シロアリ被害が生じることにより起こるデメリットとは?

日本の住宅の半数以上が木造住宅。
木造住宅を検討する際の「不安要素」として、必ずと言ってよいほど挙げられるものに「虫害」、特に「シロアリ被害」がある。漠然とシロアリは建物の敵のようなイメージがあるが、実際の被害はどんな感じなのだろうか?今回、虫害の中でもっとも対策相談の多いシロアリについてお届けしたい。

実際にシロアリ被害が生じると住まい手や建物は何が困るのか、どのようなデメリットが考えられるのかなど、愛知・岐阜・三重・静岡の会員91社が所属する(社)中部地区しろあり対策協会の今村民良理事長に話を伺ってみた。

~シロアリ被害が生じると建物はどうなるのか?
「実は、早期発見ができればシロアリ被害は過剰に恐れなくとも良いケースが多いのです。無論、被害箇所にもよりますが。大事なのは早期発見と、不具合を放っておかない事ですね。大型地震による家屋倒壊と蟻害・腐朽は因果関係がある、という調査結果も出ていますのでないがしろにはできない問題です」

~住まい手が困る点は?
「まずは心的なダメージがあげられます。羽アリの群飛や大量の働きアリを見た時などは、虫の苦手な方は慌ててしまうことが多いです。次に経済的なダメージが挙げられます。被害が甚大になるまで気づけなかった場合、シロアリ駆除のみでは収まらず、修繕やリフォームが必要となるケースもあります。束の交換、畳替え、大きな被害だと根太や大引を修繕なども一緒に行う必要も時にはあり、そうすると費用負担もかさみます」

ちなみに、価格については地域性もあるが、シロアリ駆除施工のみを行う場合の費用は、中部圏で20坪で15万~20万円前後をイメージとして持っておくと良い。大幅に高いのはもちろん、あまりに安い場合も注意が必要で、その根拠をしっかり確認しておくと良いだろう。

適正対策をしなかったが故に、再発。
シロアリ駆除後半年でボロボロになった集合住宅

半年後に再発が見つかった集合住宅でのイエシロアリ被害半年後に再発が見つかった集合住宅でのイエシロアリ被害

『大工さんも驚いたシロアリ被害』というものもある。これは、愛知県知多半島西岸に位置するエリアのアパートで実際に起きた被害だが、シロアリ駆除施工実施後半年で、再び甚大なシロアリ被害が出てしまったという事例だ。

秋にシロアリ駆除とリフォーム工事を実施。その後、異変に気づき調査をしたところ、シロアリ被害が広がっていることが判明した。リフォームから異変感知までの間、わずか半年。秋にリフォームに携わった大工さんさんたちも、自分たちがキレイにした部屋がたった半年でボロボロになってしまったことに驚きと衝撃を隠しきれない様子だった。

では、なぜこのような事態が起きてしまったのか?考えられる原因を今村氏に伺った。

【原因①】シロアリ業者がリフォーム会社の下請けとして見積りのみ行い、現地調査がなされていなかった
【原因②】イエシロアリの生息を懸念すべき地域であったのにも拘らず、ヤマトシロアリの駆除対策が施されていた

まず、見積もりのみが行われ、現地調査が行われなかった①について。

リフォームが絡むシロアリ対策の場合、工期の都合などによって現地調査を省略されることは時折ある。シロアリ被害やその兆候がない場合、現地調査が省略されてもトラブルになることは少ないだろうが、現地調査をした上での対策検討をお勧めしたい。「特にシロアリ被害の恐れがある場合は、シロアリ駆除だけでよいのか、部材の交換が必要となりそうなのか、検討するうえでも事前調査は受けて頂きたいですね。事前調査なしに見積もりだけが進んでしまいそうな場合は、施工店に専門家による調査希望の意思をお伝えしてください」と今村氏。

また、シロアリの種類が対策に考慮されていなかった②については、自分の住むエリアがヤマトシロアリ中心なのか、イエシロアリの生息・被害が起こる地域なのか、自身で把握しておくのも損はない。

シロアリの生息エリアが北上している

ただし、そのシロアリ生息エリアも徐々に北上してきているらしい。

今村氏は、「従来イエシロアリは南の暖かい地域を中心に活発に生息していましたが、ここ数年は40・50年前では考えづらかった地域にも出ていています。例えば、愛知県内では知多半島や渥美半島などの海岸エリアが中心だったイエシロアリの生息が、今では名古屋市内の一部でも見られるようになりました。また、ヤマトシロアリ生息の北限も北へ伸びていますので、分布図は一つの目安としてください。そして、分布図をチェックし、イエシロアリの生息が懸念される地域にお住まいの方は、イエシロアリとヤマトシロアリでは対策が異なるということも是非知っておいてください」と話す。

こうした変化は、温暖化によるものなのか、はたまた他によるものなのか原因は分からないが、シロアリ事情においても昔からの常識とされていたことに変化が表れつつあることは確かだ。

(社)日本しろあり対策協会
シロアリ分布図(社)日本しろあり対策協会 シロアリ分布図

外来種の繁殖

柱の下などに細かな砂状のものが落ちていたら要注意柱の下などに細かな砂状のものが落ちていたら要注意

変化と言えば、外来種による被害が徐々に取り沙汰されるようになった点も無視できない。

【アメリカカンザイシロアリ】が日本で最初に見つかってから既に30年以上経つと考えられているが、ここ数年、被害報告を耳にする機会が増えている。アメリカカンザイシロアリでの注意点は、床下調査では被害や生息に気づけないことだ。「カンザイ」は「乾材」の意味で、シロアリと言うとジメジメした場所を好むイメージがあるが、この種類は乾燥した木材の中に含まれるわずかな水分で生きていくことができ、加害範囲も天井裏、柱、木枠など建物全体が対象となり、家具やピアノなどの家財も含まれる。

実のところ、予防は難しい。しかし、発見方法はあるので次の点に注意して早期に見つけることが大事だ。

①写真のような「蟻糞」が落ちていないか
②羽アリの飛来がないか

糞は砂粒状で1ミリ程度。筋のようなものが見られる。
決して片づけてしまわず、発見個所を覚えておくと共に、現物を専門家に見せて欲しい。

人類より長い歴史を持つシロアリ
常識も時間をかけて変わってゆく

シロアリは数億年の歴史を持つといわれる昆虫である。
小さな小さな虫ではあるが、この地球上においては我々人類なんて足元にも及ばない先住者だ。長い歴史の中で生き抜く術を備えてきたであろうシロアリは、変化し続ける環境、建物構造、建材に対して今後も順応していくに違いない。

確かに「シロアリに強い」建材は開発されているが、「シロアリがつかない」というのは眉唾だ。生き物相手に「絶対」はないものだと、筆者は考える。我々住まい手だけでなく、建築・害虫対策の専門家も「今までの常識」を鵜呑みにせず、一度疑ってみること、他に可能性はないか考えてみることが必要になってきているのかもしれない。

【関連リンク】
取材協力/一般社団法人 中部地区しろあり対策協会 理事長 今村民良氏
参考/公益社団法人 日本しろあり対策協会

2014年 01月24日 09時59分