2017年1月より加入対象者が大きく広がった!

老後の生活資金は、公的年金にプラスして個人が自助努力で準備していくことも大切である老後の生活資金は、公的年金にプラスして個人が自助努力で準備していくことも大切である

昨年5月に確定拠出年金に関する法改正があり、2017年1月から個人型確定拠出年金に加入できる対象者が拡大した。これまで個人型確定拠出年金に加入できるのは、自営業者や企業年金を導入していない企業で働く会社員に限定されていたが、今年からは公務員や専業主婦、企業年金を導入している企業で働く会社員なども新たに加入できるようになった。これにより、現役世代のほとんどの人が加入できる制度となった。

このような対象者拡大の背景には、公的年金の先行きに不安があり、個人が自助努力で老後資金に備える環境を拡大していきたいという狙いがあると考えられる。漢字だらけの長い名称に「iDeCo(イデコ)」という愛称をつけたことにも、できるだけ認知を広げて身近な制度というイメージを持ってもらいたいという思いが感じられる。

ただし、「これからはあなたも確定拠出年金に加入できますよ」といわれて、では始めてみますとすぐに行動に移せる人は少ないだろう。そもそも、企業型に加入していた人を除いて確定拠出年金のことをよく知らなかった人が多いはずである。確定拠出年金がどんなもので、実際にメリットがあるものなのかがわからないと、加入の判断をすることなどできないだろう。

そこで、ここからは確定拠出年金がどのようなもので、どんな人に活用メリットがあるのかを、制度のPRではなく冷静に考察していきたいと思う。

そもそも確定拠出年金とは?

確定拠出年金(DC)は、国民年金や厚生年金に上乗せする企業年金の一つで、企業が実施する企業型(企業型DC)と国民年金基金連合会が実施する個人型(個人型DC)がある。今話題になっているのは、この個人型のことだ。

確定拠出年金が公的年金や従来型の他の企業年金と大きく違うのは、加入者個人が自分で掛金の運用先を決めて、その運用成果により将来受け取る年金の額が変わってくるという点だ。加入者は、自分の掛金(企業型の場合は企業負担分も含む)を原資として自分の責任で運用し、運用に成功すれば大きなリターンを得られるが、失敗すれば元本割れしてしまうこともあるということだ。

いきなりリスクのあることからお話することになってしまったが、個人型確定拠出年金の主な特徴をまとめると以下のようになる。

○加入者の年齢は20歳以上60歳未満(20歳未満の厚生年金保険加入者もOK)
○毎月、掛金を支払っていく(60歳到達まで)
○自分の掛金は自分で運用する
○60歳以降(原則)、年金または一時金としてお金を受け取る

運用に関する部分を除けば、現役世代のうちに掛金を支払っていき退職年齢以降にお金を受け取るという、一般的な年金のイメージと同様な制度であることがおわかりいただけたのでははないだろうか。

ちなみに、個人型確定拠出年金には毎月の掛金に上限があり、加入者はその範囲内で自分の掛金を決めることとなる。

個人型確定拠出年金の掛金は、加入者の職業や企業年金への加入状況によりそれぞれ上限額が決まっている個人型確定拠出年金の掛金は、加入者の職業や企業年金への加入状況によりそれぞれ上限額が決まっている

個人型確定拠出年金のメリットとデメリット

確定拠出年金の概要をおわかりいただいたところで、個人型確定拠出年金についてもう少し詳しく、そのメリットとデメリットをみていきたい。

<個人型確定拠出年金のメリット>
○掛金が全額所得控除され、毎年の所得税・住民税が安くなる
○運用益に税金がかからない
○将来、年金を受けるときに所得控除(退職所得控除、公的年金控除)がある

個人型に限らないが、確定拠出年金の一番のメリットは掛金の全額が所得控除されることだ。例えば毎月10,000円ずつ拠出した場合、年間所得から120,000円が控除される。この120,000円に相当する所得税と住民税は、平均的な所得の会社員の場合で約24,000円と考えられる。加入期間中、毎年これだけの税金が安くなると考えるとかなり大きなメリットといえるのではないだろうか。また、通常は株式や投資信託の利益や預金の利子などには20%の所得税がかかるが、確定拠出年金の運用益は非課税とされている。

なお、掛金が所得控除される代わりに、将来受け取る年金は全額がその年の所得となり課税対象となるが、その際にも退職所得控除、公的年金控除等が使えるため、一般的には現役世代にかかるよりも少ない税金ですむか、場合によっては税金がかからないですむこともある。

<個人型確定拠出年金のデメリット>
○金融機関へ支払う管理手数料が高い(月額500~600円程度)
○投資初心者には運用が難しい(リスクもある)
○60歳になるまで引き出せない
○原則、途中で解約できない

個人型確定拠出年金には加入時の初期手数料と毎月の管理手数料が必要だ。初期手数料は1回きりでそれほど影響はないが、毎月の管理手数料は非常に割高となっている。管理手数料は金融機関により違うが、おおむね月額500~600円くらいとなっている。もし掛金10,000円の人が500円の手数料を支払うと、その比率は5%となる。マイナス金利で運用難の時代に、いきなり5%引かれたところから運用しなければならないのは、大きなデメリットといえる。

その他、確定拠出年金の主な運用商品が投資信託であることを考えると、投資初心者にとっては自分で運用しなければならないこと自体がデメリットになってしまうだろう。また、年金という制度であるため仕方がないことであるが、原則、途中でやめたりお金を引き出したりできないということにも注意が必要だ。(掛金の額を変更したり、拠出を停止することはできる)

個人型確定拠出年金は利用したほうがいいのか?

所得控除による節税効果は、長年積み重ねると大きな金額になる所得控除による節税効果は、長年積み重ねると大きな金額になる

メリットもデメリットもある個人型確定拠出年金であるが、はたして利用した方がよいのだろうか?

個人の運用成績や年金受取時の経済状況に左右される部分があるが、老後に向けた貯蓄や資産運用をするのであれば、いずれにせよ何らかの金融商品を利用することになるので、その点は確定拠出年金以外の方法を利用しても原則同じこと。それならば多くの人にとって、メリットが上回ってくる制度といえるだろう。

会社員、公務員、自営業者等、職業を問わず所得がある人ならば、掛金の所得控除を受けながら老後資金を準備できて運用益も非課税になるので、独自に運用するよりも税制面で大きなメリットがある。なかでも、自営業者と新興系企業や規模が小さい会社などで退職金制度が整備されていない会社の会社員にとっては、年金受け取り時に退職所得控除による大きな非課税枠を使えるというメリットが大きい。もっといえば、それらの人たちは退職金制度のある企業の会社員や公務員と比べると、リタイア時に一千万円単位の収入差ができてしまうので、ぜひ自助努力は行っておくべきだといえるだろう。

一方で、専業主婦の人には注意が必要だ。なぜなら収入のない専業主婦の場合、確定拠出年金の最大のメリットである所得控除が受けられないからだ。運用益に対する非課税制度はあるので、資産を増やせたときにはそのメリットを受けられるが、高額な管理手数料を引かれたところから資産を増やしていける自信のある人以外は、安易にやらないほうがいいだろう。

個人型確定拠出年金を始めるときは

確定拠出年金の運用は、いろいろなリスクタイプの資産に分散して投資することが大切である確定拠出年金の運用は、いろいろなリスクタイプの資産に分散して投資することが大切である

個人型確定拠出年金を始めたいと思ったときには、自分で金融機関に申し込むことが必要だ。銀行・証券会社・保険会社など多くの金融機関が取り扱っており、各社がWEBサイト上で案内をしているので、取り扱い運用商品や管理手数料の額などを比較してどの金融機関にするかを選ぶとよいだろう。

最後に、投資初心者が確定拠出年金を始める場合の基本的な運用の考え方をお伝えしておきたい。確定拠出年金の運用商品には、大きく分けて元本確保型の定期預金や保険商品と元本保証のない投資信託がある。さらに投資信託を分類すると、国内債券型、国内株式型、外国債券型、外国株式型、不動産投信型、それらを組み合わせたバランス型などがある。投資初心者であれば、いきなり株式型などに大きく投資することは控えた方がよいだろう。まずは元本確保型商品や国内債券型の投資信託を中心に運用し、分散投資として徐々に外国債券型や不動産投信型などの比較的リスクの小さい投資信託の比率を高めていったり、バランス型の投資信託を組み合わせていったりするとよいだろう。

資産運用はプロであっても難しいものなので、確定拠出年金を開始する前には資産運用について勉強し、最低限、基本的な商品知識とそのリスクは理解しておくことをおすすめする。

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2017年 02月27日 11時05分