『ちん電』の愛称で親しまれる阪堺電車

阪堺電車 天王寺駅前阪堺電車 天王寺駅前

大阪市南部と堺を結ぶ阪堺(はんかい)電車は、大阪府で唯一のチンチン電車。地元の人からは『ちん電』の愛称で親しまれる開業113年の路面電車だ。出発点は「あべのハルカス」で注目を集める「天王寺駅前」から。もう一線は今宮戎にほど近い「えびす町」からいずれも住吉駅を経由し、堺市の浜寺駅前へとゆっくり走行する。

日本が車社会へと移行し、全国各地で路面電車が廃線へと追い込まれるなか、なぜ阪堺電車は生き残ることができたのか?
時代に逆行するようにのんびり走る『ちん電』は、地域の足代わりだけでない「何か」があるようだ。

阪堺沿線・帝塚山の住人で、まちおこしに関する研究を続けるLLP YUI企画 代表組合員 山田重昭氏にお話しをうかがった。

地域を元気づけるため、地域に根ざしたイベントを開催

「大阪あそ歩」レトロモダンのまち帝塚山を往くコース「大阪あそ歩」レトロモダンのまち帝塚山を往くコース

「帝塚山を象徴するお屋敷は、高齢化や独居化が進み、急速な勢いで取り壊され、マンションや駐車場に姿を変えています。また、かつて帝塚山にあった大学が次々と移転し、学生の姿が消えてまちの活気が失われてしまった。その若者や活気を呼び戻そうと始まったのが万代池のほとりで開かれる『帝塚山音楽祭』なんです」(山田氏)

1987年から毎年開催されている帝塚山音楽祭は、関西の音楽イベントによる地域おこしの先駆けといえる。帝塚山は京阪神で最も早くから郊外開発が始まったことから、高齢化が顕著に表れている地域であり、山田氏は「だからこそ世代を越えた“コミュニティの場”となるきっかけづくりが求められている」と話す。

そのきっかけの一つとして山田氏ら一般社団法人 大阪あそ歩委員会は、「大阪あそ歩」という取り組みも始めた。
「『大阪あそ歩』というまち歩きは、まちづくりの契機となることを意図したコミュニティ・ツーリズム。観光を地域が支え、まちが主役となって、まちの問題を解決していこうとする取り組みです。私自身も、まち歩きを通して帝塚山の魅力や課題を再認識することができました。また、地元住民と外からの人との交流を通じて“まちを元気づける”という目的があります」(山田氏)

『大阪あそ歩』のキャッチフレーズは、「大阪は、まちがほんまにおもしろい」。大阪在住の筆者も、あそ歩(ぼ)のまち歩き体験者だが、大阪の観光資源は、人そのもの・まちそのものだと思う。

阪堺電車のいま、むかし

大阪最大の名社「住吉大社」の太鼓橋大阪最大の名社「住吉大社」の太鼓橋

阪堺電車・上町線の前身は、明治30年5月に設立された大阪馬車鉄道株式会社。馬車鉄道とは、その名が示すとおり軌道に乗った客車を馬が引っ張るというもの。当時としてはモダンな交通機関として脚光を浴び、全国各地でその姿を見ることができたという。かつて阪堺電車は、住吉大社への参拝客や浜寺公園への海水浴客で大いに賑わった。しかし、車社会となり1970年代には利用客が激減。1990年代にはバスや地下鉄の路線拡張もあり、各地で路面電車の廃止が続いた。阪堺電車の利用者も落ち込み、何度も廃止の話が持ち上がった。

そこで、経営難を乗り越えるため、阪堺電車は関西でいち早く車体広告を取り入れ、電鉄業界初となった「貸し切り電車」を実施。多い年では、年間300件以上もの利用客が集まる大ヒット企画を生み出した。

利用客数に伸び悩んでいた阪堺電車は、さまざまな企業努力と地域の応援で回復の兆しをみせている。さいわい、経済低成長時代となり、路面電車やLRT(次世代型路面電車)が人と環境にやさしい公共交通として見直されている。

意外と知られていない帝塚山の魅力に迫る

帝塚山といえば、どんなイメージを持っているだろうか?
「東の田園調布、西の帝塚山」と称されるぐらいだから、豪邸が立ち並ぶハイソでおしゃれなまちといった印象を抱くかもしれない。

帝塚山は大阪市阿倍野区から住吉区にかけた上町台地に位置し、明治初期までは耕作に適しない荒地だった。阪堺鉄道が開通すると、住吉村の住人の手により開発がスタート。
大正5年、帝塚山学院が設立され文教地区となり、やがて高級住宅地のイメージが定着するようになったという。帝塚山を象徴する代表的な住宅建築として、銅板葺きの大屋根に風見鶏が目を引く高谷家住宅(国指定等文化財、文化庁)などの洋館と日本建築の屋敷が同居する。

代表的な帝塚山人であった故・大屋政子さんの娘・登史子さんの言葉によると「ツッカケ履きで出かけるまち」という。
実際に帝塚山を歩いてみると、昔ながらの長屋と大きなお屋敷、お好み焼き屋さんと「帝塚山スイーツ」など、他では味わえないギャップが混在していることに驚かされる。ハイソというより、レトロな「ちん電」がよく似合う、下町情緒さえ感じさせる町並みが魅力だ。

その「ちん電」は、ランドマークである住吉大社の存在などを活かし、沿線の飲食店を応援しようと「大阪ちん電バル」というイベントを実施している。「大阪あそ歩」と合せて、こうしたイベントで沿線に賑わいが戻りつつあるという。

次回は、「阪堺電車沿線を盛り上げるイベントとしてぜひ注目して頂きたい」と山田氏も話す、この地域イベントに迫りたい。


■参考リンク
阪堺電車   http://www.hankai.co.jp/index.html 
大阪あそ歩  http://www.osaka-asobo.jp 

大阪ちん電バル実行委員会  左:事務局長 山田重昭さん(LLP YUI企画 代表組合員) 右:実行委員長 下道秀美さん大阪ちん電バル実行委員会  左:事務局長 山田重昭さん(LLP YUI企画 代表組合員) 右:実行委員長 下道秀美さん

2014年 09月06日 11時49分