市町村税の中で最も大きな割合を占める固定資産税

土地や家屋を購入したり建築したり、あるいは贈与や相続によって所有者になれば、その翌年からは固定資産税が課税され、毎年これを支払っていかなければならない。毎年1月1日時点で、市町村の固定資産課税台帳などに所有者として登録されている人が納税義務者となる地方税(市町村税)だが、東京23区では東京都が徴収する都税だ。免税点(土地30万円、家屋20万円)を下回る場合を除き、国内のほぼすべての不動産(および一定の償却資産)が課税対象である。

総務省がまとめた2012年度の税収額(土地、家屋および償却資産)は8兆4,890億円にのぼる。これは個人の住民税を上回り、市町村税のなかで最も大きな割合を占めている。課税客体は土地が1億7,896万筆(所有者3,987万人)、家屋が5,851万棟(所有者4,009万人)だ。なお、固定資産税とは別に市街化区域内の土地および家屋には都市計画税も課税されるが、その税収規模は固定資産税の約7分の1にとどまる。

固定資産税は国民の多くが負担し、たいへん身近な税金であるにもかかわらず、その評価方法など分かりづらい面も多いだろう。「◯◯市で数十年にわたって課税ミスが続いていた」というような報道も、毎年のように繰り返されている。ミスの存在に市町村の職員も納税者も気づきにくいシステムなのだ。そんな固定資産税の仕組みを探ってみることにしよう。

土地の評価は3年ごとに見直される

固定資産の評価替えは1958年以降、3年ごとに実施することとなっており、2015年がその基準年度にあたる。2015年に決定された評価額が、2016年および2017年にも適用されるのだ。基準年度の前年に総務大臣から指定市(都道府県庁所在地)における基準宅地の価格が提示され、これをもとに都道府県知事が市町村ごとの基準地価格(最高価格地など)を定める。それを受けて市町村長が市街地などの「固定資産税路線価」(単価)を定め、それぞれの土地の形状や道路条件などによる補正をしたうえで、個々の土地の固定資産税評価額が決まるという流れだ。

なお、評価の方法や手続きは総務省の「固定資産評価基準」で細かく規定されているが、市町村長の判断で簡易な方法により土地価格を修正できる特例措置も講じられている。

ちなみに、土地の固定資産税評価額は公示地価などに対して70%程度の水準とされているが、かつては25%程度であった。1994年度の評価替えに伴い大幅に見直されたが、当時の地価がバブル崩壊により急激に下落する中で「1993年1月1日時点の価格に対する70%程度」としたため、固定資産税評価額が実勢価格を上回る地点が続出して大きな社会問題となった。

家屋の評価方法は複雑。部位ごと、設備ごとに価格が付けられる

新築された家屋や増改築された家屋については、市町村におかれた特別職である「固定資産評価員」と、一般職員が兼務することの多い「固定資産評価補助員」が実地調査を行い、その結果に基づいて市町村長が3月31日までに価格を決定する。市町村では登記記録などによる家屋のリストアップのほか、1月1日に撮影した航空写真を用いて新築家屋の洗い出しをしている例もあるようだ。仮に建築確認を受けずに違法建築された家屋でも、調査から漏れることは稀だろう。

家屋の評価は総務省が定めた「固定資産評価基準」に則って行われるが、たとえば木造家屋の場合なら屋根、基礎、外壁、柱・壁体、内壁、天井、造作、床、建具、建築設備、仮設工事(工事中に要したもの)、その他工事の項目に分け、それぞれに標準評点数がつけられている。さらに建築の形式や種別、材料、寸法、施工量などによって細かく分けられた評点に対して、「施工量が多い、普通、少ない」「施工程度が良い、普通、悪い」などといった補正や、地域区分による補正、工事の難易度による補正などをして合計評点を求める。この評点は東京23区の物価水準による工事原価1円が1点に相当し、所在地域の物価水準による補正率も用いられる。それ以外にもいくつかの補正をしたうえで、最終的に価格が決定される仕組みだ。

そして、新築された翌年(課税初年度)に初めて固定資産課税台帳へその価格が登録されるわけだが、この時点ですでに新築時から日数を経ている。そのため、経年による減価分として2割が控除されることになり、結果的に建築費用の5割程度に落ち着くことが多いだろう。ただし、家屋の構造や材料などによってかなりの違いが生じることは理解しておきたい。

単位面積あたりの評点は、たとえば屋根の場合なら瓦(上)が16,110なのに対して、化粧スレートは9,170、鋼板波板は4,540、銅板は23,060など、種類によって5倍以上の違いがある。外壁もサイディングが7,030に対して、外装タイルなら11,730だ。真壁造の柱も15.0cm角(上)と13.5cm角(並)とでは10倍もの差が付く。床間も、本床は特、上、中、並の4ランクに分けられており、特と並では約13倍の開きがある。内装は安いほうから木質系壁仕上げ(並)、クロス貼、合成樹脂板、塗り壁、タイル、石材系仕上(並)などといった順だが、いずれも「木製パネル・枠組壁」なら1割〜5割ほど低い評点になる。

床は、畳なら上(7,850)と並(6,760)の2区分でそれほど大きな違いはないが、木質系床仕上(フローリング)なら特(12,610)から並(3,220)までかなりの幅がある。もちろん石材系仕上ならぐっと高くなる。これらに面積を掛けて、部位ごとに一つひとつ評点を付けていく。

給湯器、浴槽、ユニットバス、流し台、システムキッチン、洗面化粧台、トイレなどの住宅設備にもそれぞれ1個(1台)あたりの評点が定められており、いちばん高いのはホームエレベーターの1,697,000、次いで浴槽(上)の469,830といった具合だ。細かい設備にも評点があり、電灯・スイッチ・コンセント配線は1個あたり6,420、照明器具は4,160などとなっている。これらが多ければそれなりの額になるだろう。家の中に固定されたものなら、そのほとんどが固定資産税の対象になると考えてよい。どの内装や設備などを選ぶのかによって、それから数十年間の税額が変わることになるのだ。

家の大きさだけでなく、その造りや設備によって毎年の固定資産税が変わってくる家の大きさだけでなく、その造りや設備によって毎年の固定資産税が変わってくる

固定資産税の税率と軽減措置など

固定資産税の標準税率は1.4%だ。2004年度の税制改正によって制限税率(2.1%)は廃止されたが、およそ9割の市町村が1.4%の標準税率を採用し、残りの市町村は1.4%超1.8%以下の税率となっている。標準税率を下回る税率を採用する市町村は皆無だ。固定資産税の税額は、土地および家屋の評価額に税率を掛けて求められるが、実際にはさまざまな特例や調整措置を講じた後の「課税標準額」が用いられるため、たいへん分かりづらい面も多い。

まず土地に関しては、地価の急激な上昇や下落によって税額が急変しないように調整措置が講じられる。その内容は複雑なので割愛するが、たとえば評価額が急に高くなれば、それから数年かけて段階的に課税標準額の水準を上げていくイメージであり、課税標準額は前年適用価格の1.15倍を上回らないように定められる。ところが、その調整措置が終わらないうちに次の基準年度で地価が下落するなどして、必ずしも地価の動きと連動しないのだ。

そして、住宅1戸につき200m2までの「小規模住宅用地」については、課税標準を6分の1に軽減する特例がある。近年、空き家問題と関連して盛んに取り上げられているのはこの特例だ。軽減対象の200m2を超えても、住宅の床面積の10倍までに相当する面積の敷地部分については税額が3分の1になる。また、店舗や事務所などとの併用住宅の場合には、原則として居住用部分の割合に応じて特例が適用されるが、居住用部分が全体の2分の1以上であれば敷地の全体を住宅用地とみなして特例を適用し、4分の1未満であれば全体が特例を受けられないという規定もある。この適用の可否をめぐり、どうしてもグレーゾーンが生まれざるを得ない。

また、床面積が50m2以上などの一定の要件を満たす新築住宅であれば、新たに課税される年度から3年度分(マンションなど3階建て以上の耐火・準耐火建築物は5年度分)の固定資産税のうち、120m2までの居住用部分に相当する税額が2分の1に軽減される。店舗や事務所などとの併用住宅の場合は、居住用部分の割合が2分の1以上であることなどが要件だ。さらに、認定長期優良住宅、一定の要件に該当する耐震改修工事やバリアフリー改修工事、省エネ改修工事などをした住宅に対する軽減措置や減免措置などもある。

これらの特例措置や土地の調整措置が正しく適用されているかどうか、ほとんどの人にとって判断は難しいだろう。増改築や用途変更に伴って特例適用の可否が変わっても気づきにくい。そもそも家屋調査に基づく評価額の決定が間違っていないか、市町村の担当者が後から検証することも困難だ。一定期間に限って所有者本人などに認められる閲覧制度を除き、周囲の類似物件と自由に比較してみることもできないため、仮に課税ミスがあったとしてもほとんど気づかれずに放置される。ある意味で固定資産税は「ブラックボックス」だといえるだろう。

「税金なのに税金ではない?」売買における固定資産税の清算金

固定資産税は1月1日時点の所有者が1年分の納税義務者となるため、たとえ1月2日に土地や家屋を売却したり、家屋を取り壊したりしても全額を支払わなければならない。そのため、不動産の取引においては引き渡し日を境として売主と買主との間で日割りによる清算をすることが広く行われている。地域などによって日割りの起算日を1月1日にするか4月1日にするかといった違いはあるが、清算行為そのものはほぼ全国共通のものだろう。

しかし、法律には何ら規定がなく、あくまでも不動産取引の慣習、慣例にすぎない。当事者からみれば「1年間の税金を所有日数に応じて売主と買主が公平に負担するもの」だが、国税庁の見解(通達)によれば「買主の負担分は税金ではなく、あくまでも売買代金の一部である」とされている。そのため、不動産会社など消費税の課税事業者が売主となる取引では、固定資産税(および都市計画税)の清算金のうち建物分については消費税が課税されることになっているのだ。

新築建物については清算金が発生しないことも多いが、とくに不動産会社が売主となる中古住宅などを購入する際には注意が必要である。「何でそうなるの?」という疑問は、売主会社ではなく国税庁にぶつけていただきたい。

2015年 02月26日 11時07分