親世帯と子世帯の同居が減り、家のコンパクト化が合理的な選択肢に

「より大きく、より広く」のイメージが主流だったが、日本人のライフスタイルの変化をきっかけとして「部屋が余る」ことになり、減築のニーズも高まりつつある「より大きく、より広く」のイメージが主流だったが、日本人のライフスタイルの変化をきっかけとして「部屋が余る」ことになり、減築のニーズも高まりつつある

「減築」という言葉をよく見聞きするようになったのは、ここ10年ほどのことであろうか。それ以前にも小さな家に「建て替える」例はあったものの、既存の家をベースにして「減築リフォーム」などをする例は極めて少なかった。増築と改築がセットで「増改築」といわれることが多いように、基本的には「より大きく、より広く」というイメージが主流だっただろう。

近年に「減築」がクローズアップされてきた背景には、日本人のライフスタイルの変化がある。昔であれば、親世帯の家にそのまま長男夫婦または長女夫婦が同居することも多かった。きょうだいが独立して家を出て行っても、残った長男夫婦に孫が産まれるなどして、長い期間にわたり「部屋が余る」ということはなかったのだ。

しかし、現在はほとんどの子が独立して親元を離れてしまう。親世帯からあまり離れていない場所で「近居」する例もあるが、子が結婚してからも親と同居する割合はどんどんと減っているだろう。二世帯住宅として、親世帯と子世帯の玄関を別々にした家に建て替えるケースはやや増えつつあるようだが……。

子が独立することによって、以前は4〜6人程度で暮らしていた広い家に、親夫婦だけが取り残されることになる。夫婦が健在のうちはまだ良いとしても、一方が亡くなれば片親だけの「単身住まい」である。当然ながら部屋が余ることになり、減築をすることが合理的な選択肢となる。

高齢者だけが住む「持ち家」はおよそ850万戸

減築は高齢者世帯だけに限った話ではないが、まずは高齢者世帯の現状について確認しておくことにしよう。総務省統計局の「平成25年住宅・土地統計調査」(確報集計)によれば、居住世帯総数約5,210万のうち65歳以上の単身世帯は約552万だが、その3分の2にあたる約362万が「持ち家」である。さらに、高齢夫婦のみの2人世帯では約487万が「持ち家」だ。借家の場合に比べて、持ち家は平均して2倍ほど広くなっており、1世帯あたりの居住室数は5室以上、居住室の広さは35〜40畳程度となっている。ちなみに、全世帯の平均は1住宅あたり32.77畳、1人あたり13.54畳だ。

最適な家の広さは人によって考え方が異なるだろうが、高齢者が単身または2人で暮らすのに40畳は広すぎるだろう。来客が多かったり、正月や盆には家族や親戚が集まったりする家だとしても、高齢となるにしたがってその機会も減っていく。持ち家の大半を占める2階建て住宅では、階段の上り下りが次第にきつくなり、いつの間にか2階の居室がまったく使われなくなっているという例も少なくない。

ほとんど使われることがない部屋でも、それを維持するためには相応のコストがかかる。仮に放置したままであっても固定資産税などの対象になっているのだ。そのようなときに有効な手段となり得るのが減築である。

総務省「平成25年住宅・土地統計調査」をもとに作成総務省「平成25年住宅・土地統計調査」をもとに作成

減築にはどのようなメリットがあるのか

高齢夫婦だけの世帯が、それまでの家を売却して駅近のマンションへ引越すような事例も増えているという。しかし、住み慣れたエリアを離れることに不安があり、広すぎる自宅が無駄だと感じながらもそのまま住み続けていることも多いようだ。

減築には2階全部を除去して平屋にする、2階または1階の一部を除去する、2階の床の一部を除去して吹き抜けにするなどさまざまな方法があるが、減築によってどのようなメリットがあるのだろうか。一般的に挙げられることが多いのは次のような点である。

□ 生活動線が短くなることで毎日の暮らしが楽になる
□ 掃除や手入れなど家の管理がしやすくなり、効率のよい生活となる
□ 平屋にした場合はバリアフリー化が容易になる
□ 床面積が減ることで、他のリフォーム工事がしやすくなりコストも下がる
□ 隣家との間隔をあけることで、風通しや日照を改善できる
□ 隣家との間をオープンスペース化することにより、延焼リスクを低減できる
□ 家のメンテナンス費用を軽減できる
□ 固定資産税や都市計画税が安くなる
□ 家の耐震性能が上がる
□ 家の光熱費を軽減できる
□ 防犯上の死角が減る
□ 住み慣れた家を離れずにすむ

使わない部屋は閉め切りがちになり、換気が不十分で傷みがすすむこともある。減築をしてそのような部屋をなくせば、家を長持ちさせることにもつながるだろう。なお、2階建てを平屋にすれば、家の荷重が減ることで耐震性能は向上するとされているが、もともとの構造に問題があったり、減築でバランスが崩れたりすれば耐震補強工事は欠かせない。また、普段の生活に使う部屋の日照が良くなることで、逆に夏場の光熱費が上がることもあるだろう。断熱性能を高める工事も同時に実施したいものだ。減築工事の程度や付帯工事の内容によっては固定資産税額が上がるケースも考えられる。さらに、もともと一部の部屋しか使っていなければ、減築による光熱費の削減効果は限られることにも注意が必要だ。

国土交通政策研究所が2010年にまとめた「減築による地域性を継承した住宅・住環境の整備に関する研究」によれば、減築に対して「興味がある」は3.7%、「やや興味がある」は9.4%にとどまり、「将来は検討の余地がある」を含めた「関心層」は42%である。それに対して、「興味はなく、将来もあまり考えられない」が50%を占めた。興味がある割合は50歳代で高くなっているのに対して、興味がない割合は60歳代以上が高い。減築の費用に対してどの程度の効果があるのか、リタイア世代ではその不安感も大きいのだろう。

減築が空き家問題の改善にもつながる!?

親が亡くなった後の家が使われずにそのまま放置される例も多く、空き家増加の一因となっている。親の家を売るにせよ、第三者へ貸すにせよ、あるいは取り壊すにせよ、家具や荷物を片付けなければならないのだが、その片付けが進まないケースも少なくない。とくに戦後の高度成長期を現役で支えてきた世代は、モノをなかなか捨てることができない傾向が強く、家の中がさまざまな製品であふれていることもあるようだ。

2階の空き部屋が物置代わりとなり、もう何年も使われていない家電品や調理器具、身につけることのなくなった洋服や着物、その存在すら忘れられたモノなどがいっぱいのことも多い。親が元気なうちに片付けを促しても、なかなか重い腰をあげてくれないだろうが、減築がそのきっかけになることは十分に考えられるだろう。

減築によって荷物が少なくなれば、親が亡くなった後の片付けがしやすくなり、売却や第三者への賃貸もスムーズになることが期待できる。あくまでもその家の状況次第ではあるが……。
また、古い住宅では現行の容積率制限などを超過した「既存不適格建築物」も多いが、減築をすることによってそれが解消できれば流通性のアップにもつながる。

減築は住宅以外にも広がっている

減築は住宅だけでなく、公共建築物や民間の商業施設などでも広がりつつある。分譲マンションでは住民の権利関係やコスト負担面などハードルは高いが、公営住宅・団地などではこれから実施例が増えてくることも考えられる。

すでに始まっている国内の人口減少により、居住ニーズだけでなく、多くの地域では商業ニーズもビジネスニーズも減っていく。そのとき需要に見合う大きさに収めることが必要であり、老朽化したビルのリノベーションでも、減築は有効な手段になるのだ。地方都市の商業施設では、築40年近い8階建てビルの3階以上を解体し、2階までにした事例があるという。とくに耐震性能の劣る古いビルでは、全体の耐震補強工事をするよりも思い切った減築をしたほうが合理的な選択となることが考えられる。維持管理コストを収益に合わせた水準に引き下げるためにも、減築の効果は大きい。

これからの社会において、都市のコンパクト化が大きなテーマとなっているが、それと同時に建物のコンパクト化(減築)も次第に重要性を増していくことだろう。現時点では減築の具体的なイメージを掴みづらいという人が多数を占めるだろうが、しっかりと事例を積み重ねつつ、減築のコストと効果が明確になるようにしていくことが事業者側にも求められる。

2015年 04月28日 11時08分