豊島区役所移転を契機に、池袋ではさまざまな再開発計画が進行中

池袋駅東口駅前池袋駅東口駅前

池袋(東京都豊島区)は、新宿、渋谷と並ぶ、繁華街。山手線などJR各線のほか、西武池袋線、東武東上線、地下鉄3線が乗り入れる巨大ターミナル池袋駅を擁し、住みたい街調査でもランキング上位に挙がる人気の街である。そんな池袋駅周辺では、2015年5月の豊島区役所庁舎移転を契機に大規模な再開発計画が動き出している。区役所移転に加え、今年7月、内閣府より「都市再生緊急整備地域」及び「特定都市再生緊急整備地域」として池袋駅周辺地域が指定を受けたことで、池袋の再開発機運は高まっている。

「都市再生緊急整備地域」とは、都市再生特別措置法に基づき、都市再生の拠点として都市開発事業等を通じて緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域。この「都市再生緊急整備地域」のうち、特に都市の国際競争力の強化を図るうえで有効な地域として政令で指定する地域が「特定都市再生緊急整備地域」である。池袋駅周辺地域は約143ヘクタールすべてが「特定都市再生緊急整備地域」に指定された。東京都内では「東京都心・臨海地域」「新宿駅周辺地域」「渋谷駅周辺地域」「品川駅・田町駅周辺地域」についで5地域目という。この指定により、土地利用規制などの規制緩和や税制優遇などが期待され、池袋の再開発は一気に加速していきそうだ。

現在、池袋ではさまざまな再開発計画が進行しているのだが、そのなかで豊島区役所旧庁舎(以下、旧庁舎)跡地とその周辺の再開発事業に焦点を当て、2回に渡って記事をお届けする。

池袋駅東口の旧区庁舎エリアでは大規模な再開発が計画されている

前述の「特定都市再生緊急整備地域」指定を踏まえた、池袋の主な再開発計画を示しているのが下の図(「池袋駅周辺地域のまちづくり動向」)である。池袋駅西口地区まちづくり計画や、木造住宅密集地域(木密地域)である東池袋4・5丁目地区の木密不燃化プロジェクト、サンシャインシティ南東側隣地にある造幣局東京支局の移転(2016年)による跡地の整備計画など、複数のプロジェクトが計画されていることがわかる。なかでも一大プロジェクトとなっているのが、図にある<8つの劇場が生み出す圧倒的なにぎわい 「国際アート・カルチャー都市」のシンボルプロジェクト>だ。これが、旧庁舎跡地とその周辺の再開発事業である。

旧庁舎は1961年(昭和36年)築。地下1階・地上4階、総面積1万3,000m2で、竣工当時は都内の自治体総合庁舎としては千代田区、文京区に次いで3番目の規模とされていたという。バブル期以降、都内の区役所や市役所が次々に高層建築物へと生まれ変わっていくなかで、いつしか都内で最も古い区役所庁舎となってしまっていた。この建物は庁舎移転後の今も使用されており、2016年3月までは一部の業務が行なわれる。そのため、本庁機能が新庁舎に移ったとはいえ、今のところは旧庁舎エリアの景観には特に変化は見られないのだが、来年4月から解体工事が始まるというからそれ以降、急激に姿を変えていくことになる。

旧庁舎が建つのは東池袋1丁目。池袋駅東口から徒歩5分ほどの明治通り沿いにあり、家電量販店など大型店がひしめくエリアに隣接している。旧庁舎のすぐ近くにはアニメファンの聖地「アニメイト池袋本店」があり、東南へ約400mのところには池袋のランドマーク的存在であるサンシャインシティがある。そんなエリアにあって、旧庁舎跡地とその周辺の再開発事業でめざすのは魅力的な文化にぎわい拠点の創出という。

「特定都市再生緊急整備地域」の指定による対象区域は約143ヘクタール。対象区域内では複数のプロジェクトが進められている。(資料:豊島区が実施した「旧庁舎跡地・周辺まちづくりに関する説明会」にて配布の資料より抜粋)「特定都市再生緊急整備地域」の指定による対象区域は約143ヘクタール。対象区域内では複数のプロジェクトが進められている。(資料:豊島区が実施した「旧庁舎跡地・周辺まちづくりに関する説明会」にて配布の資料より抜粋)

区民の税金を投入せずに建てた新庁舎は、マンションとの複合ビル

池袋にどのような「文化にぎわい拠点」が創り出されるのかを語る前に、豊島区役所庁舎移転の経緯について振り返ってみる必要があるだろう。というのも、新庁舎建設と旧庁舎跡地の活用は密接なかかわり合いがあるからだ。

旧庁舎は前述のように1961年建築の都内で最も古い区役所庁舎なのだが、1980年代から新庁舎建設計画はあった。1994年には改築の実施設計に着手し、1997年度から着工予定だったが、財政難のため計画は一時中止となってしまう。現・豊島区長の高野之夫氏が区長に就任した1999年当時は、豊島区の借入金残高が872億円にまで膨れ上がり、財政再建団体への転落が危惧される状況で庁舎建設など考えられない状態だったという。

いったんは凍結となった新庁舎建設画だが、豊島区庁舎の老朽化は年々進み、防災拠点機能などに不安を抱える状態になったため、新たな新庁舎整備計画の検討が行われるにいたった。しかし、区の財政再建という最重要課題に取り組みながらの新庁舎整備計画なので、区民の税金を投入せずに庁舎を建てる方法を模索せざるを得なかった。そうして2008年に決まった整備方針は、豊島区がもつ資産を有効活用し、分譲マンションと一体化する形で新築・移転するという、全国でも初めての試みだった。建設地となったのは、池袋駅東口から東南約570m、駅から徒歩約10分の南池袋2丁目の一角。閉校した区立日出小学校と南池袋児童館の跡地と、民有地(住宅地)を合わせた約8,324m2の土地に、2012年に本体工事着工。2015年3月に竣工し、5月に庁舎移転となった。区の一般財源からの支出ゼロで建設した新庁舎は、竣工時に多くのマスコミに報じられたのでご存知の方も多いだろう。

新庁舎は高さ約189m、地下3階・地上49階建て。「としまエコミューゼタウン」と名付けられ、上層部は分譲マンション(総戸数432戸)、低層部(1階の一部と、3~9階)が豊島区役所となっている。新庁舎整備の総事業費は約430億円というが、どうやって区の一般財源を使わずに資金を調達したのか、その主な手法を紹介すると、まず、区がもともと所有している土地を活用したことが挙げられる。閉校した豊島区立日出小学校と南池袋児童館の跡地を新庁舎建設に活用した。また、この日出小学校跡地を含む市街地再開発事業(南池袋2丁目A地区市街地再開発事業)として取り組んだことで、国からの補助金を受けることができた。ちなみに南池袋2丁目界隈は木造住宅が密集し、再開発事業地区に指定されていた地区である。さらに全国的に注目を集めることにもなったのは、分譲マンションとの複合ビルとして新庁舎を建設したという試みである。分譲マンションには民有地の地権者が入居するほか、新たに販売された住戸もあるので分譲収入を得ることができた。そして、旧庁舎跡地の民間活用をはかるという方法である。旧庁舎跡地に定期借地権を設定して民間事業者に貸し付け、地代を新庁舎整備費用などに充てるという。

2015年5月に開庁した豊島区役所新庁舎。(左上)外観デザインは隈研吾氏が監修。樹木のイメージでデザインしたという。(左右)「としまエコミューゼタウン」のエントランス。(下左)周辺の住宅街より新庁舎の建物を望む。(下右)新庁舎のある一帯は街並み再生地区として、今後、整備が進められていく。新庁舎の右側にある超高層ビルはサンシャイン602015年5月に開庁した豊島区役所新庁舎。(左上)外観デザインは隈研吾氏が監修。樹木のイメージでデザインしたという。(左右)「としまエコミューゼタウン」のエントランス。(下左)周辺の住宅街より新庁舎の建物を望む。(下右)新庁舎のある一帯は街並み再生地区として、今後、整備が進められていく。新庁舎の右側にある超高層ビルはサンシャイン60

池袋駅東口の街づくりの課題とめざすものとは

上)大勢の人でにぎわうサンシャイン60通り。下)グリーン大通りでは社会実験を実施し、活性化をめざしている。「グリーン大通りオープンカフェ社会実験」という取り組みで、歩道に特例でオープンカフェなどを設置。2014年秋(3週間)、2015年春(2カ月)に続き、今年秋も開催(10月19日~11月8日)上)大勢の人でにぎわうサンシャイン60通り。下)グリーン大通りでは社会実験を実施し、活性化をめざしている。「グリーン大通りオープンカフェ社会実験」という取り組みで、歩道に特例でオープンカフェなどを設置。2014年秋(3週間)、2015年春(2カ月)に続き、今年秋も開催(10月19日~11月8日)

このような整備手法で庁舎移転を実現し、2016年からはいよいよ、旧庁舎跡地の民間活用という大規模プロジェクトが具体的に始動する。旧庁舎跡地には定期借地権を設定し、76年6ヵ月の地代として191億円で貸し付ける。後述するが、旧庁舎の南側にある豊島公会堂敷地との一体開発事業となるので、この地代は旧庁舎敷地と豊島公会堂敷地を合わせた額である。191億円は一括前払いで2016年3月に豊島区が受け取り、新庁舎整備の財源(約143億円)などに充てられるという。

旧庁舎跡地の民間活用は、こうした新庁舎建設の資金調達を担うと同時に、前述のように「魅力的な文化にぎわい拠点の創出」という大きな目的がある。

新たなにぎわい拠点が必要とされる背景には、池袋を訪れる人の流れに関わる課題がある。池袋には「駅袋」という通称がある。この記事冒頭で記述したように池袋駅は巨大ターミナルで、豊島区の調べでは1日に約260万人もの人が乗降するというが、その多くはJRと私鉄の乗り換えに利用するか、駅に直結する百貨店などを利用するだけで、駅の外には出てこないという。しかもそのうちの大半が、駅東口からサンシャインシティへと向かうサンシャイン60通りに集中している。豊島区の資料による概算では、サンシャイン60通りの歩行者流動量(7時~19時)は休日で約16万人。一方、池袋駅東口を出て東口五差路交差点から豊島区役所新庁舎へと向かうメインストリートであるグリーン大通りは休日でも約2万人の歩行者流動量でしかない。映画館や飲食店、アミューズメント施設などが建ち並ぶサンシャイン60通りに比べ、グリーン大通りはオフィスが多いという違いはあるにせよ、実際に歩いてみると、道行く人の数に圧倒的な違いを感じる。サンシャイン60通りの混雑がうそのように、グリーン大通りは人通りが少ない。

サンシャイン60通り集中から、人の流れを南北に広げ、回遊性を高めることで駅東口エリアの活性化につなげ、さらには「駅袋」からの脱却をはかる。これもまた、旧庁舎跡地とその周辺の再開発事業でめざすものなのだ。

旧庁舎の跡地開発のテーマは「誰もが輝く劇場都市」

上)池袋駅東口からグリーン大通りを望む。池袋駅東口駅前広場の整備も計画されている。下)旧庁舎の建物は築54年になる上)池袋駅東口からグリーン大通りを望む。池袋駅東口駅前広場の整備も計画されている。下)旧庁舎の建物は築54年になる

さて、旧庁舎跡地の民間活用に話を戻そう。旧庁舎の南側には築60年余りにもなる豊島公会堂がある。豊島区では、老朽化した公会堂の新ホールへの建て替えと、旧庁舎跡地とを一体的に整備する「豊島区旧庁舎跡地活用事業」として計画。その開発事業者(優先交渉権者)については民間事業者への公募型プロポーザルを実施し、東京建物・サンケイビル・鹿島建設のグループに決定した。東京建物などのグループが提案したテーマは「誰もが輝く劇場都市」。旧庁舎跡地には大規模オフィスを中心に、シネマコンプレックス、商業施設などからなるオフィス棟が誕生するという。2016年11月に建築工事に着工し、新ホールと合わせて、東京オリンピックが開催される2020年春のグランドオープンをめざしている。
また、豊島公会堂の南隣には築45年が経過した豊島区民センターがあり、こちらも「豊島区旧庁舎跡地活用事業」と連携して整備されるという。豊島区民センターの改築は豊島区の事業として行なわれるもので、2017年1月から解体工事に入る予定で、着工を経て2019年秋の完成をめざす。

次回記事「【変わりゆく池袋➁】昭和の面影が色濃く残る池袋の再開発。8つの劇場をもつ街へ」では旧庁舎エリアどう生まれ変わるのか、計画内容を紹介しつつ、変わりゆく池袋東口の街並みに残る昭和の面影にもふれてみたい。

☆主な参考資料(いずれも豊島区作成)
『新庁舎整備推進計画』
『現庁舎地の活用及び周辺整備について 街が変わる 街を変える』
『現庁舎周辺まちづくりビジョン』
『豊島区の街づくり2015』
『旧庁舎跡地・周辺まちづくりに関する説明会』

2015年 11月05日 11時07分