地震保険は火災保険の半分しか契約できない

地震や地震にともなう火災・津波により住宅や家財に被害があった場合に、その損害を補償してくれる地震保険。ここ数年、大きな地震が続いていることや将来の地震リスクについての報道を受け、その注目度が高まっている。

実際の地震保険の加入率をみても、ずっと右肩上がりで上昇してきており、2014年度には全国平均で28.8%(火災保険への付帯率では59.3%)に達している。特に東日本大震災があった直後の2011年度は例年よりも大きな伸びとなった。また今年起こった熊本地震の被害は記憶に新しく、さらに加入率が伸びてくることが予測される。

ただし、地震保険に加入したことで、将来地震によって被害を受けた場合でも保険金で家を建て直したり家財が元通り購入できると安心しているとしたら、それは大きな間違いである。そもそも地震保険は単独で加入することができないため、火災保険に付帯する形で加入しなければならないが、その保険金額は火災保険の保険金額の30~50%の範囲内でしか契約できないのだ。

したがって、住宅を建て直したり再購入できるようにと再築価格・再購入価格で火災保険を契約していたとしても、付帯する地震保険で設定できる保険金額は最大でもその半額となる。つまり、地震で住宅が全壊したとしても、受け取れる保険金額は再築価格の半額ということになり、保険金だけでは住宅を建て直すことは無理なのである。これは家財についても同様で、地震保険では、すべての家財を買い直すことはできない。

さらにいうと地震保険の保険金額には、建物は5,000万円、家財は1,000万円という上限があり、どんな豪邸に住み高額な家財を保有していたとしても青天井で保険金額を設定できるわけではないのだ。

地震保険については、このように契約段階から上限があることを理解しておく必要がある。

日本損害保険協会「地震保険の都道府県別加入率の推移(損害保険料率算出機構調べ)」より作成日本損害保険協会「地震保険の都道府県別加入率の推移(損害保険料率算出機構調べ)」より作成

いざというときの保険金の支払基準

また地震保険については、契約時の保険金額の上限とあわせて、保険金の支払いについても独自の基準があることを理解しておく必要がある。

地震保険の保険金の支払いは、実際の損害額が補償されるのではなく、被害の状況により全損・半損・一部損という3段階に分けられ、全損の場合に契約金額の100%が、半損の場合に50%が、一部損の場合に5%が支払われるということになっている。(※支払基準は表参照)

表のように地震保険の支払いは損害の程度により3段階に分かれていて、若干大雑把な区分になっている印象がある。たとえば、地震により、建物の主要構造部分に時価の20%の被害を受けた人は、契約した地震保険金額の50%を受け取ることができるが、19%の被害と認定されてしまった人は、契約保険金額の5%しか受け取ることができない。この差はとても大きく、少しの被害の差により契約者同士で不公平感を感じてしまうこともあるはずだ。

そのため、2017年1月の改定では、保険料率改定とともに地震保険の損害区分が3段階から4段階に変更される予定だ。

財務省「地震保険制度の概要」を元に作成財務省「地震保険制度の概要」を元に作成

それでも地震保険が必要な理由

地震で被災した場合には、生活を再建するための費用がかかってくる地震で被災した場合には、生活を再建するための費用がかかってくる

ここまでみてきたように、地震保険にはそもそも契約できる保険金額に制限があり、保険金の支払いについても実際の損害額が補償されるというしくみにはなっていない。そう考えると「はたして地震保険は意味があるのか?」と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれない。しかし、それでもやはり地震保険には加入しておいた方がよいだろう。その理由を地震保険の意義も含めて考えてみたい。

(1)地震の被害は地震保険でなければ補償されない
地震によって建物や家財が被害を受けた場合は、火災保険では保険金は出ない。したがって、地震の被害に備えるには、原則、地震保険に入るしかない。

(2)被災後の生活再建資金が必要
地震で建物や家財に損害を受けると、被害が軽くて元の家に住むにしても、新しい住宅を探すにしても、新たに生活を始めるにあたり当座の資金が必要である。たとえば、建物・家財の修理代、必要な家具・家電の購入費、新しい住宅への引越し費用などだ。地震保険金で元の建物を建て直すことはできなくても、このような生活再建費用にあてることができる。

(3)住宅ローンがある場合の当面の返済資金
たとえば、まだ住宅ローンが残っている状態で地震の被害にあってしまった場合、建物がなくなったのに住宅ローンだけが残るということになる可能性がある。もしそうなったとしたら、新たな住宅を取得するためにさらにローンが必要になり、二重ローンとなっていまうこともある。今回の熊本地震では二重ローンの救済策の適用などもあったが、地震保険金があれば、そのお金を当面の住宅ローンの返済にあてることも可能だ。

このように、地震保険には被災して住宅を失った場合に、少しでも早く新しい住まいを手に入れて新生活をスタートさせるための当座の資金を用意するという役割がある。たとえ建物を建て直したり家財を元通り買い直したりすることができないといっても、決して意味がない保険、入る必要がない保険というわけではない。

このことは財務省WEBサイトの地震保険制度の説明においても、「地震保険は、地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として…」という表現があり、地震保険は被災者の生活を再建するための保険であるということがうたわれている。また、だからこそ、地震保険は民間の保険会社が責任を負いきれないような巨額な地震損害があった場合に備えて政府が再保険することでそのしくみが成り立っているのだ。

地震保険を検討し加入される方は、万一地震被害にあってしまった場合に、受け取った保険金額を見てこんなはずではなかったと思うことがないように、地震保険のしくみと役割をよく理解したうえで加入することが大切である。

地震保険加入の考え方

地震保険は建物と家財が補償の対象となっているので、居住形態に応じて優先順位を考えて加入することが大切である地震保険は建物と家財が補償の対象となっているので、居住形態に応じて優先順位を考えて加入することが大切である

地震保険の意義や必要性がわかったところで、実際に火災保険に加入する場合の考え方を居住している住宅別に考えてみたい。

1.賃貸住宅
賃貸住宅の場合は、火災保険と同様で建物に保険をかける必要はなく、保険の対象は家財のみである。したがって、特別に考えることはなく家財に火災保険・地震保険をかけておくということになる。

2.持ち家(マンション)
マンションの場合は、自分の部屋である専有部分を所有していることになるため、個人で加入する火災保険・地震保険の対象としては建物と家財の両方が存在する。もちろん、予算が許せば建物・家財の両方に加入することが望ましいが、住宅ローンも抱えて地震保険料の負担が厳しいという場合は、地震保険については建物よりも家財を優先して加入するとよいだろう。
なぜなら、耐震基準をクリアしているようなマンションの場合は建物よりも家財の方が被害を受けやすいからだ。ただし、旧耐震基準のマンションや築年数の経過したマンションにお住まいの場合は、できるだけ両方の加入を考えた方が賢明だろう。

3.持ち家(一戸建て)
一戸建ての場合は、基本的には建物・家財の両方の保険加入を前提に検討すべきであろう。ただし予算が厳しいという場合は、各家庭の資産状況や万一家屋が大きな損害を受けた場合のその後の住宅のあてがあるかどうかなどによって、契約する保険金額や建物・家財の加入割合などは調整が必要である。

熊本地震での地震保険金の支払状況

日本損害保険協会より(2016年6月6日時点)日本損害保険協会より(2016年6月6日時点)

今年4月の熊本地震では多くの住宅が被害を受け、熊本城も石垣の崩落や建物の倒壊があったことは記憶に新しい。それでは、この熊本地震において地震保険の支払状況はどうだったのであろうか?

熊本地震は4月14日に発生し、その後も大きな地震が連続して起こり大きな被害をもたらした。これに対して、日本損害保険協会ならびに各損害保険会社は、対策本部の設置や熊本市への現地拠点の設置、相談窓口の土・日・祝日の対応、地震保険早期支払のための特別措置などの対応をとった。

その結果として、短期間で多くの問合わせや申請を受付、保険支払いまでを完了することができている。ちなみに地震発生から2ヶ月足らずの6月6日時点で、217,625件の事故受付をし、186,400件の調査を完了させ、168,589件に対して地震保険の保険金支払いを完了させている。なお、その時点での保険金支払額は2,724億円であった。

このように、地震保険はその性格上、大地震に対しても業界をあげて素早い保険金支払いがされるというメリットを備えている。このような特性を理解して有効に活用したいものだ。

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■Lifull FinTechコラムの記事
【続報】「平成28年熊本地震」への損害保険会社の対応
「平成28年熊本地震」での地震保険金の支払状況(2016.6.6時点)

2016年 08月10日 11時06分