売買契約の仲介手数料は「3%+6万円」が上限

不動産会社の「媒介によって」契約が成立すれば、依頼者(売主、買主、貸主、借主)は一定の手数料を支払うことになる。法律的な表現をすれば「媒介報酬」であり「媒介手数料」と表現される場合もあるが、一般的には「仲介手数料」と言われることが多いだろう。住宅など不動産の仲介を取扱う不動産会社にとって主な収入源となる仲介手数料だが、その授受をめぐってさまざまな問題が生じることもある。仲介手数料の基本的なポイントを踏まえながら、現状や課題について考えてみたい。

まず、売買契約における仲介手数料については、売主または買主の一方から受け取ることのできる上限額が「売買価格(税抜き本体価格)×3%+6万円(別途消費税)」という速算法で計算できることはよく知られているだろう。たとえば、売買価格が3,960万円(本体価格3,800万円+消費税額160万円)の新築住宅を不動産会社の媒介で購入するときは、「(3,800万円×3%+6万円)×1.08=1,296,000円」が仲介手数料の上限額となる。

この上限額については「宅地建物取引業法で定められた額」として解説したものを見かけることも多いが、宅地建物取引業法では「国土交通大臣の定めるところによる」と規定しているに過ぎない。実際の内容は国土交通省告示によって定められており、消費税額分を含んだ割合の表示となっている。消費税率が8%時点における告示では以下のとおりだ。

⬜ 200万円以下の金額        100分の5.4
⬜ 200万円を超え400万円以下の金額 100分の4.32
⬜ 400万円を超える金額       100分の3.24

なお、媒介ではなく「売主または買主の代理」(実質的な代理行為の存在が前提)として売買契約を締結したとき、不動産会社は依頼者から「6%+12万円(別途消費税)」の代理報酬を依頼者から受け取ることができる。ただし、この場合でも売主と買主の負担額の合計が「3%+6万円(別途消費税)」の2倍を超えることはできない。

新築マンションなどでは販売代理会社が売主会社から代理報酬を受け取ることが多く、一般的に買主は仲介手数料を必要としないほか、不動産会社の媒介によらず、売主との間で直接に売買契約を締結する場合も仲介手数料は不要となる。

賃貸借契約の仲介手数料は「半月分」が上限!?

賃貸借契約の仲介手数料を借主が1ヶ月分支払う慣例は徐々に崩れつつある賃貸借契約の仲介手数料を借主が1ヶ月分支払う慣例は徐々に崩れつつある

賃貸借契約における仲介手数料の上限額についても同様に国土交通省告示で定められており、一方から受け取ることができるのは「借賃の1月分の0.54倍」となっている。つまり、家賃の半月分(別途消費税)なのだが、これについては違和感を覚える人も多いのではないだろうか。賃貸マンションやアパートを借りたときに、1ケ月分の家賃に相当する仲介手数料を支払った経験のある人も多いはずだ。

実は賃貸借契約における仲介手数料について、「当該依頼者の承諾があれば」1ケ月分の仲介手数料を受け取ることのできる規定があるのだ。そのため、十分な説明がされないままでこの承諾があったものとして取り扱い、借主から1ケ月分の仲介手数料を受け取ることが半ば慣例となっていたのである。物件を貸す側が優位だった時代には、「仲介手数料を半月分しか支払わない」と主張すれば契約を断られるケースもあっただろう。

しかし、現在は賃貸物件が余りぎみであり、条件の優れた部屋でなければ空室リスクも大きい。そのため、仲介手数料を貸主が負担することで借主は無料、あるいは半月分とするケースも次第に増えつつあるだろう。ただし、仲介手数料の負担が少ないことにこだわれば、不動産会社から紹介される物件が限定されることもあるので注意しておきたい。

仲介手数料はいつ支払うものなのか

媒介をした不動産会社の報酬請求権は、契約が有効に成立したことによって生じる。つまり、契約に伴う成功報酬であるが、細かく言えばその前提として、免許を受けた宅地建物取引業者であること、依頼者との間に媒介契約が成立していること、媒介行為の結果として契約が成立したことが求められる。

売買契約の場合で考えれば、一般的に売買契約の締結から引き渡し(残金決済)時までに数ケ月を要することも多いが、契約自体は最初の売買契約締結時点で成立している。そのため、法律的には売買契約と同時に仲介手数料の全額を請求することが可能だ。しかし、一連の取引が終わっていない段階で仲介手数料の全額を支払うことは、売主や買主にとっても不安だろうし、決済時までの不動産会社の業務遂行を担保する意味でも好ましくない。

そこで、国土交通省(旧建設省)は、「契約が成立した際に半額、媒介などの責任を完了したときに残額」を受け取るように指導しており、大半の不動産会社はこの指導に従っているだろう。もちろん、仲介手数料の全額を残金決済時に支払うほうが売主や買主にとって安心であり、そうしている不動産会社もあるはずだ。

なお、売買に際して地主の承諾を要する借地権付土地の場合などは「停止条件付売買契約」となり、売買契約締結時点では契約が有効に成立しない。この場合は要件がクリアされたときに「締結時点に遡って契約の成立が認められる」のであり、その段階ではじめて不動産会社の報酬請求権が生じる。

売買契約の仲介手数料は、契約時に半金、決済時に残金を支払うことが一般的売買契約の仲介手数料は、契約時に半金、決済時に残金を支払うことが一般的

売買契約が解除されたとき、仲介手数料はどうなるのか

住宅ローン特約(融資利用の特約)、買い替え特約などによって売買契約が白紙解除された場合には、その契約がなかったものとされる。したがって、不動産会社は報酬請求権を失い、先に支払った仲介手数料があればそれを返還してもらうことができる。ただし、その返還が遅延するなどの問題が生じるケースもあるので、売主や買主から見れば「仲介手数料は残金決済が無事に終わるまで支払いたくない」と考えるのも当然だろう。

その一方で、手付放棄や手付倍返しによる「手付解除」、債務不履行など当事者の違約による解除、瑕疵担保責任による解除、売主と買主の合意による白紙解除(特約以外の事由による解除)の場合は話が難しくなる。いったんは有効に成立した契約が解除されたとき、そこに至るまでの過程で媒介をした不動産会社にまったく落ち度がなければ報酬請求権を失わず、不動産会社にその原因となる調査不足や説明不足あるいは不適切な契約誘引行為などがあれば報酬を請求することができないとするのが一般的だ。

しかし、実際に契約解除などの問題が起きたとき、その原因や背景は多様であり、不動産会社の責任の有無も判然としないケースが多い。裁判の判例などを見てもそれぞれの事件が抱える事情によって判断が分かれるなど、一様に区別することのできない難しい問題だ。現実には面倒なトラブルに発展することを避けるため、報酬請求権があっても仲介手数料の受領を諦めたり、一方から少額の仲介手数料を受け取って終わりにしたりする不動産会社も少なくない。

仲介手数料の自由化も考えるべき時代に?

昭和45年に告示されて以降、改正されていない仲介手数料のルール。実際の取引にはそぐわない部分も多く、そろそろ仕組みを見直すべき時ではないだろうか昭和45年に告示されて以降、改正されていない仲介手数料のルール。実際の取引にはそぐわない部分も多く、そろそろ仕組みを見直すべき時ではないだろうか

仲介手数料をめぐっては、売主と買主の双方から受領する「両手取引」をするために物件情報を適切に開示しない、いわゆる「囲い込み」が問題となることがある。その一方で、地方都市の郊外や町村部では物件がなかなか売れず、100万円を下回るような売値、リゾート物件では10万円というような極端な安値も出てくる時代である。仮に50万円の物件の売買を仲介すれば、一方から受け取ることのできる仲介手数料は25,000円(別途消費税)が上限で、必要経費すらまかなえないこともあるだろう。

そもそも、売買契約における仲介手数料の割合は「昭和45年10月23日建設省告示第1552号」から変わっていないのだ。その後の国土交通省告示では消費税額が加えられただけである。1970年(昭和45年)当時といえば、勤労者世帯の平均年収がようやく100万円を少し超えたくらいの水準であり、東京都心のマンションでも700万円程度で分譲されていたようだ。もちろん、当時も大都市と地方で住宅価格は大きく違うだろうが、庶民向けの一般的な価格帯(200万円以下)の仲介手数料を5%、中流世帯向けの価格帯(200万円超400万円以下)の仲介手数料を4%、それ以上の価格帯(400万円以上)の仲介手数料を3%として区分したのではないかと推察される。

その名残として「3%+6万円」で表されるような仲介手数料の体系となっているのだが、現代の状況にマッチしていないことは明白だろう。「法律ではなく告示」であるから、改正も比較的容易だっただろうが、これまでまったく手をつけられずにきた。

しかし、新規参入した大手企業子会社の不動産会社が仲介手数料を合理的に割引くシステムを導入したり、売買でも仲介手数料半額あるいは無料を標榜する不動産会社が現れたりしている。無料や半額の場合には別の面で問題が生じるケースもあるが、ここでは触れないことにしよう。いずれにしても、ネットが発達した現代では、仮に仲介手数料を自由化しても事前に明確にさせることさえ徹底すれば、消費者が不利益を被るケースは少ないと考えられる。また、極端な低額物件に関しては、10%あるいは定額制といった仲介手数料の形態を認めても良いのではないだろうか。自由化か、それとも割合区分の再編かはともかくとして、そろそろ仲介手数料の仕組みを見直すべきときだと考えられる。

2015年 08月14日 11時00分