確定申告の時期に毎年問い合わせが増える

今年も2月16日~3月16日の期間で確定申告の時期がやってくる。2014年1月1日~12月31日までの間に住宅を購入した人は、この確定申告を行わないと住宅ローン減税の恩恵を受けることができない。そこで確定申告に行くわけだが、住宅ローン減税を受けられると思っていたのに、ここで初めて住宅ローン減税が受けられないことに気付く人が多くいる。税務署から「耐震基準適合証明書」を持ってくるように言われるのだ。

何のことだかわからない消費者は、取りあえず仲介をしてくれた不動産仲介会社に問い合わせるが、要領を得ない。「どうしたら耐震基準適合証明書が取得できるのか」という問い合わせが急増する所以である。
問い合わせの主は消費者だけでは無い。不動産会社からの問い合わせも増える。消費者から照会があったのだが、わからなくて問い合わせしてくるわけだ。

住宅ローン減税には築後年数要件がある

そもそも、全ての物件が住宅ローン減税を受けられるわけではない。ローン減税を受けることができる条件の一つに「築後年数要件」というものがある。

耐火構造(要するにコンクリート造) 築25年以内
非耐火構造(要するに木造)     築20年以内

上記の築後年数の要件を満たしていないと住宅ローン減税の恩恵は受けることができないのだ。ただし、この要件には二つの緩和策がある。一つは「既存住宅売買かし保険を付保すること」、もう一つは「耐震基準適合証明書の取得」である。

「既存住宅売買かし保険の付保」だが、これは引き渡しまでの間に保険の付保を完了していなくてはいけない。だから、既に引き渡しを受けた後に気付いても後の祭りということになる。中古のマンションを購入し、住宅ローン減税を受けたいのであれば、築25年以内の物件を選択するか、引き渡しまでにかし保険を付保する必要がある。

「耐震基準適合証明書の取得」の場合、引き渡し後の証明書取得でも対象となるが、引き渡し前に「耐震基準適合証明書の仮申請書」を取得しておく必要がある。引き渡し後の証明書取得の場合は、この仮申請書の提出も必須になってくるので注意が必要だ。以下に、耐震基準適合証明書取得について注意が必要なポイントを列挙する。

耐震基準適合証明書の取得には、これらの要件を満たさなければならない耐震基準適合証明書の取得には、これらの要件を満たさなければならない

耐震基準適合証明書発行手続きの注意点<引き渡し前>

①耐震基準適合証明書申請書(仮申請書)の取得
最寄りの建築士事務所に所属する建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関又は住宅瑕疵担保責任保険法人に対する耐震基準適合証明の申請(耐震改修工事を行う事業者が確定していない等により、家屋の引渡しまでに申請が困難な場合は、仮申請)を行い申請書を取得する必要がある。申請書(仮申請書)は確定申告時の提出書類となっており、これが無いと対象とならない。ちなみに、証明書の取得費用は3~5万円程度。

②耐震診断の受診
耐震改修費用やリフォーム費用を住宅ローンで支払う場合には、通常、引き渡し前に耐震診断を受診し、耐震改修費用を確定しておく必要がある。また、リフォームを合わせて行う場合には、リフォーム工事と共に耐震改修工事の費用を見積もりしたほうが改修費用を抑えることができる可能性が高くなる。
ただし、所有権がまだ売主にある状態なので、売主が居住中などの場合には売主の理解が必要となる。診断費用は10~15万円程度。現地調査時間は2~3時間。床下や屋根裏に入る必要があるので、周辺の整理などが必要となる。本来は買い付け申し込み後、売買契約前に実施したいところだが(改修費用の多少が購入判断材料になる可能性が高いので)、売買契約締結後であれば、売主の理解も得やすいものと思われる。

③耐震改修計画の立案と見積もり
耐震診断の結果に基づき、耐震改修計画を立案する。診断結果の報告と改修計画の提案までには通常1週間から10日ほどかかる。基本的には建築士主導で立案するのだが、リフォームの希望などをヒアリングしながら、最もコストがかからなくて効果の高い設計を提案することになるので、依頼者の意向を汲んだ設計となる。
耐震改修費用は平均で150万円前後だが、リフォーム工事と同時に実施することで費用をぐっと抑えることができる。見積もりの合意があれば、最終的な資金計画を立てることができ、住宅ローンの融資を受ける先に必要なリフォーム資金の打診が可能となる。

耐震基準適合証明書発行手続きの注意点<引き渡し後>

①耐震改修工事の実施
耐震改修計画に基づき工事に着手する。耐震改修工事の基本は「壁を増やすこと」「壁の配置バランスを整えること」「接合部を強化すること」の3つである。その結果、今ある壁を剥がして、強い壁にする工事が多くなる。調査は非破壊で行うのだが、壁を剥がしてみたら非破壊ではわからなかった被害がまれに発見されることがある。その場合のコスト増分についても事前に考慮しておく必要がある。工期は計画によってさまざまではあるが、耐震改修工事だけで考えれば、1週間から2週間程度が一般的だ。

②引き渡し後6か月以内の入居が条件
耐震基準適合証明書があっても、引き渡し後(謄本で所有権が移動した日)、6か月以内の入居(住民票の移動日)が要件となる。ここで注意したいのが、引き渡しから6か月以内の入居を証明する必要書類は「住民票」であるという事だ。住宅ローンの融資を受ける際に、所有権移転後の所有者の住所は新住所で登記するように金融機関に求められる場合があるが、金融機関に説明し、旧住所登記をする必要がある。また、住民票も耐震改修後の実際の入居日にする必要がある。うっかり住民票の移動を忘れることが無いようにも気を付けたい。

③耐震基準適合証明書の発行
ここでようやく証明書が発行されることになる。通常、証明書の申請をしてから最短でも1か月程度を要する。簡単に発行できると勘違いしている不動産事業者もいるようなので注意したい。

引渡し後の耐震基準適合証明書発行手続きの手順。</br>引渡し後6ヶ月以内に入居することが条件となり、「入居」とは</br>住民票の移動を持って判断するため注意が必要だ。引渡し後の耐震基準適合証明書発行手続きの手順。
引渡し後6ヶ月以内に入居することが条件となり、「入居」とは
住民票の移動を持って判断するため注意が必要だ。

責任が問われる仲介事業者

以上が手続きの一連の流れになるが、残念ながらこのような流れを十分に理解していない不動産事業者も散見される。そのような仲介事業者に仲介してもらうと、本来住宅ローン減税の対象となる物件なのにローン減税の恩恵が受けられなかったり、本当は可能なのに無理だと言われたり、というトラブルが後を絶たない。

特に、前述したが「引き渡しまでに仮申請書を取得すること」「引き渡し時には旧住所で登記すること」等は、例え耐震改修工事が完了したとしても住宅ローン減税が受けられないことになるので特に注意が必要だ。このような手続きについて、本来はプロである不動産仲介事業者が顧客に説明すべきである。不動産仲介事業者の無知で顧客が不利益を被る等ということがあってはいけない。
その事業者のスキルを推し量る質問をぶつけてみよう。「耐震基準適合証明書の発行手続きの流れについて説明して欲しい」「耐震基準適合証明書を取得したいのだがどこに相談したらよいのか」等の質問をぶつけて、要領の得ない答えしか返ってこないような事業者には仲介してもらわないほうが得策だ。

個人間売買の場合、住宅ローン控除額は10年で最大200万円だ。改修工事費用100万円程度を考えても、購入した物件の耐震性が担保され、しかも100万円戻ってくるということになる。例え改修費用が250万円だとしても、たった50万円で耐震改修工事が完了することになる。所得税の還付が受けられないとしても、地震大国日本で、耐震性が担保されていない住宅に住むことほど災害リスクの高いものはない。家は大切な家族を守るはずの器のはずである。

「耐震基準適合証明書」の発行手続きや詳細については、以下のホームページに細かく記述しているのでぜひ参考にしてほしい。
(http://www.rchukai.jp/contents/contents_f_tekigou_index.htm)

耐震基準適合証明書を取得すると、住宅ローン減税を受けられる以外にもメリットがある耐震基準適合証明書を取得すると、住宅ローン減税を受けられる以外にもメリットがある

2015年 03月02日 11時07分