プレタポルテ方式を採用し、屋上建設コストを大幅に削減

屋上ライフの伝道師、岡﨑富夢氏屋上ライフの伝道師、岡﨑富夢氏

一般の木造住宅のための屋上庭園を提供する、株式会社innovation(イノベーション)の『プラスワンリビング』。屋根の代わりに屋上を作ることで、気軽にオープンエアの暮らしが楽しめるようになった。
屋上をリビングスペースにするという新たな発想は、日本人のライフスタイルを大きく変える可能性を秘めている。だが、その開発に当たっては数々のブレイクスルーが必要だった、と岡﨑社長は語る。

その1つが、技術面でのブレイクスルーだ。コンクリートを使わない木造住宅に屋上を載せるためには資材を軽量化しなければならない。また、木造の家は揺れやたわみに弱いため、雨漏りを防ぐためには特殊な防水工法が必要となる。
そこで、屋上緑化資材のトップメーカーである東邦レオ(innovationの親会社)の実績をフルに活かし、こうした問題を次々に解決。揺れやたわみに強い「金属防水」を採用することで、木造住宅でも安全・快適な屋上空間を作ることができるようになった。

だが、技術的な工夫だけでは、屋根と同じ価格で屋上を売ることはできない。コストダウンを極限まで進めるためには、ビジネス面でも大きな発想の転換が必要だった。
「コストを削減できた理由の1つは、レディメイドによる“パッケージ化”を実現したことです。従来の建設業界はオーダーメイドが基本でしたが、僕らはすべての建材をパターン化。アイテム数と取引先を絞り込み、大量に仕入れて大量に売るプレタポルテ方式を採用することで、コスト削減を図りました。2つ目は、部品の統合化によるコスト削減です。ビルの屋上庭園で培った実績を活かし、ビル用と木造住宅用の部品を統合化。これで、部品にかかるコストを大きく減らすことができたのです」

屋上の資材を工務店に直販することにより、価格を抑制

屋上庭園付き木造住宅『プラスリビングハウス』屋上庭園付き木造住宅『プラスリビングハウス』

「3つ目は、施工の革命です。工場の生産工程管理の仕組みを導入することで、施工の合理化を極限まで進めました。その結果、50m2の屋上庭園を施工するのに普通は10~15人工かかるところを、2人工まで短縮することができたのです」

さらに、販売システムを見直し、直販体制をとったことも大きかった。木造住宅の場合、資材メーカーと工務店の間に建材商社が3、4社入るため、その中間マージンが販売価格を押し上げる一因となっていた。そこで、屋上の資材を工務店に直販することにより、100万円という破格の販売価格が実現したという。

こうして、2010年11月に『プラスワンリビング』を発売し、2012年5月には屋上庭園付き木造住宅『プラスリビングハウス』の販売もスタート。自ら戸建て住宅の販売に乗り出した理由について、岡﨑氏はこう語る。

「たしかに『プラスワンリビング』で屋上のコストダウンはできるのですが、注文住宅の建設費用を安く抑えようとすると、どうしてもチープで没個性的な家になってしまう。自分が欲しいと思える家を作ろうとすると、結局は3500万円ぐらいかかってしまうわけです。世帯年収500万円の人でも手が届く価格で、ハイグレードなかっこいい家を作れないものか――。1600万円で買える『プラスリビングハウス』を開発した背景には、そんな思いがありました」

屋上暮らしを楽しむためのアプリも、続々開発中

プラスワンリビングの屋上の夜の風景プラスワンリビングの屋上の夜の風景

とはいうものの、「住宅事業に手を染めたのは、住宅を売りたいからではない」、と岡﨑氏。その究極の目的は、「屋上での生活を新たな文化にして定着させること」にあるという。
現在、『プラスワンリビング』の購買層は30代が中心。屋上をダイニングやカフェとして使う人もいれば、蚊帳やハンモックを吊って寝室代わりにしている人、星空を眺めながらビールを飲むのを無上の楽しみとする人もいる。家庭菜園や子供の遊び場、キャンプなど使い方はさまざまだ。

「僕は、『プラスワンリビング』はiPhoneだと考えています。iPhoneは、ゲームやスケジュール帳、フェイスブックなどのアプリを使いこなすことで楽しみが広がっていく。僕らも“家を売って終わり”ではなく、住宅購入後に屋上での暮らしを楽しんでもらうためのサポートをしていきたい。その一環として、季刊誌での情報提供や、屋上用アイテムの格安ネット通販、フェイスブックによるお客さんとのコミュニティ作りなどを行っています」

現在、同社では、屋上を楽しむためのアイデアを盛り込んだアプリの開発を進めている。
「来年にはアプリブックを作り、ソフトの充実も測っていきたいですね」

主要購買層は30代。共通点は、「社交的」で「交流が好き」

バーベキューセミナーの様子バーベキューセミナーの様子

今後注力したいアプリとして、岡﨑氏は、「食」と「スポーツ」の2つを挙げる。
スポーツの分野では、目下、屋上トレーニングのためのアプリを開発中。野球・ゴルフ・サッカーを中心に、屋上練習用の器具や防球ネットの開発を進めているところだ。

「来年は、屋上にバーベキュー用のガスコンロを採り入れたプランも新たに投入する計画です。その準備のため、僕もバーベキュー検定の資格をとりました。コンロがあれば、屋上でバーベキューや料理を楽しみながらパーティーもできますよね。今後はセミナーの場を通じて、屋上で楽しめる料理のレシピと使い方を提案していきたいと考えています」

岡﨑氏がバーベキューにこだわる理由は、それが「仲間が集まる口実になる」からだ。実際の販売事例を見ても、社交的で人との交流が好きな人ほど、『プラスワンリビング』を購入する傾向があるという。広い空の下、さわやかな風が吹き抜ける開放的な空間に身を置けば、リラックスして会話もはずむ。岡﨑氏が言う通り、屋上とは、まさに人と人とをつなぐコミュニケーションの場なのかもしれない。

屋上で暮らす楽しみを世の中に広めたい

屋上に子供用の遊具を設置した場合屋上に子供用の遊具を設置した場合

「僕らがやりたいのは、屋上という“今までにない空間”を創り出し、共感できる仲間と協力しながら、屋上で暮らす楽しみを世の中に広めていくことです。屋上は趣味を追求する場であり、癒しの場、家族や仲間との思い出を作る場でもある。屋上をコミュニケーションの場として活用し、幸せな人生を送っていただきたい。僕らの仕事が20年後に評価してもらえたらうれしいな、と思っています」

陽光があふれる庭先や縁側で、家族や友人と会話を交わす豊かな時間。それは、かつての日本人にとっては馴染み深いものだった。そして今、『プラスワンリビング』が、住宅の屋上を新たなふれあいの場に変えつつある。
日本人のライフスタイルを大きく変える可能性を秘めた、屋上という空間。それが、暮らしを豊かにする魅惑的な選択肢の1つであることは間違いなさそうだ。

2014年 09月18日 11時51分