一時期は高騰が懸念された建設資材価格だが…

第2次安倍内閣が発足したのは2012年12月26日のこと。それから早くも3年が経過した。いわゆる「アベノミクス」は評価が分かれ、必ずしも経済がうまく動いているとはいえないが、建設、不動産、住宅などにもさまざまな影響を及ぼしているだろう。2013年から2014年春頃にかけては建設資材の値上がりも大きな懸念材料となった。

それでは現在、建設資材はどのような値動きをみせているのだろうか。国土交通省が毎月まとめている「主要建設資材需給・価格動向調査」などをもとに確認してみよう。

「主要建設資材需給・価格動向調査」(通称「資材モニター調査」)とは、建設資材の供給側(生産者、商社、問屋、販売店、特約店)と需要側(建設業者)から約2,000社のモニターを選定し、毎月1日〜5日を対象日に調査をしているもので、1975年6月から実施されている。調査対象はセメント(普通ポルトランド・バラ物)、生コンクリート(建築用)、骨材(砂、砂利、砕石、再生砕石)、アスファルト合材(新材、再生材)、鋼材(異形棒鋼、H型鋼)、木材(杉正角製材、型枠用合板)、石油(軽油)の7資材13品目だ。

また、調査は「現在及び将来(3ケ月先)の価格動向」を「下落・やや下落・横ばい・やや上昇・上昇」の5段階、「現在及び将来(3ケ月先)の需給動向」を「緩和・やや緩和・均衡・ややひっ迫・ひっ迫」の5段階、「現在の在庫状況」を「豊富・普通・やや品不足・品不足」の4段階で評価している。価格動向については、1(下落)、2(やや下落)、3(横ばい)、4(やや上昇)、5(上昇)で表し、その平均を「指数」としている。指数が「2.6〜3.5」なら「横ばい」と判断される。需給動向についても同様に、指数が「2.6〜3.5」なら「均衡」となる。

建設工事にはさまざまな資材が使われる建設工事にはさまざまな資材が使われる

全国的に価格は「横ばい」、需給は「均衡」、在庫は「普通」

2015年11月25日に発表された「11月1日〜5日」の調査結果をみると、全国における建設資材の価格動向は「すべての資材が横ばい」、需給動向は「すべての資材が均衡」、在庫状況は「すべての資材が普通」となっている。ただし、東日本大震災における被災3県(岩手県・宮城県・福島県)を集計したものでは、骨材(再生砕石)の需給が「ややひっ迫」、骨材(砂、再生砕石)の在庫が「やや品不足」という結果が出ているようだ。

これを都道府県別にみると少し様相が異なる。たとえば生コンクリートの価格動向では、愛知県と香川県の指数が3.7で「横ばい」ゾーンを少し超えた「やや上昇」となっているのに対し、京都府は2.5で「やや下落」となっている。骨材(砂、砂利)でも大半の都道府県は3.0〜3.1の「横ばい」だが、唯一、愛知県は3.6(砂)および3.7(砂利)でいずれも「やや上昇」だ。同じ種類の建設資材といえども、地域によってだいぶ違うことが分かるだろう。

それでは近年における建設資材の値動きはどうなっているのだろうか。「主要建設資材需給・価格動向調査」によるデータから、2010年以降の価格動向(指数)の推移を下のグラフにまとめてみた。ただし、調査対象となっているすべての資材を表示するとかなり煩雑なグラフになるため、ここではセメント、生コンクリート、異形棒鋼、H型鋼、木材(製材)、木材(型枠用合板)の6種類に絞っている。

国土交通省「主要建設資材需給・価格動向調査」をもとに作成国土交通省「主要建設資材需給・価格動向調査」をもとに作成

2014年5月以降は値動きが小さくなっている

上のグラフをみると、2014年4月の生コンクリートと型枠用合板を最後に、「2.6〜3.5」の「横ばい」ゾーンを超えていない。ここに表示しなかった資材についてもおおむね同様の傾向だ。全国的には過去1年半ほど、建設資材価格の上昇が収まり、落ち着いた値動きになっているといえるだろう。

なお、このグラフは一見すると、ここ最近は値下がりが続いているようにも感じられるが、そうではない。2010年以降では指数が3.6〜4.5の「やや上昇」の時期が何度か繰り返された一方で、1.6〜2.5の「やや下落」ゾーンには一度も入り込んでいない。つまりは、数回の値上がりの後で高止まりしている状況だ。

もちろん、短期的にみれば値下がりの局面もあるだろう。新聞などでは前月比、あるいは前年同月比の価格下落が報じられることもある。だが、少し長いトレンドで考えれば依然として価格水準は高いといえる。一般財団法人建設物価調査会の調査に基づく「建築費指数」によれば、ここ1年あまりは工事原価の上昇が止まっているものの、5年前に比べて10%〜20%ほど高い水準で推移している。

ただし、「高い」というのはあくまでも以前の水準と比べたときの話だ。現在の価格が適正な水準よりも高いのかどうかは別の話として考えなければならない。

人手不足は解消? だが人件費はさらなる上昇も

国土交通省のまとめによれば、人手不足の状況は2014年3月をピークに緩和し、現在は地域によって過剰となるケースもあるようだが、人件費の値上がり余地はまだあるとみるのが妥当だろう国土交通省のまとめによれば、人手不足の状況は2014年3月をピークに緩和し、現在は地域によって過剰となるケースもあるようだが、人件費の値上がり余地はまだあるとみるのが妥当だろう

建設資材の価格とともに、住宅価格に大きな影響を及ぼすのが人件費だ。数年前から建設業における人手不足が顕在化し、それとともに人件費の上昇も懸念されてきた。だが、国土交通省のまとめによれば、人手不足の状況は2014年3月をピークに緩和し、現在は地域によって過剰となるケースもあるようだ。

ただし、人手が十分に足りているというわけではない。大手ゼネコン4社の2015年9月中間決算はいずれも営業利益が過去最高となったようだが、その一つの要因として採算性の悪い工事の受注を控えている状況が指摘されている。したがって、人手が足りなくなるような工事を断ることで、「表面上は」人手不足が緩和していることが考えられる。

また、建設業就業者の高齢化も大きな問題となっている。総務省がまとめた「労働力調査」によれば、1998年以降は「29歳以下」の就業者が年々減り続け、2014年は建設業就業者数の11%弱にとどまっている。「55歳以上」の3分の1に満たない水準だ。とくに技能労働者の不足は問題が大きく、建設業における労働環境の改善も進めなければならない。

人件費については職種、地域などによっても異なるため比較は難しいが、国土交通省が定める「公共工事設計労務単価」(1日8時間あたり、全国全職種平均値)は直近の底だった2011年度の13,047円から、2015年度(2015年2月から適用)は16,678円へと、約28%上昇している。

だが、1997年度の水準(19,121円)と比べれば依然として低く、また2013年度からは法定福利費相当額の加算なども含んだ金額が算定されている。もちろん今後の景気動向にも左右されるが、人件費の値上がり余地はまだあるとみるのが妥当だろう。

消費税率の再引き上げ前に建設資材の値上がりはあるのか

前回と同様の措置が講じられるとすれば、引き渡し時期に関係なく旧税率(8%)が適用されるのは</br>2016年9月30日までの契約分となる前回と同様の措置が講じられるとすれば、引き渡し時期に関係なく旧税率(8%)が適用されるのは
2016年9月30日までの契約分となる

消費税率は2017年4月に8%から10%へ再び引き上げられる予定だが、前回と同様の措置が講じられるとすれば、消費税の課税対象となる新築マンション、新築一戸建て住宅などで、引き渡し時期に関係なく旧税率(8%)が適用されるのは2016年9月30日までの契約分となる。前回の引き上げ時ほどではないにせよ、ある程度の駆込み需要が発生し、それに合わせた事業者側の供給計画も立てられるはずだ。

現在は比較的落ち着いている建設資材の価格が、再び上昇傾向を強める局面もあるだろう。そのような状況になれば経済ニュースなどで連日のように「値上がり」が報じられ、住宅の購入、建築などを計画している人は焦る気持ちが生まれるかもしれない。

だが、急いで決定や妥協などをすれば、何らかの失敗を伴う結果になりかねないのだ。価格もやがては妥当なラインに収まるだろう。

まわりの雰囲気に流されず、冷静な判断を心がけるようにしたいものである。

2016年 01月06日 11時07分