マンションの大規模修繕工事を担う工事会社担当者に聞く!
『修繕にお金のかかりにくいマンションとは?』

6回に渡ってご紹介してきた【買うときには誰も教えてくれない大規模修繕】レポート。最終回となる今回は、マンションの大規模修繕工事を請け負う株式会社カシワバラコーポレーション・リフォーム事業本部(名古屋営業所)の与那嶺修さんに、そもそも『大規模修繕のコストがかかりにくいマンションの特徴』についてお話を聞いた。

カシワバラコーポレーションは、プラント塗装工事の全国トップシェアを誇る会社で、25年ほど前から業界ニーズの高まりに合わせてマンションの大規模修繕工事に着手。現在では年間受注業務の半数以上を集合住宅の修繕工事が占めるというマンション大規模修繕業界の大手だ。

▲カシワバラコーポレーション・リフォーム事業本部(名古屋営業所)の与那嶺修さん。<br />マンションの大規模修繕工事を担って11年。<br />数多くの現場を見てきたが、ひとことでマンションといっても、<br />規模や設計・デザイン、立地条件がそれぞれ異なるため、<br />修繕しやすいマンションとそうでないマンションの違いを実感するという▲カシワバラコーポレーション・リフォーム事業本部(名古屋営業所)の与那嶺修さん。
マンションの大規模修繕工事を担って11年。
数多くの現場を見てきたが、ひとことでマンションといっても、
規模や設計・デザイン、立地条件がそれぞれ異なるため、
修繕しやすいマンションとそうでないマンションの違いを実感するという

修繕コストのかかりにくいマンションとは?
ズバリ、『足場が組み立てやすいマンション』であること!

▲足場の組み立てや撤去作業をおこなう場合は、数週間のあいだ隣接する道路を封鎖しなくてはならないケースも。この場合、近隣居住者や通行人の安全確保のために警備スタッフおよび交通整理スタッフを配置しなくてはならないため、当然ながら人件費のコストアップとなる▲足場の組み立てや撤去作業をおこなう場合は、数週間のあいだ隣接する道路を封鎖しなくてはならないケースも。この場合、近隣居住者や通行人の安全確保のために警備スタッフおよび交通整理スタッフを配置しなくてはならないため、当然ながら人件費のコストアップとなる

「我々工事担当者が考える“修繕コストがかかりにくいマンション”というのは、“工事がしやすいマンション”のこと。具体的には、『足場が組み立てやすいマンション』のことを言います。

大規模修繕工事をおこなう際に、一番初めに我々が思案しなくてはならないのは『どのように足場を組み立てるか?』ということです。つまり、足場の組み立てが容易な物件であればスムーズに工事が進みますが、足場の組み立てが困難な物件であれば、ゴンドラを設置するなど専門の技術力が必要になり、足場の組み立て・解体にも日数を要するため当然コストも上がってしまいます。

『足場が組み立てやすいマンション』の条件に挙げられるのは、
●第一に、敷地にゆとりがあること。
●次に、隣接する道路幅が広く交通量が少ないこと。
●そして、昔の公団のようなシンプルな四角い形のマンションであること。

都心の住宅地にありがちな、隣の建物との距離が近接しているマンションや、入り組んだ路地の奥に建っていて重機が入りにくいマンション、またL字型や雁行設計など配棟設計が複雑なマンションは、それだけで足場が組みにくくなりますから、大規模修繕のコストが割高になることが考えられます」(与那嶺さん談)

与那嶺さんによると、『足場の組み立てやすさ』以外にも、『現場事務所を館内に設営できるか?』『建設資材の置き場所が敷地内にあるか?』『足場組み立て・解体の際の周辺道路の通行止めにどれぐらいの警備員が必要か?』等の条件で、修繕工事にかかる経費の内容が変わってくるという。

現場事務所を館内に設営できない場合は、周辺の貸オフィスや賃貸マンションの一室を事務所にするため別途賃貸契約が必要になるし、交通整理や警備スタッフの配置が必要な物件の場合は、当然その人件費も上乗せされてしまうからだ。

『修繕コストのかかりにくいマンション』という観点から分譲マンションを選ぶならば、『空地率が高く、敷地まわりにゆとりがあるマンション』を選んだほうが良さそうだ。

永く快適にマンションに暮らし続けるために、
わたしたち管理組合員が意識しなくてはいけないこととは?!

▲明日実施される工事内容については、前日にエレベーターホールに設置された掲示板に詳細が貼り出されるほか、最近はスマートフォンへの配信サービスをおこなう工事会社もある。しかし、工事進捗の認知度については個人差があり、再三の告知をおこなっても「工事の音がうるさい」「洗濯物が干せない」などのクレームが現場事務所に届くというから、工事スタッフの皆さんのご苦労が窺える▲明日実施される工事内容については、前日にエレベーターホールに設置された掲示板に詳細が貼り出されるほか、最近はスマートフォンへの配信サービスをおこなう工事会社もある。しかし、工事進捗の認知度については個人差があり、再三の告知をおこなっても「工事の音がうるさい」「洗濯物が干せない」などのクレームが現場事務所に届くというから、工事スタッフの皆さんのご苦労が窺える

では、2回目、3回目の大規模修繕コストを極力削減するために、わたしたち入居者や管理組合に属する区分所有者はどのような意識を持つべきなのだろうか?

「わたしの経験上ですが、“定期的に、比較的早いサイクルで、きっちりと修繕をおこなっているマンション”というのは、2回目、3回目の大規模修繕であっても比較的劣化が少なくなります。また、5~6年に一度、鉄部塗装をこまめにおこなっているマンションも、痛みが少ないですね。

よく管理組合の皆様には、『コンクリートは虫歯と同じ。外から見てキレイでも、奥のほうで劣化が進行しているケースがあって、痛みが出る頃には取り返しがつかなくなる場合もあるんですよ』と説明しています。

最近は、管理組合の積立金不足で、修繕工事のタイミングを遅らせるマンションも増えていますが、やはり国土交通省が推奨している12年から13年ごとに1回を目安にして、しっかりと大規模修繕工事をおこなったほうが、絶対にマンションは長持ちしますし修繕コストも抑えられます」(与那嶺さん談)

ちなみに、大規模修繕工事というのは、新築工事と違って『入居者の快適な生活を維持しながら、工事を進めなくてはならない』という制約がある。与那嶺さんによると、全体掲示板やインターネットの掲示板サイト等を使って、入居者(区分所有者)への告知・工事説明をおこなっているが、『投資目的の都心物件』や『リゾートマンション』『賃貸入居者が多いマンション』等の場合は特に、区分所有者に連絡が取れないケースが多く、工事がストップしてしまう事例もあるという。

「玄関部分の塗装など、必ずお客様の立会いが必要な工事もあるのですが、どうしても区分所有者様に連絡がつかない場合は、住民票をたどってはるばる遠隔地まで訪ねていき、工事のお約束を取り付けることもあります。

ただ、そうした事情で工事が遅延してしまうのは無駄なコストにつながりますから、皆様のマンションで大規模修繕工事がスタートした際には、“ご自身の資産を維持・管理するための大切な工事”と心得ていただき、極力工事の進捗にご協力いただけると我々スタッフとしてもありがたいですね」と与那嶺さん。

余談だが、バルコニーにガーデニングを施しタイルを敷いている住戸や、荷物置き場として大きな倉庫を置いている住戸などが多い場合、タイルや物置の『撤去・処分費』として工事費用に計上されるケースもある。大規模修繕コスト削減のためには、区分所有者一人ひとりが、常に“次の大規模修繕工事”のことを意識をしながら日常生活を送ることも大切だ。

マンション購入の際は、必ずやってくる大規模修繕を意識して物件の検討を!

▲マンションの規模にもよるが、大規模修繕工事に要する期間は平均4~6ヶ月。その間、様々な不都合が発生するが、マンションの資産価値の維持には欠かせない大切な工事であることを認識しよう▲マンションの規模にもよるが、大規模修繕工事に要する期間は平均4~6ヶ月。その間、様々な不都合が発生するが、マンションの資産価値の維持には欠かせない大切な工事であることを認識しよう

最後に、大規模修繕工事のプロである与那嶺さんに「与那嶺さんご自身が、大規模修繕工事を意識して購入するなら、どんな条件のマンションを選びますか?」と質問してみた。

「そうですね…。まずは『戸数が多いマンション』を選びますね。マンションを永く快適に管理するためにはどうしてもある程度の費用が必要になります。少ない戸数のマンションよりも、大規模な戸数のマンションのほうが一住戸あたりの負担額が少なくてすみますから。

そしてもうひとつの条件は『郊外のマンション』です。やっぱり敷地にゆとりがあって『足場が組み立てやすいマンション』が我々の理想なので、都心にある敷地の狭い物件はなるべく避けたいところですね(笑)」(与那嶺さん談)

================================================

マンション購入時には多くの場合、販売担当者も仲介会社担当者も、誰も『大規模修繕のこと』を詳しく教えてくれない。しかし、『マンション』という大切な資産の価値をより長く維持するためには、“絶対に欠かせない重要な工事”であることを、筆者自身も①~⑥のレポートを執筆して改めて認識することとなった。

分譲マンションを選ぶ際には、立地や価格・間取り・広さ等の希望条件だけでなく、必ず将来やってくる大規模修繕のことを意識しながら『資産価値を維持しやすいマンション』『修繕コストのかかりにくいマンション』を選んでみてはいかがだろうか?特に、中古マンションの購入を検討中の方は、『次回の大規模修繕までにどれぐらいの猶予があるか?』『修繕積立金は潤沢に積み立てられているか?』も必ず購入前にチェックしておこう。

2015年 01月14日 11時09分