別荘より手軽、20万円台から始められる小屋ライフ

駐車場に点在する小屋たち。住宅展示場と違い、それぞれの小屋を覗き込んでも営業されることはない駐車場に点在する小屋たち。住宅展示場と違い、それぞれの小屋を覗き込んでも営業されることはない

2014年10月4日から13日までの10日間、港区の虎ノ門ヒルズ近くの駐車場に突如、14棟の小屋が出現した。住宅から棚まで、住まいに関して欲しいものがある人とそれを作る人を結ぶマッチングサイトSuMiKaが主催する日本初の小屋展示場である。ここでの小屋の定義は物置、犬小屋などとは違い、人が時間を過ごせる離れのような空間で、サイズは3.3m×3.3m以下。専有面積で言うと10m2で、畳数で考えると6畳程度ということになる。別荘のように高額でかつ長期に保有、利用するものではない、もっと気軽なものである。実際、今回建てられた小屋のうちには50万円程度から買えるキット、170万円~で建ててもらえるものなどもあり、アウトドアグッズを扱うモンベルが出している居住用テントなら20万円台である。都会では難しいものの、土地さえあれば小屋自体は安く作れるのである。

しかし、なぜ、小屋か。SuMiKaの佐藤純一さんによると、今、小屋がブームになりつつあるのだという。「中心になっている層には2種類あり、ひとつはこれから家を買う20代後半から30代。この層には『そもそも家ってなんだっけ?』といったように、一番必要であり、大事なものからモノをミニマルに考える志向があります。そのうちの2割程度にはライフスタイルから家を考えたい、こだわって家を選びたいという人がおり、週末には海のそば、平日は都会などといった多拠点居住を模索するケースも。その時、素泊まりで短期滞在、でも趣味のモノなどを置く場所として小屋が候補になってくるわけです。もうひとつの層は団塊世代。リタイア後、趣味の空間として庭に陶芸小屋が欲しいなどというケースです」。

「好きに暮らす」という意味を考える契機としての小屋

もうひとつ、小屋であれば家の場合には必須の、各種のしがらみを外せるという思惑もある。「自分が住む住宅として家を考える場合には通勤から考えて場所、予算から考えて広さ、家族構成から考えて……というように、常に現実とつながった形で考えてしまい、自由に発想できない。でも、それを小屋、しかも使い道は自由、自分の好きにしていいとなると、いろんなことを考えられるようになる。弊社は『好きに暮らそう』をテーマにマッチングを考えているのですが、小屋が『好きに暮らす』ってこういうことか!と住まいそのものをも考え直す契機になればと思っています」。

確かに展示された小屋はサイズはほぼ統一されているものの、ひとつとして同じものはなく、どれも魅力的で自由。たとえば、自転車と接続したり、おみこしのように担いだりして移動できる書斎兼トイレ兼モバイルオフィスがあったり、持ち運びでき、自分で組み立てできる1畳大、5分の4畳大、2分の1畳大の小屋(これは販売されている。お値段は5万円~)があったり、ハンモックが吊られた東屋風の小屋があったり……。どれもいいなあと思ったほどだ。

左上/アウトドアメーカーモンベルの居住用テント。23万5000円+税金。右上/カナダ産の木材を使った小屋キット、52万円+税金。左下/10年保証も付く本格的な小屋は200万円前後から。右下/サイズによって価格が異なる一畳ハウス。一番小さい2分の1畳で5万円+税金左上/アウトドアメーカーモンベルの居住用テント。23万5000円+税金。右上/カナダ産の木材を使った小屋キット、52万円+税金。左下/10年保証も付く本格的な小屋は200万円前後から。右下/サイズによって価格が異なる一畳ハウス。一番小さい2分の1畳で5万円+税金

4畳半でも狭くない、狭いから寛げるという不思議な体験

人は通常、自分が居住している空間や体験したことのある空間との比較で広さを認識するものだと思う。だから、4畳半と聞いたら広いと思う人はあまりおらず、狭い、窮屈そうと思う人が大半だろう。だが、面白いことに今回、小屋を体験してみて、実際の空間は狭いのに広く感じるという不思議な経験をした。どうして、そう感じるのか。共通することは2点。ひとつは天井が高いということ。今回出展されていた小屋のうち、4棟にはロフトスペースがあり、それだけのことで感じ方は変わるらしい。

もう1点は窓が多いという点。小屋だから、作るつもりになれば四方向全てに窓を作ることもできるわけで、そうした部屋だとやはり広く感じる。窓自体が大きくなくても、視線が抜けるような空間が壁面にあるだけで、人の意識は変わるようである。

逆に狭いのに寛げるという経験もした。子どもの頃に友達と一緒に雑木林の中に秘密基地と称して小さな空間を作っていたことがあるが、ああいう感じといえば伝わるだろうか。オーバーに言うと母の胎内のような感じ。安心できる隠れ家、昼寝をしたら良い夢が見れそうな空間。小さな空間ならではの楽しみ方かもしれない。

左上・右上/コンパクトな外観を入った見ると、こんな感じ。4畳半だが、窮屈ではない。左下/屋根が高く、気持ちよく昼寝できそうな和室の小屋。右下/ロフトがあると隠れ家気分が高まり、わくわく左上・右上/コンパクトな外観を入った見ると、こんな感じ。4畳半だが、窮屈ではない。左下/屋根が高く、気持ちよく昼寝できそうな和室の小屋。右下/ロフトがあると隠れ家気分が高まり、わくわく

「家って建てられるんだ」という驚き、発見

今回、出展された小屋は工務店や設計事務所などが絡むものが大半だが、1棟、素人が集まって建てられたものがある。「みんなでつくる、小さな暮らしの実験場」と題した、解体された住宅、倉庫からの廃材などで作った小屋で、greenz.jp、YADOKARIという2つのWEBサイトが協力して作ったもの。小さな廃材でモザイク状に作られた壁や枝を打ち付けて作ったロフトの柵、箱で作られた収納など、インテリアもかっこよく、参考になった。

加えて印象的だったのは小屋作りを担当したYADOKARI小屋部 部長唐品知浩さんの言葉である。「作ってみて、家って実は自分でも建てられるんだと分かった。これまでプロに任せるしかないものと思っていたけれど、自分でもできる。そう考えると、家はもっと自由になっていいし、楽しむべきだとも思う」。

住宅は本来、住む人があり、その人の暮らしがあった上で、それにふさわしいものとして考えられるものだろうと思うが、これまでは用意された箱に暮らしを合わせるような選び方が主流だったように思う。その根底に家は誰かに作ってもらわなければ作れないものという諦めがあったからだとすると、自分たちにも家が作れるという認識はこれからの家選びを、自分たちに合わせて家を選ぶというものに変えていく可能性があるのかもしれない。だとしたら面白い。

ついでにもうひとつ。こういう小屋が集まったショッピングモールや賃貸住宅を作ったら楽しいんじゃないだろうか。トイレ、キッチンその他は共有で1棟別に用意すれば、配管がない分、建物は比較的安価に作れ、あれもこれも見たい、住んでみたいと思う空間になるだろう。もちろん、実現のためにはいろいろな障壁もあろうが、検討していただきたいものだ。

■記事でご紹介した情報についてはこちらから。
小屋展示場特設サイト:http://campaign.sumika.me/koyatenjijo/

YADOKARI小屋部による小屋の外観、内部など。個人的に一番心を奪われたのは表札。レゴである、レゴ。これならだれでも真似できる。ただし、道行く人がいたずらしたら、違う人の家になってしまうかもしれないがYADOKARI小屋部による小屋の外観、内部など。個人的に一番心を奪われたのは表札。レゴである、レゴ。これならだれでも真似できる。ただし、道行く人がいたずらしたら、違う人の家になってしまうかもしれないが

2014年 10月09日 11時43分