「トレーラーハウス」で実現する、土地に縛られず自由に移動できる暮らし

家としての機能を完備しており、長期間の暮らしが可能家としての機能を完備しており、長期間の暮らしが可能

「住む場所に縛られることなく、自由に移動して暮らす」。そんなライフスタイルに憧れを持つ人たちの間で、じわりと人気を集めているのが「トレーラーハウス」だ。自由に移動できる家という点では、真っ先に「キャンピングカー」を思い浮かべる向きも多いだろう。しかし、こちらは給排水をタンクで行うなど、あくまで短期間の生活を前提としたもの。長期間住むことを考えた場合、最も有力な選択肢となるのがトレーラーハウスでの暮らしだ。

トレーラーハウスのメリットは、固定資産税がかからないことにある。水道、電気、ガスも引き込むことができ、家として十分な機能を満たしているが、一般的には車両扱いとなるため、固定資産税や不動産取得税はかからない。さらに、車両であっても自走できないことから、自動車税も納めなくていい。このように経済的な面からも大きなメリットがあるのだ。

ただ、「実際にトレーラーハウスを購入するにはどうすればいいのか」、「メリット・デメリットはどのようなものあるのか」といった具体的な情報は少ないのが実情だ。そこで今回は、賃貸管理・賃貸斡旋・売買をメインにしながら、トレーラーハウスの製造・販売も手掛ける株式会社ブルーボックス(本社:愛知県稲沢市)の企画販売課リーダー・寺西慶記さんに詳しい話を聞いてみた。

「車内」の感覚はナシ! 一般の戸建て住宅と遜色ないトレーラーハウスを販売

同社がトレーラーハウスの販売を始めたのは2012年。グループ会社のハウスメーカーで建売住宅を販売していることから、自社で製造・販売を手掛けるトレーラーハウス事業をスタートさせた。

2013年には、岐阜県・ひるがの高原でコテージを展開する「和み舎ひるがの」と提携。同社がトレーラーハウスを提供、和み舎ひるがのに運営・管理を委託し、宿泊代金の一部を徴収するビジネスを展開。運営開始3年目の今年は黒字化を果たす予定だ。

同社のトレーラーハウスは、牽引用のタイヤ部があるものの、外観・内装はトレーラーというより一般住宅の装い。外観のイメージが異なる「プレジャー」「ビギン」「ログタイプ」の3種類があり、稲沢市内のモデルルームには「ログタイプ」が設置されている。取材時に内部を見せてもらったが、トレーナーの車内という感覚は全くなかった。寺西さんも「上部の建物自体は通常の住宅と全く変わりません」と説明する。

家としての機能を完備しており、長期間の暮らしが可能家としての機能を完備しており、長期間の暮らしが可能

本体価格は650万円程度。意外なネックは、高額な「運搬費」や「設置費」

「私が担当し始めたここ数年の間に、トレーラーハウスの市場はかなり盛り上がってきています」と話す寺西さん。90年代後半に一時期、キャンピングカーと合わせてブームが到来したが、ここに来て再び脚光を浴び始めているというのが寺西さんの見立てだ。

では、トレーラーハウスを購入・設置するには、一体どれほどのお金がかかるのか。ブルーボックスの場合、基本的に受注生産のため、間取りや設備によって多少の増減はあるものの、キッチンや浴室、洗面所などが付いた「プレジャー」で650万円(税別)。そのほか、本体価格とは別に、運搬費や設置費が必要となってくる。

「建物代は一般の戸建てに比べて安いですが、その分、運搬費に50~100万円ほど必要です。運搬ができるのは深夜のみで、申請書の提出もいるため時間がかかりますし、狭い道や障害物があるときには、重機を使用するケースもあり、相応の費用が要ります」(寺西さん)。

トレーラーハウスのメリットは固定資産税がかからないことだが、これはタイヤを付けて牽引してくることが大前提。それだけに、運搬費を捻出するだけではなく、そもそも設置場所に運搬可能かどうかもあらかじめ確認が必要だ。

また、通常は住宅が建てられない市街化調整区域や農地に設置できるのも利点のひとつだが、ここにも落とし穴が潜んでいる。トレーラーハウスは相当な重量があるため、コンクリートで地盤改良をしないと沈んでしまうからだ。一見すると自由度が高いように見えるトレーラーハウスだが、運搬や設置場所の面で、意外にさまざまな制約が出てきそうだ。

キッチンや浴室、洗面所などを設置したトレーラーハウス内部キッチンや浴室、洗面所などを設置したトレーラーハウス内部

更地にすぐ戻せるという利点も。税制上のメリットは未来永劫続くという過信は禁物

農地や市街化調整区域への設置は地盤改良などが必要農地や市街化調整区域への設置は地盤改良などが必要

必ずしも「手軽に移動・設置」というわけにはいかないトレーラーハウスだが、それでも「税金面以外でも大きなメリットがある」と話す寺西さん。それは「すぐに更地に戻せる」という点だ。

「現状の空き地をとりあえず有効に使いたいという方にはメリットが大きい」と寺西さん。子ども部屋などをトレーラーハウスで作り、独立していらなくなれば動かせるうえ、必要なくなれば売却も可能。売却で得たお金を運搬費に充て、あわよくばお金が戻ってくることも考えられる。住宅を取り壊す費用を考えれば、かなり有効な手段といえそうだ。事務所や店舗として活用する場合には、「例えば、トレーラーハウスで店舗を構え、立地の問題で集客に苦戦している場合、店舗ごと別の空き地に移動するといったことも可能」(寺西さん)だという。

寺西さんが購入予定者に釘を刺すことは、現状のメリットを過信しないこと。市街化調整区域や農地への設置は、自治体によって規制の対象となる場合もあるので、事前確認は忘れずに行う必要がある。実際、寺西さんが担当した案件でも、購入手前まで話が進んでいたものの、「トレーラーハウスを持ち込んでもらっては困る」と役所で許可が下りなかったケースがあるそうだ。また、固定資産税がかからないのはあくまで現状の話。「トレーラーハウスが普及すれば、将来的に“トレーラーハウス税”といった税が新設される可能性もゼロではありませんね」(寺西さん)。

以上のようなメリット・デメリット、将来の使い方などを踏まえ、くれぐれも購入は慎重に進めていくことが重要だろう。ともあれ、現状さまざまなメリットがあるトレーラーハウス。新たなライフスタイルを実現する手段として、“移動可能でコンパクトな住空間”を嗜好する波は、今後も広がりを見せていきそうだ。


■取材協力/株式会社ブルーボックス
http://www.bluebox.co.jp/

2016年 09月15日 11時07分