住宅地では全体の5%に満たない借地権の敷地

土地の権利には所有権と借地権とがある。所有権は自ら土地を所有するもの、借地権は地主から土地を借りるもの、といったイメージだろうが、所有権に比べて借地権は分かりづらい面も少なくない。その総数が少なく一般の認知度が低いことも一因だと考えられるが、旧法借地権、普通借地権、定期借地権といった種別のほか、借地権の中にある地上権と賃借権の違い、さらに保証金、権利金、更新料、名義書換料、建替承諾料、毎月の地代といった費用の存在も借地権を分かりにくくしている。

借地権の評価割合は都心部の商業地などにおける最大90%から、地方都市の住宅地などにおける最小30%までの間で定められ、国税庁が毎年発表する路線価図に示されている。一般的な都市の住宅地では所有権価格の60%または70%程度のことが多いだろう。これは相続税を計算する際の土地の評価に用いられるほか、売買価格の査定でもこの借地権割合を参考にすることが多い。ちなみに、この借地権割合を差し引いた残りが土地所有者の権利分(底地権)の評価となる。

敷地の権利が所有権でも借地権でも建物の原価は変わらないため、土地代を含めた住宅の総額を比べたときには、所有権の住宅の60%(中古)〜80%(新築)程度が借地権の住宅価格となる。しかし、その割安感にかかわらず借地権はあまり普及せず、土地を所有することにこだわる人も依然として多いようだ。

総務省が発表した「平成25年住宅・土地統計調査」(速報集計)によれば、持ち家世帯(専用住宅)30,777,500戸のうち、敷地が所有権のものは29,677,700戸(96.43%)を占め、一般の借地権は963,500戸(3.13%)、定期借地権など(定期借地権および建物譲渡特約付借地権)は136,300戸(0.44%)にすぎない。

国内の住宅敷地のほとんどは所有権で、借地権の物件はわずか国内の住宅敷地のほとんどは所有権で、借地権の物件はわずか

1992年以前から存続する借地権には旧法が適用される

借地権の土地が増えない原因の一つとして、借地人の権利が強すぎる点が挙げられていた。いったん他人に貸した土地(借地権を設定した土地)は余程のことがないかぎり返還されることはなく、地価が上昇して固定資産税や相続税が跳ね上がっても、地代の値上げは簡単にできない。更新拒絶をめぐって裁判などで争われるケースも絶えなかった。そのような状況の中で、新たに借地権を設定しようとする土地所有者(地主)は少なかったのだ。

そこで大正時代から続いていた借地法が1992年に改正され、新たに「借地借家法」として生まれ変わった。新法では借地権の存続期間や建物朽廃時の取り扱いなどについて整理がされたほか、旧法であいまいだった地主からの更新拒絶の要件を新法である程度まで明確にしている。それと同時に、初めから「契約更新をしないこと」を前提とした定期借地権の制度も導入された。

しかし、新法が施行された1992年8月1日以前から存続している借地権に対しては、廃止された旧「借地法」が引き続き適用されることとなっており、現在でも中古住宅として流通する借地権物件の多くは旧法適用のものである。ところが、インターネットが普及する前の時代に廃止された法律であるため、これを適切に解説した情報は少なく、借地権をより一層分かりにくくする要因となっている。

土地流動化の切り札とされた定期借地権だが……

1992年の借地借家法で導入された定期借地権は「土地流動化の切り札」とされていた。しかし、制度が検討されていたのはバブルによる地価暴騰期だったものの、施行されたときはすでにバブルが崩壊し、所有権の価格そのものが急落していたのだ。そのためスタート時から出鼻をくじかれた格好になった面も否めないだろう。

国土交通省による「平成21年度定期借地権付住宅の供給実態調査報告書」では、民間事業者および公的主体(地方公共団体、地方住宅供給公社、土地開発公社、都市再生機構など)を対象としたアンケート調査の結果をまとめているが、2009年まで17年間の累計でも「一戸建持家」は36,297戸、「分譲マンション」は20,711戸にすぎない。そのうち83.1%を3大都市圏が占め、首都圏が40.9%となっている。総務省の「住宅・土地統計調査」による定期借地権の推計戸数よりも少ないのは、アンケート回収率の問題が考えられる。

また、供給戸数の推移をみると「一戸建持家」は2000年がピークで4,455戸にのぼったものの、2009年は422戸まで落ち込んでいる。同様に「分譲マンション」は2001年がピークで2,281戸だったのに対し、2009年は620戸だ。さらに中古住宅としての二次流通戸数は、1993年から2009年までの累計で1,628戸(一戸建持家630戸、分譲マンション998戸)にとどまっている。なお、供給量が落ち込んだ2009年を最後に、国土交通省は民間事業者を対象とした調査を実施していない(公的主体のみ継続)。

定期借地権制度の導入から20年以上が経過したものの、50年あまりの契約期間満了を迎えた一般定期借地権の事例は存在しないため、契約終了時にいったいどんな問題が起きるのか、土地所有者(地主)と借地人の双方に不安感が残ることも考えなければならない。

ちなみに定期借地権を設定する際には保証金方式、権利金方式およびその併用がある。保証金とは借地人の債務を担保するため土地所有者に委託するもので、契約終了後に返還される性質の金銭だ。それに対して権利金とは定期借地権設定の対価として支払われ、借地人に返還されないものを指す。国土交通省の調査(前掲)によれば、一戸建持家は保証金方式が大半(93.1%)なのに対して、分譲マンションでは権利金方式が34.3%にのぼり、併用の21.4%を合わせると分譲マンション全体の55.7%が権利金方式を採用しているようだ。「マンションのほうが契約満了時に戻るお金は少ない」といえるだろう。

地上権と賃借権で大きな違いがある

建物所有を目的とする借地権には、地上権と賃借権がある。このことも借地権を分かりづらいものにしている一因だろう。地上権はその権利を登記することができ、借地上の建物を第三者に売却したり貸したりすることも自由だ。それに対して賃借権の場合は、売却や転貸にあたりあらかじめ土地所有者(地主)の承諾を得なければならない。そして、その承諾にあたって名義書換料(承諾料)などの支払いを要することも多いのだ。その算定方法は任意に定められるが、地価の上昇期などには名義書換料の支払いをめぐって争いになることもある。

一般的にマンションは地上権のことが多いものの、賃借権の場合も少なくない。それに対して一戸建て住宅は賃借権のことが大半だ。賃借権は土地所有者が協力しないかぎり登記はできず、住宅ローンを借りたときも土地に対して担保権を設定することができない。

借地権付きの住宅を買うときにローンは使いづらい?

賃借権のときに土地を担保にできないことは、金融機関による融資を困難にする要因となっている。登記された地上権のときは抵当権、登記された賃借権のときは質権を設定するが、そもそも賃借権が登記されていることは稀である。

金融機関も以前に比べれば借地権に対して柔軟な姿勢を見せるようになってきているようだが、融資対象の要件が限定されたり、融資限度額がかなり低く抑えられたり、あるいは複数の連帯保証人を求められたりすることもあるようだ。担保が弱いぶん、建物について火災保険への加入が必須となることも多い。また、敷地の所有者が親や親族などの場合には、その承諾を得たり、敷地所有者自身が連帯保証人となったりすることで融資が受けられるケースもあるだろう。

住宅金融支援機構によるフラット35では、借地権の場合でも一定の要件を満たせば融資を受けることができ、建物の購入費用や建築資金のほか、保証金や権利金なども融資の対象となる。ただし、定期借地権または建物譲渡特約付借地権の場合は、通常の借入期間と借地権の残存期間のどちらか短い年数が上限になることに留意しておきたい。

新規の分譲物件であれば、住宅ローンが借りられるように権利関係が整えられていることも多いため、あまり心配する必要はない。住宅ローンを借りることが難しくなりがちなのは、一般の住宅地にポツンとあるような借地権の中古住宅だ。また、土地所有者が地方公共団体や独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)などの場合は融資を受けやすいのに対し、一般の法人が土地所有者の場合は借入れが難しい傾向もあるようだ。「地主の倒産リスク」も考慮されるのだろう。

2015年 01月24日 11時22分