「フローからストックへ」住宅施策の方針転換が急ピッチ

中古住宅の流通促進や、リフォーム・リノベーションによる住宅の長期活用が求められている中古住宅の流通促進や、リフォーム・リノベーションによる住宅の長期活用が求められている

戦後の住宅不足状態が数のうえで解消されたのはいまから50年近く前、1968年のことである。ところが、その後も新築住宅の供給を重視した施策が延々と推し進められてきた。その間、世帯数の増加を上回るペースで住宅が増え続け、空き家が大きな社会問題となっている。2014年7月29日に総務省から公表された「住宅・土地統計調査」(2013年10月1日現在)の速報集計によれば、空き家率は13.5%に達した。

住宅施策のうえで「ストック重視」の方向性が打ち出されたのは2001年だが、その後もなかなか現実の制度として具現化していない。しかし、ここ数年でさまざまな方針、ガイドライン、政策などが矢継ぎ早にまとめられ、住宅ストック活用型社会へ移行が明確になってきている。まさに現在は「転換の真っ只中」といえるだろう。

それぞれの事項について詳細にみていくのは別の機会に譲り、ここでは住宅施策の変化が加速してきた2012年から現在、そして来年(2015年)まで、住宅市場に関する主な動きをまとめておくことにしたい。

2012年は中古住宅市場にとって重要な転機の年に

2011年2月から検討会が開かれ、2012年3月にとりまとめられたのが「中古住宅・リフォームトータルプラン」だ。これは、新成長戦略(2010年6月閣議決定)で示された「中古住宅・リフォーム市場の倍増」の目標達成を視野に入れたものであり、リフォームによって住宅ストックの品質や性能を高め、従来の新築中心の住宅市場から、中古住宅流通により循環利用される「ストック型住宅市場」への転換を目的としている。

また、2011年10月から有識者を集めて議論を重ねた「不動産流通市場活性化フォーラム」が提言をとりまとめたのも2012年6月だ。ここでは、不動産情報の整備や蓄積、宅地建物取引業者の力量の向上による流通システムの改革など、幅広いテーマが取り上げられた。

さらに2012年7月の「日本再生戦略」では、不動産流通市場の活性化や不動産流通システムの抜本改革に重点が置かれるとともに、「2020年には中古住宅・リフォーム市場の規模倍増を実現する」といったスケジュール面での目標も提示されている。

2012年7月からは「不動産流通市場における情報整備のあり方研究会」が開かれ、9月に中間とりまとめが行われた。2012年のうちに実行へ移された施策はそれほど多くないものの、現在の方向性を示す重要な転機となった年だといえるだろう。

そんな中で2012年も終わりに近付いた12月26日、第2次安倍内閣が発足し、政治、経済の両面でさまざまな動きがみられるようになっていく。公共事業の拡大がその後の不動産市場へ与えた影響も大きい。

2013年は景気回復への期待の高まりと増税前の動きが表れた年

2013年3月から「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」が開催されたほか、6月には「既存住宅インスペクション・ガイドライン」が策定されている。また、2013年9月には「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」が設置された。ここでは、不動産流通、リフォーム・リノベーション、金融、鑑定など、さまざまな実務関係者が集められ、より幅広い観点で議論が行われている。

その一方で、「木材利用ポイント」制度が2013年4月にスタートしたほか、「住宅のゼロ・エネルギー化推進事業」なども始まった。2012年12月4日に施行された「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づく「認定低炭素住宅」制度が実質的に始まったのも2013年だ。また、2012年にスタートした「地域型住宅ブランド化事業」も引き続き実施されている。これらは新築住宅に限定されているわけではないが、大半は新築住宅が対象になるだろう。

住宅政策の主眼が中古住宅へ移行しているものの、依然として新築住宅にも重きが置かれているのが現状だ。2014年4月に迫った消費税率の引き上げを前に、2013年9月末までの特例適用期間が定められ、住宅市場は活況を呈するようになった。そして2013年9月7日(日本時間)には、2020年五輪の東京開催が決定した。2013年の前半から問題となっていた建設業関連の人手不足は、より深刻さを増し、東日本大震災からの復興事業を含めてさまざまな方面に影響をもたらすことになる。

2014年は中古住宅関連の施策が、より具体的になった年

2014年4月に消費税率が5%から8%へ引き上げられ、新築住宅購入者の負担が増すことになったが、その軽減策として住宅ローン減税における最大控除額が引き上げられるとともに「すまい給付金」制度が始まった。しかし、増税前の駆け込み需要による反動減、地価の上昇や建築資材の高騰、さらには人手不足などさまざまな要因が絡み合い、2014年前半は住宅市場がやや低迷している。供給サイドの「様子見」や「販売抑制」といった側面もあるだろう。

中古住宅関連では2014年3月に相次いでいくつかの動きがあった。「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」による「平成25年度報告書」が公表されたほか、空き家問題解消や住宅ストックの活用を目的とした「個人住宅の賃貸流通の促進ガイドライン」も示されている。ここでは借主負担によるDIY指針も提起されるなど、従来のやり方を変えようとする試みも見られる。

また、「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」が公表されたのも2014年3月だ。中古住宅における建物価格を適正に評価して流通を促進しようとするもので、2014年中に「戸建て住宅価格査定マニュアル」の改訂が予定されているほか、「不動産鑑定評価基準」の改正も見込まれている。

さらに、国土交通省の支援事業により2012年度から2013年度にかけて実施された「不動産流通市場活性化事業者間連携協議会」の総括としてシンポジウムが開催され、共同で「事業者間連携による不動産流通市場活性化宣言」が採択されたのも2014年3月である。これは宅地建物取引業者、リフォーム業者、インスペクション業者、住宅瑕疵担保責任保険法人、金融機関などが連携し、新たなビジネスモデルの検討や普及を図ろうとする試みである。

国土交通省による「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は2014年2月に始まっている。これは「中古住宅・リフォーム市場の規模を倍増させる」といった計画に基づいて実行された取り組みであり、劣化対策や耐震性、省エネルギー性など住宅の性能を一定の基準以上に向上させるリフォーム工事費用に対して、国が補助金を交付する制度となっている。

2015年は増税の年になる?

2015年1月1日に相続税が改正される。また、現時点で確定はしていないものの10月1日には消費税率が再度引き上げられ、10%になる予定だ。旧税率が適用される特例期間(3月31日まで)を前に、駆け込み需要によって再び新築住宅市場が活況を呈する場面もあるだろう。しかし、住宅市場全体で考えたとき、より影響が大きいのは相続税の課税強化である。

基礎控除額の大幅な引き下げにより、とくに大都市圏では相続税の対象となる世帯がかなり増えると見込まれるため、賃貸住宅の建築などによる相続対策が盛んになっている。国土交通省の住宅着工統計によれば、持家と分譲住宅の着工は2014年6月末時点でいずれも(前年同月比)5か月連続の減少となっているのに対して、貸家は16か月連続の増加だ。これが減少する局面も何回かあるだろうが、基本的に貸家着工の増加傾向は2015年も続くだろう。

国土交通省が2014年4月に発表した「不動産に係る情報ストックシステム基本構想」に基づく新システムの試行運用や検証が、2015年中に一部地域で開始される予定である。これは不動産取引に必要な物件情報を幅広く収集し、一元的に宅地建物取引業者へ(一部は直接、消費者へ)提供しようとするものだ。そのプロトタイプの構築は2014年に始められている。

また、宅地建物取引主任者の名称を「宅地建物取引士」とする宅地建物取引業法の改正案が2014年6月に可決、成立している。その施行は2015年4月1日となるようだ。取引主任者制度の中身が変わるわけではないが、「士業」の仲間入りをすることで当事者にはこれまで以上に大きな自覚が求められるだろう。「変わったのは名称だけ」と言われないように、不動産業界全体が今後の変化に対して真摯に取り組んでいかなければならない。

2014年 08月10日 10時46分