新駅開業などで盛り上がる品川~田町エリアの今と昔

今回の「MAKE ALTERNATIVE TOWN 若手建築家5名による倉庫リノベーションの提案」は、フォーラムと彼らが提案するプランの模型展示が行われた。多くの人が集まり、その注目度をうかがわせた今回の「MAKE ALTERNATIVE TOWN 若手建築家5名による倉庫リノベーションの提案」は、フォーラムと彼らが提案するプランの模型展示が行われた。多くの人が集まり、その注目度をうかがわせた

JR山手線の新駅開業や、リニア中央新幹線の東京ターミナル駅計画などがあり、盛り上がる品川~田町エリア。近年、タワーマンションが建設されたりと洗練されたウォーターフロントとしての印象があるが、隣接する芝浦地区は「倉庫街」の風景も残る。

この地域は、戦時中の1944年には軍事施設や倉庫備蓄基地もあり、それに関連して周辺産業関連のため埋立地として利用されてきた。エネルギー関連の企業や、当時の電電公社もこのエリアに拠点を置いた歴史をもつ。
1990年代以降、再開発が盛んになり、大規模な高層住宅群や都営バス操作場などが建設される。住居、オフィス、そして倉庫と様々な顔を持つ特徴的なエリアとなったのだ。

進められる再開発と、この地域の「インフラ」と言える倉庫を併せて活用することで、より魅力的なまちができる可能性に注目し、10~20年後の芝浦を中心とした品川・田町駅周辺とウォーターフロントの未来を豊かにしていくための取り組みが、現在「倉庫リノベーション研究会」を中心に行われている。
2015年4月、若手建築家による倉庫リノベーションの提案を行う展覧会とフォーラム「MAKE ALTERNATIVE TOWN 若手建築家5名による倉庫リノベーションの提案」が開催されたので参加してきた。

まちのインフラ「倉庫」がもつ可能性

芝浦付近の様子。オフィス、住宅、交通インフラ、水辺と様々な顔を持つ特徴的なエリアだ芝浦付近の様子。オフィス、住宅、交通インフラ、水辺と様々な顔を持つ特徴的なエリアだ

「芝浦地域をかたちづくる倉庫は、かつては“3K職場(暗い・汚い・危険)”と捉えられていました。これを“かっこいいもの”にしたいと考えています」と語るのは、フォーラムに登壇した株式会社リソーコ 代表取締役の池田浩大氏だ。

戦後から倉庫街として活躍してきた芝浦地区だが、2000年以降、不動産金融証券化やEC物流の普及によるロードサイドの超大型高機能物流施設が大量供給されたことで、芝浦の倉庫は近年、老朽化の傾向にある。そうした中、倉庫をリノベーションして活用としようという考えが生まれたのだ。

住宅のリノベーション事例と比較すると、倉庫のリノベーションはあまり聞かないかもしれない。しかし実は、倉庫には多くのメリットがある。
例えば、広い空間や高い天井、柱が少ない構造や多くの荷物に耐える十分な荷重、スケルトンであるため設備対応が良い点などだ。一般の住戸やオフィス向けの建物ではなかなか実現できない要素で自由度も高いため、アイデア次第で活用の幅が大きく広がりそうだ。

芝浦ならではの面で言えば、水辺である点や、街区が約30~40mの大きさであり、まち歩きに適している点、駅から10分程度の立地に3000坪級の巨大な倉庫がある点などが挙げられる。今後の大規模再開発による人口、通勤者の増加にも対応するこのエリアで、水辺空間の個性や地域のインフラとしての倉庫を活かしてまちの魅力を高めるため、建築家たちはどのような提案を行ったのだろうか?気になったものをいくつか紹介したい。

「物を保管する」場から「情報を共有し、コミュニケーションを生む」場へ

運河沿いの地上6階建て倉庫のリノベーションを提案したのは、建築家の畝森泰行氏だ。
公共施設が少ないこの地域に、街に開いたコミュニティとして倉庫を活用するリノベーション発表を行った。そのテーマは「Shibaura Library」。「物を保管する」倉庫から、「情報を共有し、コミュニケーションを生む」図書館へと、建物の役割を変え、街に開くというコンセプトが印象的だった。

その活用方法は、次のようなものである。
ビル型であることと、荷重に耐えられる床を活かし、各階が分断され暗い印象である建物のフロアの4分の1を丸ごとくり抜き、1階から6階まで吹き抜けのような空間を作ってしまう。新しいスラブ(床版)をスキップフロアのようにずらして設置し各階を階段で繋ぎ、この吹き抜けから外の光を各階に取り込むことができる設計だ。構造補強用のスチール本棚を設置することで、用途と安全性を両立させる仕掛けもある。

各階には地域住民や企業のデータを格納したり、近隣図書館から団体貸出制度を利用して書籍を閲覧できる仕組みを設ける。「従来の図書館の機能を拡大し、情報を集約する地域の場といったイメージです。さらに1階には、水辺の雰囲気を活かした遊歩道やイベントスペースを作り、まちに交流を生み出す場としての役割を持たせています」(畝森氏)

右奥が吹き抜けとなっている部分で、各階ともここから光を取り入れることができる。</br>階ごとに異なる役割をもたせ、地域住民、企業、倉庫関係者など</br>異なる立場の人々が情報を介して繋がる右奥が吹き抜けとなっている部分で、各階ともここから光を取り入れることができる。
階ごとに異なる役割をもたせ、地域住民、企業、倉庫関係者など
異なる立場の人々が情報を介して繋がる

この地域ならではの環境を活かし、世界中の人に向けたショールームへ

一方で建築家の久保秀朗氏の提案は、この地域を縦横無尽に走る交通インフラと、物流に依存しているというまちの特徴に着目したものだ。
リノベーションの対象とするのは、建物の両側を首都高速道路と東京モノレールの線路に挟まれている倉庫だ。そこで、「倉庫+ショールーム」とし、「保管+見せる」機能を持たせたリノベーションを提案した。「東京モノレールの1年間の利用者は8,800万人、首都高羽田線は3,600万人と言われています。これだけの数の人が目にするとしたら、すごい広告効果があるのでは、と考えました」(久保氏)

その設計プランとは、窓に対してジグザグに壁をつくり、その外側をショールームに、内側を倉庫にするというものだ。倉庫とショールームを行き来できるようにして在庫を確認しながら商品を選べる便利さのほか、建物内にいる人だけではなく、外を走る車やモノレールからも商品を見えるようにする狙いがある。
窓に沿って並行に壁をつくらずジグザグにすることで壁の面積を増やし、多くを展示できるようにするだけでなく、車とモノレールの速度に合わせて壁の角度を変え、外からも商品が見えることを十分に意識されているプランである。

「羽田空港と品川を結ぶモノレールの乗客に見せることで、世界中の色々な人が見るショールームになります。芝浦のダイナミックなまちなみを感じながら商品を見ることができる、ランドマーク的な施設になるのではないでしょうか」と、久保氏はこの倉庫がもつ地域での役割のイメージについても語った。

外を通る首都高と倉庫の2階の高さがほぼ同じであることを活かしたプラン。</br>倉庫と行き来もでき、ショールームを訪れる人の使いやすさとより多くの人の目に触れる</br>仕組みを両立させた設計は、この地域のランドマークにもなりそうだ外を通る首都高と倉庫の2階の高さがほぼ同じであることを活かしたプラン。
倉庫と行き来もでき、ショールームを訪れる人の使いやすさとより多くの人の目に触れる
仕組みを両立させた設計は、この地域のランドマークにもなりそうだ

倉庫リノベでまちが賑わう

すべて紹介できないのが残念だが、建築家5名それぞれの提案に共通して、対象を特定せず多くの人が利用できる仕組みを意識してつくられている点がとても印象的だった。
大空間や耐荷重など倉庫が持つ特徴は様々な使い方を可能にするので多くの人が集まるには確かに適している。
用が無ければ訪れないイメージの倉庫群をより身近な存在にリノベーションすることで人が集まり賑わう仕組みをつくるのは、老朽化した建物の再活用という意味以上に、“まちづくり”だと感じた。

その地域の象徴でもある倉庫をインフラと捉えてリノベーションする考えは斬新だと感じたが、確かにその土地にあるものを活かすことはまちの継続的な活性化につながり、理にかなっている。住宅の再活用がさけばれるが、再生できるのは何も住宅だけではない。

今回提案されたプロジェクトは、いずれも仮のものだが、こうした計画が実現していけば芝浦のまちは大きく変わるだろう。新しくつくられるものと、既存設備を活かしたものが融合するこの地域の発展に、今後も注目が集まりそうだ。

2015年 06月16日 11時06分