暮らす人の“想像力をかきたてる”住空間を提案

▲三井不動産レジデンシャル開発事業本部主任の長戸早紀子さん。「今回の『Imagie』開発にあたり、キッチンやレンジフードの各メーカーに協力をお願いしたのですが、プレスリリースと同時にメーカー側へも多くの問い合わせがあったようで、反響の大きさに驚いています」と長戸さん▲三井不動産レジデンシャル開発事業本部主任の長戸早紀子さん。「今回の『Imagie』開発にあたり、キッチンやレンジフードの各メーカーに協力をお願いしたのですが、プレスリリースと同時にメーカー側へも多くの問い合わせがあったようで、反響の大きさに驚いています」と長戸さん

「キッチンを自由に動かせるマンション」と聞いて、あなたはその住空間をイメージすることができるだろうか?

2015年9月、大手マンションデベロッパーの三井不動産レジデンシャルが、住む人のライフスタイルやライフステージの変化に応じて住戸内のレイアウトを変えられる間取りフリープラン『Imagie(イマジエ)※』の開発を発表した。
※Imagieは特許出願中。

『imagination(想像力)』と『ie(家)』を組み合わせた造語が表す通り、“そこで暮らす人の想像力をかきたてる自由な住まいづくりの提案”は不動産業界内外から注目を集めている。

従来のマンションでは『キッチンなどの水まわり設備は基本的に動かしにくいもの』という概念があったが、その概念を覆すまさに“目からウロコ”とも言うべき新発想のプランについて、開発担当者の長戸早紀子さんにお話をうかがった。

マンション購入年齢層の多様化により、顧客ニーズに変化が

この『Imagie』プロジェクトが立ち上がったのは2年ほど前のこと。“究極のフリープランを作ろう”という目的でプロジェクトチームが発足し、各メーカーの協力を仰ぎながら商品開発をおこなってきたという。

「きっかけは、お客様の声でした。従来の新築分譲マンションでは『部屋数』を重視されるお客様が多く、3LDKのプランが人気を集めていましたが、ここ数年はウォールドア等を採用した2LDK+αの『可変性が高いプラン』に人気が集まるようになってきました。

その変化の理由は、契約者層の多様化にあると思われます。

従来、マンション購入を検討する年齢層は30代~40代が中心だったのですが、近年は20代で結婚し子育てを考えながらマンションを購入される若い世代のお客様も増えてきました。従来のファミリー層だけでなく、世代幅は若者・シニアにわたり、住まいへのニーズが多様化するようになってきたのです。

お子様が中学生ぐらいにまで成長すると、それぞれの個室が必要になりますが、まだ未就学児の小さなお子様がいらっしゃるファミリーやシニア世代の場合は、『部屋数』よりもこれからのライフステージの変化に向けて『可変性』を重視されるケースが多くなります。

そのため、お客様のニーズの変化に合わせて“究極のフリープランを作ろう”というプロジェクトがスタートしたのです」(長戸さん談)。

▲現在、北区赤羽西六丁目に建設が進められている【パークホームズ赤羽西】は、初の『Imagie』採用物件。<br />全160戸のうち6戸で『Imagie』のフリープランが対応可能となっている。<br />
「お部屋の中の約80%のスペースを、お客様のお好みに合わせてレイアウト変更していただけます。<br />やはり、一番難しかったのは『キッチンを動かすこと』。<br />『本来コンロ上部に設置しなくてはいけないレンジフードをどうやって無くすのか?』<br />という課題をクリアするために、かなり苦心しました」と長戸さん▲現在、北区赤羽西六丁目に建設が進められている【パークホームズ赤羽西】は、初の『Imagie』採用物件。
全160戸のうち6戸で『Imagie』のフリープランが対応可能となっている。
「お部屋の中の約80%のスペースを、お客様のお好みに合わせてレイアウト変更していただけます。
やはり、一番難しかったのは『キッチンを動かすこと』。
『本来コンロ上部に設置しなくてはいけないレンジフードをどうやって無くすのか?』
という課題をクリアするために、かなり苦心しました」と長戸さん

今までの常識では考えられない“キッチンを動かす”という新発想

マンション購入やリフォームを一度でも検討した方ならおわかりだと思うが、住まいにおける“水まわりの移動”というのは容易なことではない。なぜなら、給排水などの配管の移動を伴うため、どうしても大掛かりな工事が必要になるからだ。ましてや“キッチンを動かす”となると、給排水だけでなくレンジフードの給排気ルートまで変更しなくてはならず、従来のマンション業界の常識では“自由に動くキッチンを作る”という発想すらなかったはずだ。

「実は、リビングやダイニングの空間はキッチン形状に合わせて設計されていることが多いため、究極のフリープランを作るためには、まず『動かせるキッチン』を作らなくてはならなかったのです。

キッチンを動かすために一番大変だったのは『レンジフード』の存在でした。一般的なキッチンは、コンロの上部に天井固定型のレンジフードが設置されていますが、動くキッチンを作るためには、レンジフードも一緒に動かさなくてはいけません。そこで、屋外への空気排出の必要がなく、本体の中で空気をろ過する『循環式レンジフード』をメーカーと共同開発しました。

東京都火災予防条例では“レンジフード下端を加熱器具表面より800mm以上離すこと”が定められているのですが、高さ800mmのレンジフードをキッチンに取り付けて移動するとなるとかなり圧迫感があり、視覚的にも問題がありました。そこで、高さを約400mmまで下げて小型化し、なおかつ、行政機関の適合評価が受けられるように何度も協議を重ねた点は、一番ハードルが高かった課題でした」(長戸さん談)。

▲【左写真】富士工業販売と共同開発した『循環式レンジフード』。<br />本体に内蔵されたフィルターが調理中の油煙やニオイをろ過するため、<br />屋外へいったん空気を排気する必要がなく、本体の中で空気循環が可能となっている。<br />いわば、キッチン版の“空気清浄機”のような仕組みだ。<br />【右上写真】気になる給配水管や電源については、室内に3箇所『キッチン接続ポート』が設けられているため、<br />このポートに合わせてキッチンを移動させれば従来のような大掛かりなリフォーム工事が不要となる。<br />ポートに接続する場合は、専門業者による接続工事(約10万円ほど)が必要だ。<br />【右下写真】レイアウトのバリエーションを増やすために、<br />キッチンユニットはシンクパーツとコンロパーツがセパレートになっていて、I型・L型と形状をアレンジできる。<br />移動する際にはキャスターで簡単に動かすことができるが、通常時はキャスターを浮かせて床面に固定する。<br />万一の地震に備え、キャスター固定時の耐震実験を実施したところ、震度7相当の耐震強度があると確認された▲【左写真】富士工業販売と共同開発した『循環式レンジフード』。
本体に内蔵されたフィルターが調理中の油煙やニオイをろ過するため、
屋外へいったん空気を排気する必要がなく、本体の中で空気循環が可能となっている。
いわば、キッチン版の“空気清浄機”のような仕組みだ。
【右上写真】気になる給配水管や電源については、室内に3箇所『キッチン接続ポート』が設けられているため、
このポートに合わせてキッチンを移動させれば従来のような大掛かりなリフォーム工事が不要となる。
ポートに接続する場合は、専門業者による接続工事(約10万円ほど)が必要だ。
【右下写真】レイアウトのバリエーションを増やすために、
キッチンユニットはシンクパーツとコンロパーツがセパレートになっていて、I型・L型と形状をアレンジできる。
移動する際にはキャスターで簡単に動かすことができるが、通常時はキャスターを浮かせて床面に固定する。
万一の地震に備え、キャスター固定時の耐震実験を実施したところ、震度7相当の耐震強度があると確認された

まるでパズルを組み立てるように、収納ユニットで間取りをアレンジ

▲こちらが収納ユニットの『Kanau Shelf』。筆者も実際に体験させてもらったのだが、軽量化を計算してデザインされているため、女性の力でも簡単に動かせることに驚いた。本体の色は現在のところホワイトのみで、13本までは組み合わせが自由。14本目以降の追加をしたい場合は1本あたり10万円~20万円ほどの追加料金が発生する▲こちらが収納ユニットの『Kanau Shelf』。筆者も実際に体験させてもらったのだが、軽量化を計算してデザインされているため、女性の力でも簡単に動かせることに驚いた。本体の色は現在のところホワイトのみで、13本までは組み合わせが自由。14本目以降の追加をしたい場合は1本あたり10万円~20万円ほどの追加料金が発生する

自由に動かすことができるのはキッチンだけではない。『Imagie』では可動式の収納ユニット『Kanau Shelf(カナウシェルフ)』を使って、部屋数や広さをアレンジすることができる。

間取りの中で固定されているのは、バスルームや洗面室などのサニタリーゾーンのみ。あとはフラットな大空間になっているため、収納ユニットを間仕切り壁のようにして空間構成をおこなうことが可能だ。

「収納ユニットは、シューズボックス・クローク、シェルフ、バックカウンター、コーナーユニットなど9タイプの形状を用意しておりますので、お客様のご希望に合わせて13本まで自由にお選びいただけます。

もちろん、コーディネーターからもいくつかの推奨パターンはご提案させていただきますが、まるでパズルを組み立てるように収納を配置して空間を仕切ることができるため、“想像力をかきたてる住まい”の醍醐味をお楽しみいただけるのではないでしょうか?」(長戸さん談)。

ちなみに、『Imagie』モデルルームを見学した来場者の反応としては、「ここまで自由度が高いと、自分で暮らし方の想像をするのが難しい」という戸惑いの意見が聞かれる一方で、「空間がフラットで下がり天井や梁がなく、白い収納ユニットがスッキリしているため、部屋がキレイに見える」と視覚的効果にも好評が集まっているようだ。

マンション業界の『間取り』という概念を今後無くしていけたら…

▲一般的なマンションの間取りでは、外からの視線等に配慮して共用廊下に面した居室窓に面格子が設置されることが多いが、『Imagie』では玄関前に施錠可能な扉付きのウェルカムポーチを配置することでプライバシー性を確保。玄関側にリビング・ダイニングを配置した場合も、開放感や明るさが感じられる設計になっている(写真はすべてパークホームズ赤羽西レジデンシャルサロン内『Imagie』モデルルームにて撮影)▲一般的なマンションの間取りでは、外からの視線等に配慮して共用廊下に面した居室窓に面格子が設置されることが多いが、『Imagie』では玄関前に施錠可能な扉付きのウェルカムポーチを配置することでプライバシー性を確保。玄関側にリビング・ダイニングを配置した場合も、開放感や明るさが感じられる設計になっている(写真はすべてパークホームズ赤羽西レジデンシャルサロン内『Imagie』モデルルームにて撮影)

従来、日本のマンション業界では、デベロッパー側が綿密に企画を立て設計をおこない、多くのエンドユーザーに幅広く受け入れられる住空間を提供し続けてきたが、今は“住む人の個性ある暮らし方”が尊重される時代になった。

「“部屋が狭いから新しい家具が買えない”とか、“モノが置けないから新しい趣味を諦める”とか、その人の暮らし方が住空間に制限されてしまうような住まいの提案を、今後業界全体で変えていかなくてはならないと思います。

『Imagie』が広くお客様に認知されることにより、マンション業界の『間取り』という概念が無くなって、住まいの在り方を変えるきっかけになれば嬉しいですね」と長戸さん。

“自分で間取り変更ができる究極の住空間”での自由生活を満喫するためには、わたしたちエンドユーザーも『暮らし方への意識』を今よりも高めることが不可欠となりそうだ。

■取材協力/三井不動産レジデンシャル
http://www.mfr.co.jp/
■撮影協力/パークホームズ赤羽西 物件ホームページ
http://www.31sumai.com/mfr/X1406/

2015年 11月25日 11時10分