多摩産材のよさを知り尽くすプロがつくる

沖倉製材所で取材に応じてくれた沖倉喜彦さん。一級建築士でもある。秋川木材協同組合理事長、東京都木材流通対策協議会委員、一般社団法人TOKYO WOOD普及協会理事長沖倉製材所で取材に応じてくれた沖倉喜彦さん。一級建築士でもある。秋川木材協同組合理事長、東京都木材流通対策協議会委員、一般社団法人TOKYO WOOD普及協会理事長

東京都の多摩地域西部でとれる多摩産材。原木市場に出荷された多摩産材のなかには細い木や曲がった木、節が多い木など、建材になりにくい木も多く含まれているが、それらを有効に使い、DIYフローリングの木製品などを開発しているのが「SMALL WOOD TOKYO(スモールウッド・トーキョー)」。多摩産材の産地のひとつ、東京都あきる野市の有限会社沖倉製材所(以後、沖倉製材所)と、企画・編集・デザインなどを手がける合同会社++(たすたす:東京都三鷹市)が共同で取り組んでいるプロジェクトだ。前回レポート記事では合同会社++で木製品の広報・販売などを担当する安田知代さんの「つなぐ人の想い」を中心にお伝えしたが、2回目の今回と、次回の記事では木製品をつくる沖倉製材所・沖倉喜彦さん(52)の「つくる人の想い」をお伝えしよう。

沖倉喜彦さんは1950年に創業した沖倉製材所の二代目社長。東京の多摩地域に唯一残る木材組合「秋川木材協同組合」(東京都あきる野市)の理事長をつとめ、長年にわたって多摩産材の普及活動に取り組んできた。木材や林業関係の講演会、セミナーなどの講師として招かれることも多く、東京の森と多摩産材を熟知するキーパーソンのひとりである。

建材にならない木を有効に活かし、木製品として多くの人に届けたい

製材という仕事は、林業と同様、家づくりを支える重要な仕事である。森で収穫(伐採)された木は原木市場へ出荷されるのだが、それら原木(丸太)を競りで仕入れ、適材適所で使えるように加工するのが製材の仕事。丸太は製材の工程によって四角形の木材となり、工務店や建築会社、木工品会社などに売られていく。そうした仕事を沖倉さんは「木に第二の生命を与え、木の愛用者にお届けする仕事です」と語る。
「主には住宅用の建材を製材するわけですが、丸太を四角い製材品に加工する過程でどうしても製品にならない部分がでてきます。節が多いとか、色が悪いとか、さまざまな理由で建材にならない部分です。しかし、林業家が手塩にかけて育てた木ですから、どんな部分であっても、余すことなく使う。これが私たち製材業者の使命だと思っています」

そんな思いから沖倉製材所では2000年に木質ボイラーを、さらに2010年にはチップボイラーを導入。原木から製品を加工する過程で出る木の皮や端材などを、木材乾燥機の燃料として有効に活用している。その量は沖倉製材所の工場で使用する燃料全体の約8割にも相当するという。木質バイオマスを実践して廃棄物や二酸化炭素の排出の削減につとめ、地球環境の負荷の低減に貢献しているのだが、それでもなお、「端材などを利用して、人の暮らしに役立つ木製品を提案できないだろうか」と、沖倉さんは思いをめぐらしていたという。

そして、東京都が2006年から始めている花粉発生源対策事業により、多摩地域の森でスギやヒノキが大量に伐採されている状況に対しても、沖倉さんには思うところがあった。前回レポート記事でお伝えしているように、多摩地域の林業が衰退していることが原因で、枝打ちや下草刈りといった手入れをされていない木が増えているのだが、花粉発生源対策事業によりそれらも伐採され、原木市場にたくさん出回るようになったのだ。それがこのレポートの冒頭でも記述している「細い木や曲がった木、節が多い木など、建材になりにくい木」である。その量は、多摩産材を扱う原木市場(多摩木材センター)で建築用材として取引されている年間約1万2000立方メートルとほぼ同じくらいになるという。主に合板やチップとして低価格で取引されているが、取引すらされずに放置されているものも少なくないという。
「そうした木たちをなんとかして活かせる方法はないものかと考えていたんです。人が植えた木なんだから、とことん使いきるべきです」と、沖倉さん。

そんなときに出会ったのが、安田さんをはじめとする合同会社++のクリエイターたちだった。建材になりにくい木を活かした製品を開発しようと、意気投合。そうして2012年6月、「SMALL WOOD TOKYO」のプロジェクトがスタートしたのだった。

沖倉製材所の製材工場。製品の用途に応じてさまざまな寸法の角材や板に製材する。「製材の仕事の素晴らしさと多摩産材を使うことの意義を多くの人に伝えたい」という沖倉さんは、小・中学生から社会人まで工場見学の希望にも応じている沖倉製材所の製材工場。製品の用途に応じてさまざまな寸法の角材や板に製材する。「製材の仕事の素晴らしさと多摩産材を使うことの意義を多くの人に伝えたい」という沖倉さんは、小・中学生から社会人まで工場見学の希望にも応じている

節がたくさんある木。それもまた木の個性であり魅力

「敷くだけフローリング」は、無垢のフローリング材(スギ、ヒノキともに厚さ15mm)を1枚ずつ、DIYで床に敷き詰めていくというもの。釘や接着剤は不要。畳の上でも敷ける。
ⒸSMALL WOOD TOKYO
「敷くだけフローリング」は、無垢のフローリング材(スギ、ヒノキともに厚さ15mm)を1枚ずつ、DIYで床に敷き詰めていくというもの。釘や接着剤は不要。畳の上でも敷ける。 ⒸSMALL WOOD TOKYO

「SMALL WOOD TOKYO」の主な製品であるDIYのフローリング材「敷くだけフローリング」の開発当時を、沖倉さんはこうふり返る。

「沖倉製材所では住宅や公共施設の構造材のほか、内装材、椅子やテーブルといった家具、木工製品づくりにもオーダーメイドで対応してきました。無垢のフローリング材も手がけてきていますが、節のない均質な木材が好まれる傾向が強く、節が多いフローリング材は売れるんだろうかという不安はありました。でも、安田さんたちは“節がたくさんあるのはワイルドでいい!”“節が多いのも木の個性”などと言ってくれた。こんなふうに感じてくれる消費者がいるのなら魅力的な製品ができるかもしれないと、手応えを感じました。住宅業界から疎んじられている木たちかもしれないけど、いい製品をつくってやろうじゃないかと。チャレンジ精神が湧いてきました」

クリエイターたちの感性に触発された沖倉さん。安田さんたちと話し合いを重ねるなかで「敷くだけフローリング」を発案した。ヒントになったのは、以前、接したことのあるお客のDIY体験だった。
「自宅の居間に丈の短いフローリング材を1枚1枚、家族全員で敷いて手軽に床リフォームができた、というんです。丈が短い木だから家族で手分けして自室まで持ち運べたし、釘も使わず、施工会社に依頼することなく、費用も安く済んだという話でした。これはすごいと思っていたので、“SMALL WOOD”の製品開発に活かしました」

では、どんな技術で“SMALL WOOD”の製品をつくり出しているのだろう? 次回、このシリーズの最終回でレポートする。

<取材協力>
●SMALL WOOD TOKYO
http://www.smallwood.jp

合同会社++(たすたす)
http://tassetasse.jp
有限会社沖倉製材所
http://www.okikura.co.jp


2014年 09月11日 11時18分