火災保険料と地震保険料が相次いで見直されている

火災などで何もかもを失う事態は避けたいものだ火災などで何もかもを失う事態は避けたいものだ

住宅を購入すれば、たいていは火災保険に加入するだろう。住宅ローンを借りた金融機関から火災保険への加入を強制されるケースは以前に比べれば少なくなっているようだが、融資の条件として火災保険へ加入のうえで「質権」(家財を除く)が設定されることもある。

質権契約は簡単にいえば、いざというときの保険金の受取人を金融機関とするものだ。ちなみに、質権設定がない場合でも、火災などで建物がなくなっても残った住宅ローンを支払わなければならないことに変わりはない。

また、1966年に創設された地震保険だが、1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災を経て、その契約件数にも増加傾向がみられる。損害保険料算出機構の調べによれば、2012年度の新規火災保険契約者のうち、地震保険に加入した者の割合(付帯率)は全国平均で56.5%と、これまでで最も高い数値を示した。とくに、宮城県は83.5%、高知県は81.7%、宮崎県は71.0%などとなっている。

火災だけでなく、豪雨による土砂崩れや床上浸水など建物被害が毎年のように繰り返され、竜巻による被害も増えている。さらに地震リスクも高い状態が続いており、保険による備えが欠かせない状況だろう。しかし、その保険料が相次いで見直され、消費者の負担が増えようとしている状況をしっかりと認識することが大切だ。

火災保険料の値上げは2015年中に予定されている

損害保険会社各社でつくる損害保険料算出機構は、保険料の算出基準となる料率(参考純率)を2014年7月2日に改定した。火災保険料は1998年に自由化されているが、これまでは引き上げと引き下げが入り交じった小幅な改定にとどまり、「本格的な値上げ」は今回が初めてとなる。

全国平均では3.5%の引き上げだが、その幅は都道府県および建物構造によって異なり、30%近い引き上げとなるところもあるようだ。罹災頻度などに応じて、参考純率には最大で約2.6倍程度の差があるとされる。ただし、その詳細は「守秘義務の対象である」として開示されていない。

火災保険料の引き上げは2015年中に実施される予定だが、損害保険料算出機構が定めた料率に強制力はなく、一律に保険料が改定されるわけではないため、実際の値上げ幅は損害保険会社ごとに異なる。ネットの活用などによって経費を削減し、値上げ幅を抑える損害保険会社もあるとみられ、かなりバラツキが出ることも予想されるだろう。

火災保険料が値上げされる原因は「火災が増えている」というわけではない。一般的に「火災保険」と呼ばれているが、多くの場合は家財の損害もセットにした「住宅総合保険」であり、幅広い損害に備えたものだ。今回の見直しの背景として、冬期の凍結や老朽化による水漏れ、台風など自然災害による保険料の支払いが膨らんでいること、さらに雹(ひょう)災や雪災による保険金の支払いも増えていることが挙げられている。

損害保険料算出機構は参考純率の引き上げ幅を一部のみ例示しているが、たとえば鉄筋コンクリート造のマンションでは、東京都と大阪府が12.0%、愛知県が20.4%、福岡県で24.1%の引き上げとなっている。これは大都市圏で老朽化したマンションが多くなり、水漏れ被害などが増えていることも要因だろう。その一方で、木造住宅では東京都で4.5%、大阪府で16.0%の引き下げとなっている(いずれも保険金額が建物2,000万円、家財1,000万円の場合の例)。

なお、ここでは火災保険の仕組みについての説明は差し控えるが、たとえば隣家からの延焼で自宅が燃えたとき、自分が火災保険に加入していなければ補償されないことを知っておきたい。「自分は火事を出さないよう、常に十分な気配りをしているから大丈夫」は通用しないのだ。

地震保険料はすでに値上げ済み、今後さらなる引き上げも予定されている

地震保険料は、2014年7月1日に全国平均で15.5%の引き上げが実施された。その背景には地震リスクの高まりがあり、東京都、神奈川県、千葉県などは約20%の値上げ、宮城県、埼玉県、大阪府などは約30%の値上げとなっている。ただし、免震構造の建物についてはおおむね引き下げられた。

なお、今回の値上げには南海トラフ地震の被害想定が盛り込まれていないようだ。これを考慮したうえで、2015年以降にもう一段の値上げがされる見通しである。

火災保険だけに加入しているとき、地震による火災や損害、津波による被害、火山の噴火による損害などには保険金が支払われないため、それをカバーするのが地震保険だ。しかし、大規模な災害となりやすい地震では、保険会社が保険金を支払えなくなる事態も想定されるため、地震保険は「国と民間が共同で運営」している。したがって、保険会社による違いはなく、どの保険会社で契約しても補償内容や保険料は同一であることが地震保険の大きな特徴だ。

1回の地震で支払われる保険金総額の上限は2014年4月に上積みされ、現在は7兆円となっている。関東大震災級の被害でも支払いに問題が生じないと試算されるレベルだ。ただし、被災者の生活再建費用を速やかに提供することが目的の保険であり、自宅の建て替えや修繕費用をまかなうためのものではないことを覚えておきたい。

地震保険の契約金額は、火災保険金額の30%〜50%の範囲内で設定され、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限となる。実際に支払われる保険金は損害の程度によって異なり、全損で  保険金額の全額(100%)、半損で保険金額の50%相当額、一部損で保険金額の5%相当額である。そのため、損害の程度の判定をめぐって問題が起きることも多いようだ。

ちなみに、地震リスクの程度により各都道府県が「1等地」から「3等地」に分けられている(一部は2014年7月1日に等地区分が変更されている)が、最もリスクが大きいとされる3等地は、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、三重県、大阪府、和歌山県、徳島県、愛媛県、高知県である。

損害保険料算出機構による公表資料をもとに作成損害保険料算出機構による公表資料をもとに作成

保険料のさらなる負担増も見込まれている

火災保険料や地震保険料には消費税が課税されていない。しかし、保険料の一定割合を営業経費などに充てる損害保険会社では、当然ながら支出分に対して消費税がかかり、増税によって経営が圧迫されている側面もあるだろう。

そのため、保険料を消費税の課税対象にしようとする議論も一部にあるようだ。実際にどうなるのかは現時点で分からないが、仮に保険料が課税対象となれば、8%もしくは10%の負担増もあるのだ。軽減税率が導入されたとしても、ある程度の負担増は避けられない。消費税は非課税のままとする代わりに、経費増加分が保険料の値上げに反映されることも考えられる。

保険料の負担増を緩和するためには契約内容をしっかりと吟味することが必要

いずれにしても火災保険料、地震保険料の引き上げ傾向はこれからしばらく続くことだろう。その負担増を少しでも軽減するためには、金融機関や不動産会社から勧められるままに契約をするのではなく、その内容をしっかりと吟味することが必要だ。いったん契約をした後でも、定期的に見直すことが欠かせない。

地震保険は各社一律だが、火災保険は損害保険会社によってかなり違う。独自の商品プランも多いほか、補償範囲も契約プランによって異なるのだ。過剰な保険金額になっていないか、必要のないものまで補償対象になっていないかなど、よく確認してみるべきである。さらに、免責金額の設定を変えることで保険料を安くできることもあるだろう。

また、火災保険は最長36年、地震保険は最長5年だが、いずれも長期になればなるほど割引率は大きくなるほか、その保険料を一括払いにすればさらに安くなる。値上げ前に契約をしていれば、次回の更新時まではその値上げが適用されないことも覚えておきたい。ただし、長期契約で保険料を一括払いするためにはまとまったお金が必要となるため、実際にどうするのが自分にとって良いのかはよく考えなければならない。

なお、住宅ローンを借りた金融機関を通して保険の契約をする場合には「団体扱」などの適用を受けて保険料が割安になるケースもある。損害保険会社を自由に選べるときでも、金融機関が勧める相手を初めから除外することなく、よく話を聞いてみることが大切だ。

2014年 08月01日 11時00分