まちづくりの主役は市民。市民による市民のためのイベントを開催

住吉大社 観月祭住吉大社 観月祭

最近、まちおこしの一環として注目を集めている「まちバル」。地元商店街や飲食店の活性化を目的に、全国各地で開催されている。
なかでも、今回レポートする「第3回 大阪ちん電バル」は、“ちん電”の愛称で親しまれる昔ながらの路面電車が走るまちの魅力を発信しようと、大阪市住吉区・住之江区を中心とする市民ボランティアが初回からイベントを企画。地元の有志企業やクラウドファウンディングなどで資金調達を行った。
大阪ちん電バルの参加店は、阪堺(はんかい)電車沿線の子ども服店や和菓子屋、精肉店、粉もん専門店、焼きたてパンの店、飲食店や居酒屋などバラエティ豊かな40店舗におよぶ。  
一般的な「まちバル」との違いは、実行委員のメンバーに一人も飲食店の関係者がいないこと。“ちん電の魅力を広く伝えたい”と集まった有志が阪堺電車沿線を舞台とするイベントを支える。会期中には、住吉大社の初辰まいりや観月祭、住吉公園でのキャンドルナイトとも連携し、ひと味違ったにぎやかなバルイベントを展開した。

レトロなまちを「大阪ちん電バル号」が進行!

「ちん電バル号」の車内:猪田健人さんが卒業論文のテーマでもあったという「あんぱんまん」を紙芝居で披露。隣合った者同士、自然と会話が弾んだ。「ちん電バル号」の車内:猪田健人さんが卒業論文のテーマでもあったという「あんぱんまん」を紙芝居で披露。隣合った者同士、自然と会話が弾んだ。

「大阪ちん電バル」は、阪堺電車沿線を舞台に9月6日から3日間にわたって開催。初日は「ちん電」が貸し切りバーとなり、大阪市の恵美須町・天王寺駅前と堺市の浜寺駅前間を運行し満員御礼で賑わった。乗客は変わりゆく車窓をながめながら、流しのギター演奏(トゥナ)や紙芝居などをほろ酔い気分で味わえるという趣向だ。

紙芝居を3ステージ披露した大阪ちん電バル実行委員会の猪田健人さん(23歳)は、
「バルの実行委員になって、自宅と仕事場の行き来だけではなく、世界がぐんと広がった。沿線の魅力をあれこれ発掘できることが楽しい」と満面の笑顔で話す。

堺市の浜寺駅前を出発した「ちん電バル号」は、大和川を渡り住吉鳥居前駅のバル実行本部テントを目に、昭和の風情が残る町並みをゆっくり走行。住宅の軒をかすめるように進み、松虫駅を過ぎた頃から高さ300メートルの「あべのハルカス」を臨む。まるで時空を超えた旅行気分が味わえる道のりだ。

特筆すべきは、「ちん電バル号」の貸し切り運行費を広く市民の支援を募るクラウドファウンディング「FAAVO大阪」で賄っていること。目標金額を上回る支援と熱いメッセージが寄せられ、いかに「ちん電」が愛されているかを物語る結果となった。

「住吉っさん門前町」にかつてのにぎわいを

粉浜商店街は、南海本線「住吉大社駅」と「粉浜駅」の間約350mに約120店舗が立ち並ぶ大正8年生まれの商店街である。粉浜の地名は、元は「木浜」。かつて海に面していた住吉大社の式年遷宮の時の木材を置く浜だったことに由来している。その後、大正時代に米屋さんが店を構えたことが商店街のはじまりらしい。歴史が古いだけに、代々続く専門店が多いのが特徴だ。
大阪ちん電バルに参加する店の人は今回のイベントをどう感じているのだろうか?
粉浜商店街で大阪ちん電バル参加店にお話しをうかがった。

「当店『お多福堂』は、昭和12年から続く店でもともとは甘納豆屋でした。戦後の砂糖不足で試行錯誤し、もち米が入るようになってからは「あられ」を扱うようになりました。以来、炭火の手焼きあられにずっとこだわっています」と、お多福堂 二代目店主の森谷 稔さん。
「この商店街は40年前、自転車が通れないほどの活気があったんです。近郊に大手の総合スーパーができるという話を耳にしますが、商店街全体で知恵を絞りながら盛り上げていかなければ。今回のイベントのおかげで日頃来られない方が、地図を片手にあっちこっちから訪れてくれました」(森谷店主) おみやげバルメニューである『お多福堂 大社あられ』は、イベント開催3日目に商品を追加するほどの人気を集めた。

筆者もひさしぶりに商店街をゆっくり歩いてみたが、どのお店の人も気さくで温かい。創業90年の宇治茶専門店では、美味しいお茶の入れ方を教わるなど対面販売のよさを改めて実感。イベントをきっかけに、店とお客さんの距離もぐっと近くなっているように感じた。
かの古今和歌集でも住吉のことを「住みよし」と詠っているそうだが、確かに住み心地がよさそうなところだと思う。

大阪ちん電バル参加店:住吉鳥居前の五代目「梅よし」(右)と、粉浜商店街の店舗(左)大阪ちん電バル参加店:住吉鳥居前の五代目「梅よし」(右)と、粉浜商店街の店舗(左)

まちのことを『ジブンゴト』に。地域愛が生み出す大きなムーブメント

住吉大社前:大阪ちん電バル実行委員会のみなさん住吉大社前:大阪ちん電バル実行委員会のみなさん

「第3回 大阪ちん電バル」の反響はどうだったのだろうか?
阪堺沿線の住人で大阪ちん電バル実行委員会のふたりに感想とお話しをうかがった。

実行委員長の下道秀美さんは、「私は小さい頃から、ちん電の心地よい走行音を聞きながら育ち、ずっと生活の一部のように感じてきました。廃線の話が出るたびに、絶対になくしたらアカン、何かせんとアカンと思ってきました。おかげさまで、ちん電バルも3回目を迎えることができましたが、たくさんの人がちん電に乗ってイベントを楽しんでくれたことがうれしい。ここまで一緒の思いで走り続けてくれたみなさんにもありがとうと言いたい」と話す。

イベントの参加者は、過去最高の560人。地元・大阪市立住吉商業高等学校の生徒がバル参加店をまわり、店の人や参加者の感想を取材。ひとつの映像作品としてまとめる新たな取り組みも生まれている。

「ちん電バルが地域に浸透しつつあることを今回、肌で感じました。地域の皆さんにいかに主体的にイベントに関わってもらえるかがカギでしたが、その意味でも今回の取り組みは大成功だったと思います。バル参加店や関係団体、実行委員が積極的に関わってくれたことにとどまらず、バルの参加者にも“ちん電沿線の隅々まで楽しもう!”という姿勢が見て取れました」と、大阪ちん電バル実行委員会の事務局長・山田重昭さん。「イベントがきっかけでまちへの関心・興味が深まり、持続的な動きに繋がっていけば、まちのカタチも変わっていくと思います」と、意気込みを語る。

今秋からスタートしたNHKの朝ドラマ「マッサン」は、国産ウイスキー製造をめざす日本男児とスコットランド妻の物語だが、モデルの夫妻は、沿線の神ノ木駅近くにあった摂津酒造(現・宝ホールディングスと合併)にお勤めだったという。住吉大社内でもドラマの撮影が行われるなど、阪堺沿線の注目度アップにも期待がもてそうだ。

こよなく「ちん電」を愛し、阪堺電車沿線を盛り上げたいとする地域愛がパワーとなり、大きなムーブメントを生み出している。


■関連リンク
第3回大阪ちん電バル:http://www.chindenbar.com/  
クラウドファンディング「FAAVO大阪」 :https://faavo.jp/osaka

2014年 10月02日 11時02分