陸・海・空のスピード輸送ネットワークと高度な付加価値機能を一体化した日本最大級の物流ターミナル「羽田クロノゲート」

東京都大田区。宅急便で有名なヤマトグループが所有する総合物流ターミナルが「羽田クロノゲート」。完成は2013年9月。広々とした工場跡地を購入し、完成させたものだ。
「羽田空港、首都高速の出入り口、東京港や横浜港、品川にあるJR貨物の東京貨物ターミナル駅などへの抜群のアクセスを考えると、今後このような魅力的な立地は出ないだろういうことで、かつてない額の投資額、約1400億円という巨費を投じてこの場所に拠点をつくることにしました」と語るのは、ヤマトホールディングス株式会社 広報戦略担当 神地秀樹さん。

施設名称は、ギリシャ神話における時間の神〈クロノス〉と、国内とアジアをつなぐ〈ゲートウェイ(Gateway)〉=「門、出入り口」の2語を組み合わせた造語として、「新しい時間と空間を提供する物流の『玄関』であるとともに、物流の新時代の幕開け」となることを表現して「羽田クロノゲート」と名付けられた。

この羽田クロノゲートは、ヤマトグループが目指す、物流をコストから「価値を生み出す手段」に進化させ、顧客の業種・事業規模を問わない「物流の最適化」を実現する『バリュー・ネットワーキング』構想の核となる施設。それでは、『バリュー・ネットワーキング』構想について紹介しよう。

環八沿いに建つ羽田クロノゲート。「地域貢献エリア」として、道路沿いにカフェや保育所、緑化した公園などを配置。</br>最新の物流システムを備えるだけでなく、地域住民との共生を目指した施設となっている環八沿いに建つ羽田クロノゲート。「地域貢献エリア」として、道路沿いにカフェや保育所、緑化した公園などを配置。
最新の物流システムを備えるだけでなく、地域住民との共生を目指した施設となっている

宅急便のネットワークにグループ各社のサービスを加え、付加価値の高い物流サービスを提供

ヤマトグループが築き上げたスピード輸送ネットワークに付加価値を追加した『バリュー・ネットワーキング』構想で、物流の改革を進めるヤマトグループ。物流と融合した新たなビジネスを生み出しているヤマトグループが築き上げたスピード輸送ネットワークに付加価値を追加した『バリュー・ネットワーキング』構想で、物流の改革を進めるヤマトグループ。物流と融合した新たなビジネスを生み出している

羽田クロノゲートには、ヤマトグループの15社が入居。各社がコラボレーションをして宅急便に付加価値を付けることで、「より早く、より高品質」を追求した、『バリュー・ネットワーキング』構想と名付けられた新たなビジネスモデルを構築している。

荷物を止めることなく、流れの中で付加価値を付けている新たなビジネスモデルの一例が、医療用器械の洗浄やメンテナンスを行う、ヤマトロジスティクスの羽田メディカルセンター。病院の手術で使われる医療用器械は必要に応じてレンタルされており、ここでは使い終わった器械を洗浄し、動作確認などのメンテナンスを行う。そして宅急便で構築されたあらゆる輸送手段を使って全国の病院にスピーディに届けることで、リードタイムの短縮と流通在庫の圧縮を可能にしている。

ヤマトマルチメンテナンスソリューションズの羽田メンテナンスセンターでは、主に家電メーカーの商品の修理を行っている。宅急便ネットワークに修理という付加価値機能を加えることで、迅速かつ確実な対応を実現。家電製品を中心に、修理に関するお問い合わせから引き取り、点検、修理、お届けまでをフルサポートすることで、顧客満足度向上に貢献している。

羽田クロノゲートでは、ほかにも1枚から対応可能なオンデマンド印刷、さらに書類の封入・封緘作業、通関業務など数々の業務を行っている。
「例えば印刷業務ですと、同じ薬でも成分が変わることがあるため書類にも変更が多く、まとめて印刷して保管しておくことができません。ここでは1枚単位で印刷してすぐに宅急便で送ることができるので、お客様はコストと時間を削減でき、私達にとっても宅急便を有効に使った新たなサービスのご提供を可能にしました」(神地さん)

早く確実に丁寧に。従来の2倍のスピードで荷物を処理する最新鋭の機械を導入

誰でも簡単に荷物を送れるのが宅急便の魅力。1976年、関東エリアから始まった宅急便は5年後には全国の都市をつなぎ、1997年には小笠原諸島での取り扱いを開始、全国ネットワークを完成させた。

宅急便の取り扱いは、コンビニを含め全国で約25万店。預かった荷物は宅急便センターという街の直営店に集められ、その後全国70ヶ所の仕分けターミナルがあるベースに運ばれ、お届け先のベースに運ばれる。翌朝お届け先近くにある宅急便センターに届いた荷物は、セールスドライバーの手によってお客様のもとに届けられる。羽田クロノゲートは、そのベースの役割も担っており、東京都の5区分(大田区・品川区・渋谷区・目黒区・世田谷区)の荷物を扱っている。

羽田クロノゲートに設置された最新鋭の仕分機は、従来のおよそ2倍のスピードで処理が可能。底面をスライドさせて仕分けを行うクロスベルトソータを使うことで、荷物に余計な負荷をかけずに丁寧に扱われているのも特徴だ。

「羽田クロノゲートの仕分機の特徴は、早さと同時に品質を担保している点です。早さだけを追求して品質が落ちては意味がありません。早く確実に仕分けを行い、それでいて荷物を丁寧に扱える仕組みになっているところが、羽田クロノゲートの強みと言えます」(神地さん)

左上/従来施設の2倍の処理能力を持つ「クロスベルトソータ」(写真手前)。ベルトコンベア(写真奥)で運ばれた荷物が空いているクロスベルトソータにスムーズに合流するところは一見の価値あり。ぜひ工場見学でご覧いただきたい 左下/クロスベルトソータが底面をスライドさせることで、行き先別に仕分けを行う。板などで仕分けしないため、接触もなく荷物が傷まない 右/上層階で流通加工した荷物を仕分けエリアに直結させることで作業時間を短縮し、高品質化とスピードアップを実現する「スパイラルコンベア」。7階から2階までつながっており、従来のエレベーターを使っての移動が不要になった左上/従来施設の2倍の処理能力を持つ「クロスベルトソータ」(写真手前)。ベルトコンベア(写真奥)で運ばれた荷物が空いているクロスベルトソータにスムーズに合流するところは一見の価値あり。ぜひ工場見学でご覧いただきたい 左下/クロスベルトソータが底面をスライドさせることで、行き先別に仕分けを行う。板などで仕分けしないため、接触もなく荷物が傷まない 右/上層階で流通加工した荷物を仕分けエリアに直結させることで作業時間を短縮し、高品質化とスピードアップを実現する「スパイラルコンベア」。7階から2階までつながっており、従来のエレベーターを使っての移動が不要になった

カフェやベーカリー、保育所の設置などで地域に貢献。環境にも配慮し、施設全体でのゼロ・エミッションを推進

お話を伺った、ヤマトホールディングス株式会社 広報戦略担当 神地秀樹さん(右)と村上詠美さん(左)。「宅急便だけでなく、今後さまざまなサービスをご提供していきます」(神地さん)。「この施設があるのはセールスドライバー一人ひとりの配達の力があってこそ。アテンダントとして、ヤマト運輸だけでなくグループ会社のソリューションについてもPRしていきたいと思います」(村上さん)お話を伺った、ヤマトホールディングス株式会社 広報戦略担当 神地秀樹さん(右)と村上詠美さん(左)。「宅急便だけでなく、今後さまざまなサービスをご提供していきます」(神地さん)。「この施設があるのはセールスドライバー一人ひとりの配達の力があってこそ。アテンダントとして、ヤマト運輸だけでなくグループ会社のソリューションについてもPRしていきたいと思います」(村上さん)

東京ドーム2個分という広大な敷地を持つ羽田クロノゲート。新たなビジネス拠点としての役割を果たすだけでなく、地域への貢献や環境配慮も考えられている。
「羽田クロノゲートは主要幹線道路である環八に面しています。そこで、地域貢献エリアと呼んでいるのですが、環八から見える場所にカフェやベーカリー、認証保育所、スポーツ施設、公園などを配置し物流棟を奥に持っていくことで、物流施設というイメージを極力排除するようなレイアウトにしました」と神地さん。様々な施設は、街の財産として地域住民が利用している。

屋上から施設内までの大規模な緑化、大きな吹き抜けをつくることによる自然採光・自然換気、太陽光発電による省エネ、雨水をろ過し洗車や緑地への散水に使うなど、建物全体で環境に配慮している羽田クロノゲート。ゴミの分別も徹底し、施設全体でのゼロ・エミッションを推進。また、緑化とともに里山を模した広場、人口の池などを設け、生態系の保全にも取り組んでいる。

羽田クロノゲートでは、宅急便が正確に届く仕組みや最新の物流システムを見学できる「見学コース」を設置している。
「地域の方々、また宅急便を利用してくださっている方々への感謝の気持ちを込めて、見学コースは運営されています。実際に羽田クロノゲートに入って見学することで、宅急便の仕組みに興味を持っていただけたら嬉しいですね。修学旅行や社会科見学でも数多く利用していただいております」と、同社 広報戦略担当、見学コースのアテンダントも務める村上詠美さん。最新の物流施設を予約制で見学できるので、ぜひ行ってみてはいかがだろう。時間は90分。荷物が早く丁寧に扱われていることに、きっと驚くはずだ。

来年、関西に大規模物流施設が完成予定という同社。その結果、関東~関西間の宅急便の当日配達が可能になるという(現在は都内で実施)。宅急便のさらなる進化、ただ運ぶだけでなく付加価値の高い物流サービスを提供するなど、新たなチャレンジに挑むヤマトグループの今後の取り組みに注目したい。

■羽田クロノゲート
http://www.yamato-hd.co.jp/hnd-chronogate/

■羽田クロノゲート・見学コース
http://www.yamato-hd.co.jp/hnd-chronogate/visitortour.html

2016年 11月29日 11時04分