建築関連法規の見直し案Ⅰ
絶対高さ規制を設け、容積率規制はやめる

前回の「現 建築関連法規の問題点とは? ~ 建築関連法規の全面見直しを①」では、1950年に制定された建築基準法を含め、建築関連制度を全面的に見直す時機がきているのではないか、ということをお伝えした。

今回は、こうした外部不経済を抑えるにはどんなルールがよいのか、を実証的な研究にもとづいて客観的なルールを考えてみた。ルールは外部不経済を抑えるのが目的になるので、いまの建築関連法規からはもっぱら集団規定に絞られる。また従来の建築行政との一貫性や公平性を考慮して従来の接道条件などはそのままにして、容積率規制方式を見直すものになる。

まずは都市景観の観点で、建物が圧迫感を与えない規模を考える。

これは
圧迫感=2.19×形態率(対数)+1.667×アスペクト比(縦横比の対数)+2.401

によって与えられ(黄泰然他:都市空間における一棟及び多棟建物から受ける圧迫感に関する研究、2007)、この圧迫感が4以上にならないように基準を設定していく。アスペクト比の影響から同等に視野を占める建物で比べた場合、ポツンと飛び出したような建物ほど圧迫感を与え、軒高が揃っているほど圧迫感は和らぐ。

たとえば、高さ10mの建物が35m以上続く街並みでは、正面から4m離れたところからみて圧迫感を受けない。高さ30mの街並みではこれが124m以上続くと、正面から10m離れれば圧迫感を受けない。一方、高さ60mの建物が見渡す限り同じ高さで連続していても、20m離れた場所でも圧迫感を逃れることはできない。東京都復興区画整理事業の街区設計において住居地域の街区の長辺が80~160m、商業地域で80~140mであること、さらに歩道の幅は整備後の山手通りで9.25mであることを考えると、建物の最大高さは30mが限界値になる。住居地域では、街区を分ける道路の中心から建物が概ね4m離れているとして、絶対高さは10mとすることができる。

この絶対高さ基準に従うと、建物群の高さが揃い、街並みも凸凹せずに自ずから整う。同時に日照や通風も確保されやすく、ビルの側面積も50階建てが10階建てに抑えられるので、輻射熱も約5分の1に減る。30mまでなら大規模修繕や解体も容易なのでスラム化の懸念もなくなる。この絶対高さ規制はこれほどに多能だ。ちなみにこの絶対高さ規制をかけても、木造戸建て群から中低層集合住宅等に建て替われば都市空間の利用効率は損なわれない。都心から10km圏内でいまの23区全体の延べ床面積がすっぽり収められる。

絶対高さなので、基準は公明正大である。これに比べると、容積率基準は実際に計画を入れないと分からないし、緩和措置もいろいろ付け加えられて裁量余地も多くて不透明である。そもそも容積率は体積とも違うし、外部不経済への対応としてこれを採用する根拠が不明だ。

中低層で街並みが連続するときは圧迫感が和らぐ中低層で街並みが連続するときは圧迫感が和らぐ

建築関連法規の見直し案 Ⅱ
周辺部と都市部に粒度規制を設ける

街区の内奥への採光や通風を妨げないように、建物の粒度も抑える。
通風について以下の関係式(ヒートアイランド現象による環境影響調査検討委員会:ヒートアイランド現象による環境影響に関する調査検討業務報告書、2005、池田恭彰他:都市歩道空間の風環境評価のためのLarge-Eddy Simulation、2013)を当てはめると

地表の風速(m/秒)=2.903×観測高さ(建物高さの2倍:m)0.183
建物前面・地表1mの風速=0.677×アスペクト比-0.749×建蔽率-0..352×平均風速
建物側面・地表1mの風速=0.535×アスペクト比-0.620×建蔽率-0..533×平均風速

ここで適風域は夏季に0.95~2.7m/秒であることから、絶対高さ10mのときに適風域が得られる建物の幅は2.5~8mと導くことができる。また絶対高さ30mのときには建物の幅は5~19mとなる。

この適風に基づく建物の外形基準を、より明快な数値基準にするために宅配便にならって3辺合計を基準値にとってみた。絶対高さ10mの地区ではこの3辺合計25m(≒10+8+8)、絶対高さ30mでは70m(≒30+19+19)となる。

こうして粒度が揃うと、刑務所の壁のような建物もなくなるので、街並みも整う。
そしてこれぐらいの粒度の建物を、一定の間隔で街並みとして視覚的に連続するように並べることで、圧迫感も抑えられる。また、シミュレーションによると高さ9mのとき隣棟間隔が2m超のときは、室内の換気回数が60回/時のときが年間85%以上になること、路上は空きスペースの方位が良ければ最も隣棟間隔1~6m全てで適風になることが報告されている(国土交通省国土技術総合政策研究所:市街地における建物の性能基準に関する基礎研究~建築基準法集団規定に関して~、2008)。この粒度規制によって、高さ10mの地区では各棟は三面ないし四面に開口部がとれるので、暮らしの中でも自然の通風・採光が生かすことができる。

実験でも、適風が室内を横断するときは、真夏でも体感温度で7~9℃下げる効果があることが以前から知られている(赤林伸一他:住宅の通風に関する実験的研究、1983)。建物の合間からは必ず一日二回は奥まで日が差し込み、また普段でも壁面の明度が高ければ、光は建物の間を反射して曇天・雨天でも室内で針仕事もできる。

建物幅を一定の範囲に収めれば、正面や側面に適風が導かれる建物幅を一定の範囲に収めれば、正面や側面に適風が導かれる

建築関連法規の見直し案 Ⅲ
地区ごとに外観を条例によって指定する

低層住棟が一定の間隔で連続し、外観も整った国立の都市景観低層住棟が一定の間隔で連続し、外観も整った国立の都市景観

地権者が協力して街並みをつくることで、相当の外部経済が生まれる。

ある住宅地の景観形成の経済効果を戸建て価格に換算して試算すると、高さを抑えることで323万円、庭木・生垣を充実させることで350万円、落ち着いた色彩で統一させることで285万円、総計958万円が元々の3,000万円に対して約3割の資産差益が生まれることが分析されている(景観形成効果に関する景観価値分析方法・評価手法検討委員会:景観形成の経済的価値分析に関する検討報告書、2007)。

建物の外見は個人の趣味嗜好だけに委ねず、コミュニティの決定として景観条例等の枠内に収めることで、これほどの外部経済を享受できる。

自治体の財政も健全化されるので、やらない手はない。

建築関連法規の見直し案 Ⅳ
ニューサンス(煤煙・汚水・騒音・震動など)は直接、計測・規制する

騒音や振動、粉塵、排ガス、臭気などの外部不経済に対しては、間接的に建物で規制するのではなく、直接的に事業ないし発生状態について規制する。騒音や粉塵を発生させるような事業は、地区ごとに営業を規制すればいい。

また、IoTを生かせば、敷地境界のあたりにモニタリングのセンサーを配置して、リアルタイムで測定できるだろう。地区ごとにそれぞれの基準を定め、こうした基準を超えたら、罰金(固定資産税の割り増し)、使用停止といった罰則を適用する。

ゾーニングは、こうした直接規制の代用手段に過ぎない。ゾーニングの副作用で、コンビニエンスストアまで歩いて10分という住宅街が出来たり、商店街が面的に発達しなかったりしている。最初に触れたように、職住一体ないし近接の暮らしも一般的になり、共働きで中食・外食の需要も高くなっている。

ゾーニングで仕事や買い物と居住を遠ざけるのではなく、街の機能の多様化と並立を許容することが望ましい。

次回は、用途や保険をどのように規定するかについて述べてみたい。

2017年 04月17日 11時03分