賃貸経営、継続!?それとも撤退!?

建物の老朽化、少子化による空き室の増加、さらには相続税の問題など最近はアパートの賃貸経営から撤退する家主も増えている(写真は取り壊し前の上野のアパートの様子)建物の老朽化、少子化による空き室の増加、さらには相続税の問題など最近はアパートの賃貸経営から撤退する家主も増えている(写真は取り壊し前の上野のアパートの様子)

賃貸経営を行っている家主は近年、バブル崩壊後の家賃の下落や相続税の問題、空き室の増加など様々な課題を抱えている上に、家主自体の高齢化も進み、賃貸経営を継続すべきか否かの岐路に立たされている人が多いという。

今回、NPO法人「日本地主家主協会」にうかがい、様々な社会問題や時事の中で現在の地主・家主がどう土地活用の課題解決にあたっているのか、またその対策はどんなことがあるのかなど、色々とお話を聞いてきた。

「滞納」「空き家」「相続」「空室」あらゆる賃貸オーナーの悩みに対応

今回お話をうかがった日本地主家主協会 理事長の岡田光雄氏。大手住宅メーカーに長年勤務した経験を活かし、独自のノウハウを基にしたサービスを展開している今回お話をうかがった日本地主家主協会 理事長の岡田光雄氏。大手住宅メーカーに長年勤務した経験を活かし、独自のノウハウを基にしたサービスを展開している

NPO法人「日本地主家主協会」は、1981年(昭和56年)に創立、2002年(平成14年)にはNPO法人を設立し、協会に登録する地主・家主に向け、公正で中立的なコンサルティング活動を行っている団体だ。相続における不動産の問題、家賃滞納、建て替えや耐震改修のための退室、貸地問題など、公正・中立の立場で課題解決にあたっているという。

日本地主家主協会 理事長の岡田光雄氏によると、現在の賃貸経営は「4K+G」の様相を呈しているという。
「4つのKは、借り手、貸し手、(建物の)高齢化、空室を指します。そこに借り手である外国人(G)が近年増加しており、貸し手側は4K+Gについて気を配らなければなりません」

協会に寄せられる相談は千差万別だというが、中でも相談の多い内容は、「賃料滞納」「空き家」「相続」「空き室」についてだ。これに対し協会ではコンサルティングを行い、オーダーメードとも言える個別の対応を行っている。例えば、全8戸のアパートで空室が相次いでいた物件なども3戸分をオープンスペースに改修し、シェアハウスとして活用。オープンスペース分は部屋数が減るものの、賃貸物件一括借り上げ事業を行う事業者との契約を進めることで安定的な賃貸収入を確保した。

「協会に寄せられる相談は、どれも一筋縄ではいかないものが多いものです。資産組み換えと相続などが絡む問題などは一専門家の判断では対応が難しい。長年の経験により、こうした課題にも一つひとつ解決のお手伝いしています」(岡田氏)

売り手、買い手双方に魅力の「コーポラティブ方式」とは?

分譲会社に土地を売却する場合とコーポラティブ方式の場合の費用比較。コーポラティブ方式では通常分譲会社に支払う分が土地の販売価格などに還元できる分譲会社に土地を売却する場合とコーポラティブ方式の場合の費用比較。コーポラティブ方式では通常分譲会社に支払う分が土地の販売価格などに還元できる

こうした中で、NPO法人「日本地主家主協会」が大手ハウスメーカーと協業し一風変わったサービスを始めた。アパート経営などから撤退したいオーナー向けの「コーポラティブ方式による宅地売却」支援だ。一般的なディベロッパー(分譲会社)を介さず、直接土地の購入希望者を集めて、土地を売却するシステム。これにより、売却者と購入者どちらにもメリットが出てくるという。

一般的な土地売却の場合、土地の所有者からディベロッパー(分譲会社)が土地を購入し、造成工事をした上で一般ユーザーに販売するケースがほとんどとなる。しかし、このコーポラティブ方式では、分譲会社を通さず協会とハウスメーカーがその土地に家を建てたいユーザーを集め、ユーザー間で相談して(プランナーが調整する)土地を分割、直接売り主と買い主が取引するというものだ。分譲事業者分の利益相当額が土地の売り主と買い主に還元され、さらに、買い手側の土地分割を相談できるため、フレキシブルな土地の取得が行えるメリットがある。

こうした方式を進めるには、もちろんノウハウが必要だ。ユーザー間の土地の分割をまとめたり、未造成の土地に対し融資を取り付けるためには金融機関とのノウハウの共有が必要になる。実は日本地主家主協会の岡田理事長は大手ハウスメーカーに長年勤務していた経験を持ち、自身で構築したという「コーポラティブ方式」の宅地売買を既に18件ほど成功させてきた。その中には国の一般競争入札をユーザーが集まり落札した事例もあるという。そうした経験、ネットワークがあってこそ成り立つものだという。

「今後、少子化と高齢化が進む中で、賃貸経営からの撤退を考えるオーナー様は増えていくはずです。その中で売り手と買い手双方にメリットをもたらす土地の販売方法としてコーポラティブ方式は役立つはずです。現在この方式の商標登録申請を行っており、また今後はノウハウを継承できる人材の育成も考えています」(岡田氏)

ちなみに、「コーポラティブ方式」の宅地売買に適した土地は、路線価格よりも高めの価格設定が可能な都市部の土地で、120坪以上程度が想定されているという。

手軽に利用できる「空き家・空地管理サービス」も提供

日本地主家主協会ではこの他にもニーズの多い「空き家・空地管理サービス」を展開しているが、社会福祉法人と連携し就労支援を同時に行うユニークな形式をとっている。

これは「空き家・空地おまわりさん」と呼ばれるサービスだが、月に1回空き家・空地を担当者が点検するもので、窓開閉、室内目視雨漏り点検、敷地内清掃、ポスト清掃、植木などの確認を行う。空き家なら月1回の定期点検で3500円、空地なら同じく月1回で2500円という価格だ。

「都市部にご両親が住んでいた家が空き家になり、お子さんたちは地方に住んでいる。そういったケースが少なからずあります。管理を行わずに空き家のままにしていると不審者の侵入や、不法投棄、害虫の発生で近隣の方に迷惑をかけるなどさまざまなトラブルが懸念されます。相続が決まるまでの間に利用したいといった方も多く、現在では東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県にサービスエリアを拡大し提供しています」(岡田氏)

しかも興味深いのはこの点検業務を、業務を支障なく行える軽度の障害者が登録する社会福祉法人に委託していることだ。障害者の就労支援としても活用され、まさに「空き家」と「就労支援」という社会問題に対し、具体的な方法を提示するサービスと言えるだろう。

空き家・空地管理サービス「空き家・空地おまわりさん」の管理サービス内容。玄関が荒れていると侵入者の標的になりやすい。敷地内清掃やポスト清掃などにより防犯対策としても役立つ空き家・空地管理サービス「空き家・空地おまわりさん」の管理サービス内容。玄関が荒れていると侵入者の標的になりやすい。敷地内清掃やポスト清掃などにより防犯対策としても役立つ

「終活」を含めた今後の賃貸経営を考える

賃貸経営を中心にこれまで進めてきた土地の活用も、家主の高齢化が進む中で現在は「終活」も含めて検討されるようになってきた。このまま賃貸経営を進めるべきか? また撤退すべきか? その判断は個人が抱える事情により一概に判断はつきにくい。ただし、万一撤退に踏み切る場合にも「コーポラティブ方式」という新たな宅地売却の選択肢が出てきたことは、オーナーにとって心強いことではないだろうか。

2016年 01月20日 11時06分