都市部の戸建て住まいの傾向

都市部の戸建てというと、どういう住まいをイメージするだろうか?狭小地と呼ばれる限られた敷地の中で建ぺい率の限界まで使い建てる、というイメージが多いのではと思う。

実際どうなのだろうか?都市部の定義は様々だが、都市部の代表的な東京について見てみる。
東京の総住宅数は2013年時点で6,465,500戸。その内、戸建てが1,796,800戸で、戸建ては全体の27.8%という比率だ。それに対して全国の住宅総数は52,103,800戸で、戸建てが28,600,700戸。総住宅数に占める戸建ての割合が54.9%。そこから比較しても、都市部での戸建ての住まいは難しくなってきているのが分かる。(総務省「平成25年住宅・土地統計調査」より)

また、マンション、戸建て含めて持ち家の東京の住宅の延べ面積は平均92.4m2ということだ。(※総務省「社会生活統計指標-都道府県の指標-2014」の2008年持ち家住宅の延べ面積より)

延べ面積92.4m2というと戸建ての場合であれば、だいたい20~30坪ぐらいの土地に建てて2~3階建ていうケースが現在トレンドではないのだろうか。そこに太陽光発電だったり、耐震システムだったり、様々な住宅の技術が付随するというのが現在の戸建て住宅だと思う。

狭小住宅や都市部の土地については今まで色々とお伝えしてきたが、今回は“都市部戸建て”に焦点をあててトレンド一例を見ていきたい。

狭い敷地を最大限有効活用する家

様々なハウスメーカーや建築家の戸建てがある中、今回は旭化成ホームズの静岡県富士市にある住宅総合技術研究所に伺ってきた。当日は秋晴れ。展示されている都市部展開を想定した住宅から、都市部の住まいに求められている要素を見ていく。

ここ1年間の同社の流れとしては、旭化成ホームズ 技術本部 商品開発部長の加藤明氏曰く「構造躯体の強化と、創空間力の強化をしてきた」ということだ。第一ステージとしてこの2つの強化を行った住宅づくりが行われてきたが、現在は第二ステージ。付加価値モデルをつくっていくという。その第一弾として、今回発表されたのが「HEBEL HAUS SOFIT(ヘーベルハウスソフィット)」だ。

「都市にちょうどいい屋根の家」をコンセプトに作られた今回の住宅。実際はどのようなものか?

「屋根がある安心感」のヘーベルハウスソフィット。参考価格として総面積約44坪のプロトタイプの本体価格が税抜3,290万円。トップライトや梁の上の間接照明などはオプションになる「屋根がある安心感」のヘーベルハウスソフィット。参考価格として総面積約44坪のプロトタイプの本体価格が税抜3,290万円。トップライトや梁の上の間接照明などはオプションになる

敷地を最大限利用、屋根裏部分がポイント

左上:束柱はなく梁のみのため開放感のあるロフティルーフ<br>左下:防犯の配慮をした1Fの部屋の窓
<br>右:1Fの寝室左上:束柱はなく梁のみのため開放感のあるロフティルーフ
左下:防犯の配慮をした1Fの部屋の窓
右:1Fの寝室

都市部の戸建てと言えば、隣家との距離は気になるところだ。民法では、「敷地境界線から50センチメートル以上離して建てなければならない」と定義されているが、実は定義されているのは外壁との距離。今までの日本住宅のように「軒」が出ている住宅の場合には、あくまで定義されているのは壁なので、軒が隣家と50センチ以内に入っていても法的には問題はない。しかし、だからといって心情的にはどうだろうか。場合によっては近所と険悪になるケースもあるようだ。
※お互いの合意がある場合には、50センチ以内でも可。複数戸の分譲住宅の場合には、建て主が同じなので合意や承諾自体意味がなく狭い間隔の場合もある。また、防火地域又は準防火地域で、外壁が耐火構造のものは建築基準法によって外壁を敷地境界線に接して設けることができるなど、例外は多々ある。

そうした近所への配慮もした住まいが、今回の「都市にちょうどいい屋根の家」。屋根には寄棟屋根を採用した。近接した建物配置に考慮するため、「軒」が出ない形状だ。しかし、「軒」がないと雨や日差しなどで住宅が傷むのでは?と思うが、部分的に軒を追加できる薄型の追庇「専用システムキャノピー」があるため、気になる例えば2階のバルコニー部分などの上に追加してつけることができる。全体的なすっきり感そのままに軒追加できるというシステムのようだ。

実際に見学もさせて頂いたが、2階リビングから臨める寄棟屋根がとても開放感があった。軒がないすっきりとした屋根フォルムも特徴的だが、内部も寄棟屋根の空間を最大限生かしたつくりになっている。

2階リビングから上の寄棟屋根の空間を「ロフティルーフ」と呼び、全体を大きな吹抜けにしている。寄棟の中心にはオプションで電動式のトップライトがつけることができ、実際に見学した物件にはついていたが、昼間トップライトを開けることで、風が上に抜けていく気持ち良さを感じた。また、2階リビングの天井には梁はあるが束柱はなく、梁の上に間接照明も設置できる。昼間はトップライトから光をもらい、夜は梁の上の間接照明でムーディーにするなど、自由な空間づくりができるのが特徴だ。
一昔と異なり、人間関係構築が難しくなっていく中、敷地を最大限に活用しつつ、隣近所にも配慮した家づくりが、都市部の住まいには求められているのだなと感じた。

不思議な空間テラクラフト

左:テラクフトの室内
右:テラクラフトの外観左:テラクフトの室内 右:テラクラフトの外観

より空間を活用した住まいが、10月に発表された「HEBEL HAUS terra craft(ヘーベルハウス テラ クラフト)」。クロスシフトプランニングという、床の高さを工夫して視線を広げる設計手法を用いて、狭い都市部の土地で3階建てで最大限空間が生かせるようなつくりになっている。

実際内部はどうなのか?間取りの図面だけ見ると、よくある3階建て住宅とあまり相違ない印象を受けたが…。
1階部分の柱を通常より約30センチ短くした階高ダウン、床の設置レベルを部分的に約40センチ低くしたダウンフロアユニットなど、室内は“動き”のある空間が広がっていた。限られた敷地だがこのクロスシフトプラニングにより、空間を最大限生かしているため、閉塞感はない。1階にいても他の階にいる人とのつながりを感じられるつくりともいえる。個人的には、まるで子供の頃の秘密基地が住宅になったような印象を受けた。シニアには不向きの住宅だと思うが、デザイナー住宅のような趣があり、住まいを楽しめる仕組みになっていた。実際、同社によるとカフェやアパレル空間などオシャレな空間に住みたい層向けの住宅だということだ。

建物自体をいえば、建物の構造はラーメン構造を採用している。さらに建物の前面部のゲートウォールには、制震装置サイレスを内包して地震にも強いつくりだ。また、ゲートウォールがあることで、外観はいいアクセントにもなっている。

実際に見ることで家を知ろう

都市部の限られた空間の中で、戸建ての住まいを建てる際、どうしても似たものになってしまうと考えがちだ。しかし、各ハウスメーカー、建築家など、現代のライフスタイルの変容や予算などを考え、様々な空間プランニングを行っている。間取りだけ見ても分からないことは多々あり、住まいの実際の質感や気持ちよさ、楽しさなど、体感することから、少しずつ自分に合った住宅選びができるのだと思う。

一度に様々なハウスメーカーが出展する住宅展示場に行ったり、ハウスメーカーの住宅展示場に行き深いところまで学んだり、建築家の建てた家のオープンハウスの日に参加したり…。単なる情報だけでなく実際に足を向けて体感することをすすめたい。

2014年 12月04日 11時14分