屋に?」という質問も、古民家などをリノベーションし、飲食店を複数店舗経営している実績がある同社ではごく自然な流れだったという。また、銭湯の面影を残した店舗は、食匠厨房の親会社である大関商品研究所が設計し、建築まで手掛けている。

「分福」の外観と店内の様子。JR田町駅から国道15号を渡り、慶応仲通り商店街に入って徒歩1分ほどの場所にある。</br>銭湯の面影が残る個性的な店内のデザインも好評。銭湯当時の注意書きもそのまま残る「分福」の外観と店内の様子。JR田町駅から国道15号を渡り、慶応仲通り商店街に入って徒歩1分ほどの場所にある。
銭湯の面影が残る個性的な店内のデザインも好評。銭湯当時の注意書きもそのまま残る

昔ながらの文化を大切に残しながら、現代風にリノベーション

銭湯をリノベーションし、その個性的な佇まいで人気の「分福」。脱衣所だった場所は、タイルを使ったモダンな雰囲気が漂うカウンターやテーブル席に。テーブル席奥の鏡が、この店が以前銭湯であったことを思い起こさせる。そのまま置かれた体重計も目を楽しませるアイテムに。湯船を使った掘りごたつ席に座ると包まれるようなおこもり感があり、妙に落ち着く。この席を指定して予約する客もいる人気席だ。

空間を鮮やかに彩る壁に描かれた富士山の絵は、日本に2人しかいないと言われ、現代の名工にも選ばれた銭湯絵師、中島盛夫さんの作品。この店のオープンに合わせて依頼したそうだが、壁に富士山ときたら気分はもう銭湯である。

このような特徴的な部分に目がいくものの、店内をよく見ると欄間の使用や床の間の設置、廃材を利用したテーブルなど、どこかやさしく懐かしい印象だ。
「会長の大関は『昔ながらの文化を残したい』というポリシーを持っており、この店を含め古民家をリノベーションして店舗をつくる時はできる限り昔の形を壊さずに現代風にリノベーションしてきました。『何でも壊して建て直すのではなく、文化を継承することの大切さを建築業界に広めていきたい』と常々語っており、この店にもそのような思想が生きています」

壁に描かれた富士山、体重計、洗い場の鏡、浴槽など、まるで銭湯。</br>欄間の使用や床の間の設置など木の温もりに満ちた日本文化の香りも漂い、落ち着ける店内となっている壁に描かれた富士山、体重計、洗い場の鏡、浴槽など、まるで銭湯。
欄間の使用や床の間の設置など木の温もりに満ちた日本文化の香りも漂い、落ち着ける店内となっている

口コミやSNSの投稿を見て多数の客が来店。リピーターも多い人気店に

「サラリーマンが多い街ですから、日本酒やハイボールが人気ですね。それらに合うこだわりの海鮮料理を中心に提供しています」と浅井さん。口コミで来店する人、SNSの投稿を見て来店する人など、開店後約2ヵ月(取材時)にも関わらず早くも人気店に。

「お客様からご要望があれば喜んで写真をお撮りします。SNSで拡散していただければ店の宣伝にもなりますので。私たちは飲食店で料理が美味しいのは当たり前のことと考えています。料理の見た目の美しさ、心地よいサービスや演出に注力することで、お客様にご満足いただき、リピーターになっていただけるようにスタッフ一丸となっておもてなしをしています」

特に人気のメニューが、元銭湯だった店内の雰囲気を活かした「お造りの五種桶盛り」(1人前980円。注文は2人前から)や、朝獲れ魚を使った「目の前で選べる焼き魚・煮魚」(1尾1980円~2480円)。ほかにも、揚げ物、煮物、焼き鳥、鍋、サラダなどがあり、誰でも楽しめるメニュー構成。錫の酒器で提供される日本酒も数種類揃える。「銭湯といえば牛乳!」という人は、牛乳瓶を使ったカクテル「大人の珈琲牛乳」「抹茶ミルク」「苺ミルク」(各580円)など、「分福」オリジナルの飲み物も用意されているので頼んでみては。銭湯ファンはもちろん、いつもと違う雰囲気でお酒や食事を楽しみたいと考える人もぜひ出かけてみてはいかがだろう。

■分福(ぶんぷく)
住所/東京都港区芝5-23-16 TEL/03-6453-7189
営業時間/17時~24時(水・金・祝前日は朝4時まで) 定休日/なし

■食匠厨房
http://shokutakuchubo.com/

顔写真は、お話をうかがった食匠厨房 取締役の浅井英彦さん。「分福」は「お造りの五種桶盛り」や新鮮な朝獲れ魚を提供する</br>「目の前で選べる焼き魚・煮魚」など、特に魚料理に自信を持つ店。左下は「ふぐ皮ポン酢」(580円)。</br>銭湯に来た気分で食事とお酒が楽しめる。会話も弾みそうだ ※価格は税抜顔写真は、お話をうかがった食匠厨房 取締役の浅井英彦さん。「分福」は「お造りの五種桶盛り」や新鮮な朝獲れ魚を提供する
「目の前で選べる焼き魚・煮魚」など、特に魚料理に自信を持つ店。左下は「ふぐ皮ポン酢」(580円)。
銭湯に来た気分で食事とお酒が楽しめる。会話も弾みそうだ ※価格は税抜

2017年 02月20日 11時05分