木にさわっているときは目が真剣!木工作家によるワークショップ

家具屋の2階、階段をあがるとその奥で何やら楽しそうな声が聞こえる―。

名古屋市守山区にある有限会社みずのかぐのショールームで行われた「木を愛する人たちの祭典“木(もく)フェス”2017」にお邪魔してきた。
訪れたこの日は、「木工作家によるワークショップ」の開催日で、岐阜県飛騨高山の伝統工芸をベースにした『親子で作る木のアクセサリーたち』のワークショップが開催されていた。高山市で作品の制作、販売をしている『ノクターレ』の塩谷英雄さんを講師に迎え、参加者はあらかじめ四角、丸、蝶々の形にカットされた木片から、バッヂ、髪留め、ネクタイを作る作業を楽しんでいた。

この日のワークショップに参加したのは大人11名、子ども9名。
「小・中学生のころに学校の授業で木工をやったことはありますけど、それ以来こんな工作したことなかったですからね。つい夢中になってしまいます」と話すお父さんも。
焼ゴテで蝶ネクタイに模様をつけていたお父さん。そのデザイン性に塩谷さんはじめ、その場にいた人たちから大絶賛!子どもよりも真剣になるお父さんお母さんの姿が印象的だった。

ワークショップで使用した木は飛騨高山の伝統工芸「一位一刀彫(いちいいっとうぼり)」で使用するイチイの木。
「粘りがあって柔らかいから針葉樹は小物作りに向いているんですよ。サクラやブナの木だと硬くてこうはいかない。今はナチュラルな色ですけど、経年変化で木の表面の色が変わるから、それもまた楽しんでください」と、塩谷さんから作業の合間に木の性質を教えてもらう場面も。

「最近の子どもは、田舎でも都会でも遊びといえばゲームばかりで、あまり木とのふれあいがないように思います。こうしたワークショップは地元高山の小学校でも年に10回くらいやらせてもらいますが、みんな木にさわっている間は目が真剣なんですよ。
木にさわって削ったり切ったりしてモノを作ることは、楽しいこと。僕らのように木に携わる者たちが、そういった木工の楽しさをうまく伝えなくてはいけないですよね。こうした木とふれあうきっかけが増えたらいいなと思います」(塩谷さん)

写真左上:電動やすりも怖がらずに挑戦! 右上:『ノクターレ』の塩谷さん。左下:お父さんの力作! 焼ゴテで木に焦げ目をつけておしゃれな模様に。右下:近所から参加した親子。「子どもも見てあげなきゃと思いつつ、つい自分が真剣になってしまいますね」とお父さん写真左上:電動やすりも怖がらずに挑戦! 右上:『ノクターレ』の塩谷さん。左下:お父さんの力作! 焼ゴテで木に焦げ目をつけておしゃれな模様に。右下:近所から参加した親子。「子どもも見てあげなきゃと思いつつ、つい自分が真剣になってしまいますね」とお父さん

小さいうちに木にふれて本物の手触りを知る

郡上の木を使った積木で遊ぶ子ども。つるつるしたさわり心地で木の温かみを感じられる。後ろには木くずを集めた砂場のような遊び場があり、店内はふんわりと木のいい香りに包まれていた郡上の木を使った積木で遊ぶ子ども。つるつるしたさわり心地で木の温かみを感じられる。後ろには木くずを集めた砂場のような遊び場があり、店内はふんわりと木のいい香りに包まれていた

「木がすべすべで柔らかいから気持ちがいい」とお父さんと参加していた女の子。

主宰の有限会社みずのかぐ代表取締役社の水野照久さんは
「こうやって直接木にふれて、木っていいな、気持ちいいなって思ってもらえたら、次につながると思います。
僕の勝手な解釈ですが、小さいときから本物を知るということはとても大切で、大人になってから『このにおい、懐かしいな』とか『手触りが気持ちいい』と感じる感性は、子どものうちに育つのかなと思います。小さいうちに本物にふれる経験がないと、正直大人になってもいいものを選ぶことはできないのかもしれません」と話す。

会場では岐阜県郡上市の木工職人が作った積木広場も用意され、子どもが遊んでいた。無塗装でつるつるに仕上げられた積木はひとつひとつ色も形も違い、角がないので小さな子どもの遊び道具としても安心感がある。隣にはスギとヒノキの間伐材を使ったチップで「砂場(?)」も作られていた。スコップですくってみると木のいい香りが漂ってくる。
「どうぞ袋に入れて持ち帰って! お風呂に入れると気持ちいいですから」と水野さん。家に帰ってからも木のことを思い出してもらえるようにとの工夫なのだという。

体験合宿付き学習机『コダマデスク』からすべては始まった

今回の“木フェス”は、同店が考案した「コダマプロジェクト」の延長線上にある。このプロジェクトについては以前の記事で紹介したが、ここでもう一度簡単にふれておこう。

プロジェクトのスタートであり核となるのは、体験合宿付きの学習机『コダマデスク』。大量に植林されたはいいが、使い道がなく放置されているスギの主伐材を有効活用し、子ども用の学習机を製作。机を購入した親子は木の産地である岐阜県の山の中で一泊二日の合宿を行い、遊びながら木とふれあうことで自分の机がどんなところでどのようにしてできるのか楽しみながら知る内容となっている。毎年限定20台の製造で、2013年のスタート以降毎年完売する人気の商品だ。
木工所、集成材工場、林業、森林インストラクター、デザイナー。木を愛し日本の山を守りたいという思いでつながった『コダマデスク』のプロジェクトメンバーたち。
木が育つ上流の「山」と、それを使う下流の「人」とのつながりを作ることで、木を循環させるという大きな目的を含んでいるのがこのプロジェクトなのである。

「山で家具や作品を作っている職人さんは、自分が作ったものを使う人とは顔を合わせる機会がほとんどないんですよね。こうして、下流の町に出てきてもらってお客さんとふれあってもらうと、またこの先のモチベーションにもつながると思っているんです。“木フェス”も、こうした作り手である職人と、売る人、使う人をつなぐ目的で今後も続けていきたい」
と水野さんは話す。

上流の山と下流の街の人と人とをつなぐ「コダマデスク」プロジェクトの相関図。コダマデスク、コダマソファ、コダマベッドと、さまざまな家具がこのプロジェクトから誕生している上流の山と下流の街の人と人とをつなぐ「コダマデスク」プロジェクトの相関図。コダマデスク、コダマソファ、コダマベッドと、さまざまな家具がこのプロジェクトから誕生している

家具屋の“人となり”にふれるきっかけになれば

自ら丸太切りにチャレンジする水野さんは、木を愛するアイデアマン。明るい水野さんの“人となり”にふれて同店のファンになる人も多い自ら丸太切りにチャレンジする水野さんは、木を愛するアイデアマン。明るい水野さんの“人となり”にふれて同店のファンになる人も多い

“木フェス”では、ワークショップのほかにも、来店者が参加して仕上げやお手入れの体験ができる「一枚板天板の仕上げ体験」や「丸太早切り選手権大会」も開催。ここでも楽しみながら木とふれあうきっかけ作りを提供している。
また、一枚板の端材を使った小さな机「~小さな一枚板~ものごころテーブル」の販売も行った。このテーブルは“木フェス”の期間前に来店して予約をし、フェス期間中にもう一度店頭にきて、お気に入りの天板を選んで購入する仕組み。

「お客さんがイベントに来てくれてワークショップを楽しんだ、というだけでは次につながりません。木にふれるだけじゃなく家具屋の“人となり”にふれる、そういうきっかけ作りにしていきたいんです」(水野さん談)。

初めての家具屋に行って、初見で大きな買い物をする人はおそらく少ないだろう。信頼できる家具屋かどうか、自分の好きなものを置いていそうな店かどうか、そういった下見段階としてイベントを利用してもらえたら、とも話していた。

世界木質化計画! 木でできた原付!?

今回の“木フェス”でひと際目立っていたのが、店頭に置かれていた木のバイクだった。
『世界木質化計画「世界を木だらけにしちゃえ!”」』と銘打って、木製でないものを木にしてしまおうという企画だ。
今回は国産の原付を『コダマデスク』の産地でもある東白川村の職人によって、スギやヒノキでデコレーション。ちゃんとエンジンもかかり駐車場での試乗もできる。さらにヘルメットまで木製!木への愛があふれだしている。

とことん木を愛して楽しむ“木フェス”。
大人も子どもも木の気持ちよさを実感できたイベントだったのではなかろうか。

「コダマデスクを買って木の机に座っているからといって、山の荒廃がすぐに解決するわけではないと思っています。けれど、この子たちが大きくなって木のよさを知っている大人が増えていくことが、将来的に山の問題を解決する道になるのではないかと期待しているんです」(水野さん)

木の学習机を使い、木の香り、木の良さを知る子どもが親となったとき、やはりいいものであれば自分の子どもにも同じようなものを与えようと思うもの。
山の木が長い時間をかけて成長するように、木への愛着も子どものころから育てていけたなら、日本の山は元気を取り戻していけそうな気がする。

ボディも計器もシートもミラーも木でデコレーションされた原付。ちゃんとエンジンもかかるしウインカーもつく。“木フェス”期間中は同店の駐車場で試乗体験もボディも計器もシートもミラーも木でデコレーションされた原付。ちゃんとエンジンもかかるしウインカーもつく。“木フェス”期間中は同店の駐車場で試乗体験も

2017年 03月09日 11時00分