今年もまもなく「路線価」公表の時期

「公示地価」「路線価」「基準地価」といった地価が何を目的としてどのように算定されているのかを理解しているのは、不動産・金融業界に従事する者を除けば、決して多くはない「公示地価」「路線価」「基準地価」といった地価が何を目的としてどのように算定されているのかを理解しているのは、不動産・金融業界に従事する者を除けば、決して多くはない

毎年7月1日(2008年以降8月1日から1か月早くなった)に国税庁から「路線価」が発表される。
「路線価」に先駆けて毎年3月下旬に「公示地価」が発表されるが、「路線価」は「公示地価」の8割が目安とされているため、元になるのは「公示地価」ということになる。
「公示地価」では都市圏での時価の上昇が示されているのに対して、地方圏では依然として下落の大きい地点も多く、土地の利用価値の違いによって地価にも大きな違いが発生する状況が年々顕著になっている。新聞に掲載されたご自身の住まい周辺の「公示地価」を確認して、地価が上がった下がったと一喜一憂される光景を見受けるが、地価が上昇すればその分徴収される税金(固定資産税や相続税など)も上がるため、歓迎すべきことばかりではない。
おそらく地価が上昇すると、結果的に所有している土地・建物の価格が高く評価されたように感じるので、地価が上昇することを歓迎する向きがあるのだろう。

「公示地価」だけでなく、「路線価」「基準地価」といった地価を算定する目安となる数値が毎年決まった時期に公表され、そのたびにニュースなどで報道されるのは、それだけ世間の関心が高いことの証左だが、ただ、各々の地価が何を目的としてどのように算定されているのかを理解しているのは、不動産・金融業界に従事する者を除けば、決して多くはない。

モノの価格は原則として一つにつき一つ=一物一価だが、実は土地の価格に関してはこれら公的価格以外にもいくつかあるのだ。

公的地価の基本 「公示地価」&「基準地価」

「公示地価」は公的な地価としては最も良く知られていて、「公示地」という個別地点の価格が公表される。
新聞やニュース番組などで伝えられるのは、これらの個別価格を分析し、前年から価格が上昇した地点が何箇所、下落した地点何箇所、一番高かったのは○○、という概要である。

地価公示法(法律によって定められている)には「正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もって適正な地価の形成に寄与することを目的」としていると書かれている。
日本の地価は一般に分かりにくくできており、鑑定評価によって毎年定点観測することによって地価の動きを把握しようということだが、公示地に挙げられた地点の価格とその周辺にある土地の価格はそもそも個別要因が同じではないので単純に比較することもできず、地価の概要を把握する手段としては、前年からの変動率を尺度として採用するケースが多く見受けられる。

「公示地価」は毎年1月1日時点の地価を国土交通省が取りまとめて3月下旬に公表しているが、1月1日は元日で、常識的に考えて土地の取引が活発に行われるはずもないが、一定の期間に土地の取引情報を収集し、それを1月1日時点の価格に時点修正して公表している。

次に良く知られているのが「基準地価」で、正式名称は「都道府県地価調査」という。
国土利用計画法に基づいて「都道府県知事が、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる画地を選定し、その選定された画地(基準地)について、毎年1回、1人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って、一定の基準日における当該画地の単位面積当たりの標準価格(公示地価でいう正常価格)を判定」すると定められている。
こちらも「基準地」という地点を定点観測する手法で算出されており、誤解を恐れずに言えば、同質性の高い地価に関する調査を、国と都道府県が半年ごとに行い、春に発表されるのが「公示地価」で、秋に発表されるのが「基準地価」だと考えれば概ね正解ということになる。

「基準地価」は毎年7月1日時点の地価を公表しており、「公示地価」の半年後の価格を公表している。「公示地価」との最大の違いは、都道府県が調査主体で都市圏だけでなく地方圏でも調査地点数が確保されているため、全国的な地価調査の網羅性が高いということだ(「公示地価」は土地の取引が活発な都市圏での調査地点が多く、地方圏は相対的に少ない)。
ただ、調査結果を公表するのは国(国土交通省)なのでその違いが一般にはあまり知られていない(都道府県でも同時に調査結果を公表している)。この点も「公示地価」と「基準地価」は公表時期が違うが、他に何が違うのかがわかりにくい一因だと思われる。

税金を算定するための基準となる「路線価」+α

路線価」には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2つがあり、税金の徴収目的に応じて利率を変えている路線価」には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2つがあり、税金の徴収目的に応じて利率を変えている

代表的な2つの地価が定点観測&鑑定評価による価格算出であることと、その違いについて説明したが、公的地価は他にもある。
それが「路線価」で、「路線価」は土地が面している道路(接道)に設定された価格で、調査主体は国税庁だ。
この「路線価」が面している土地の面積を掛け合わせて評価額を算出し、それを基に税金の価額を求めることになる。つまり税金算定専用の公的地価が「路線価」ということになる。また上述の通り「路線価」は「公示地価」を基に算出されているため、同じく1月1日時点の価格となっている。

分かりにくいことに、「路線価」には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2つがある。「相続税路線価」は相続税や贈与税を算定するためのもので、「公示地価」の8割を目安に算定され、「固定資産税路線価」は同じく7割の水準を目安としている。つまり税金の徴収目的に応じて利率を変えているということになる。

また「路線価」は土地が面している道路全てに設定されているわけではなく市街地を中心とした地域にしか設定されておらず、郊外の土地については価格を算定して一定の倍率を掛け合わせて税額を算出するのだが、それに必要なのが「固定資産税評価額」である。「固定資産税評価額」は市役所や町村役場にある固定資産台帳に記載されていて広く公開されているものではない。また、「路線価」が毎年更新・公表されているのに対して、土地および家屋の「固定資産税評価額」は原則として3年程度更新されない。
なお、毎年春に送られてくる固定資産税の納付通知書に記載されている金額は「課税標準額」で固定資産税評価額ではないことにも注意する必要がある…。

ということで、国の設定する基準にはわかりにくいものが多いが、公的地価と地価にまつわる税金の算定方法はその典型例と言えるのかもしれない。

ほかにもまだある!? 地価の算出方法

このように、公的地価には大きく分けて「公示地価」、「基準地価」、「路線価」の3つがあり、「路線価」は税金の種類によってさらに2つに分けられていて、「路線価」の設定されていない“倍率地域”には「路線価」のかわりに「固定資産税評価額」がある…というところまで整理したが、実はこれ以外にも地価の算出方法がある。

それが「収益還元価格」で、これまで説明してきた公的地価とは異なり、近年では不動産鑑定評価の基準として広く活用されるようになった。
これは土地が生み出す収益(賃料や使用料)をもとにその不動産の価値を査定する方法で、従来の売買に基づく価格を鑑定手法によって算出するものではなく、不動産の収益性を価値化する手法である。少々分かりにくいが、土地の生み出す収益を価値として、所有している期間に得られるであろう利回りを基に価格に還元するイメージだろうか。

例えば、土地を賃貸して得られる賃料が月額10万円(年120万円)、諸経費(維持管理費・公租公課・損害保険料など)が年間20万円で、還元利回りを5%とすると、収益還元価格は(120万円-20万円)÷5%=2,000万円になる。計算によって予断を挟む余地なく算出できるという点がメリットだが、利回りや収益の算定基準が曖昧では地価が算出できないため、基になる数字の客観性、正確性が大変重要な「肝」になる。また、収益を基準としているので、もともと収益を生み出す前提の事業用不動産および賃貸用不動産の価格を算定するのには適している。

地価の種別を理解して、堅実な不動産取引に活用しよう

そして、さらに「実勢価格」=実際に売り出された価格と買主との交渉によって成立した成約価格も当然のことながら存在する。

これまで見てきたように、公的地価だけで四価、それに「収益還元価格」や市場流通価格である「実勢価格」を加えると六価まで土地の価格を算出するためのものさしが増えてしまうことになる。つまり、地価とは何を目的として算出するのかによっても価格が異なり、また過去の売買によって得られた価格を基に算出する従来の手法(比較事例法)と収益還元法でも基準が異なるので、算出される結果としての地価も当然違ってくる。
“土地の価格はわかりにくい”と言われる所以はここにあると言えるだろう。

家電製品などの消費財は同じ品質のものが大量生産されているから、全国どこでも同じものが入手可能という意味で主に流通コストと需給関係、新製品の投入時期などから販売価格が決まるが、土地は不動産=動かすことのできない財産であり、似たような条件の土地はあっても、同じものはないという判断をせざるを得ない。
隣り合っている土地であっても、広さや形状、傾斜、道路との位置関係などによって価格は違ってくるから、その個別性をどのように評価するかで地価が決まるということを考えると、地価が下がっているとか上がっているとか、お買い得かどうかなどの判断も一筋縄にはいかないことなる。

新聞に載っている公示地価をみて一喜一憂するだけでなく、その中長期的なトレンドを把握して、土地の価格の実際(というかカラクリ)を理解しておくと、今後不動産売買を行うことになった時に価格の算定根拠を理解する一助となる。土地の価格は素人にはわからない、と敬遠せずに基本的な知識だけは押さえておくべきだろう。

新聞に載っている公示地価をみて一喜一憂するだけでなく、</br>その中長期的なトレンドを把握して、土地の価格の実際を理解しておく必要がある新聞に載っている公示地価をみて一喜一憂するだけでなく、
その中長期的なトレンドを把握して、土地の価格の実際を理解しておく必要がある

2014年 06月27日 11時05分