ここ10年で人が増えたのは東京駅40キロ圏

会場で販売されていた調査報告書。これ以外にも同財団の書籍には都市関連のものが多く、いずれも興味深い会場で販売されていた調査報告書。これ以外にも同財団の書籍には都市関連のものが多く、いずれも興味深い

平成26年2月6日。お茶の水で一般財団法人森記念財団による、第2回都市ビジョン講演会が行われた。森記念財団は都市づくり・まちづくりに関する調査研究及び普及啓発などを中心に活動する公益的な団体で、今回は平日の人の移動実態から東京の街の姿を読み解く「東京サーベイブック3 東京を訪れる人達」を中心に基調講演、座談会が行われた。そのうち、街選びに参考になりそうな部分をご紹介しよう。

今回、東京圏として対象になっているのは東京駅から40km圏。外周に位置する自治体としては横浜市金沢区、東京都八王子市、埼玉県川越市、埼玉県杉戸町、茨城県取手市、千葉県佐倉市、同木更津市といえば、大体の範囲が分かるだろうか。このエリア内(40km以上になるが、鎌倉市、逗子市でも人口は増えており、エリア内に含まれると考えてよい)では2000年から2010年の間に夜間人口、つまり住んでいる人の数が226万人、8.6%増えており、従業者の数も2001年から2009年に150万人、10.8%増えている。日本全体では減少局面を迎えているが、このエリアに限っては増えているというわけだ。

もちろん、全域でまんべんなく増えているわけではなく、都心ほど増加の割合が高く、周辺に向かうほど低くなる。特に30%以上の増加を示している自治体は20km圏に集中しており、今後も人口が減りにくいのはこのエリア内だろうと思われる。

多くの人が行きたいと思う場所はどこなのか?

様々なデータの中で目をひいた単語のひとつに私事求心力がある。この調査報告では東京都市圏交通計画協議会が10年ごとに行っている東京都市圏パーソントリップ調査が国勢調査とその他のデータと組み合わせて使われている。パーソントリップ調査は東京都市圏*に居住している人のうち、無作為に選ばれた世帯の5歳以上の構成員を対象に、どのような人が、いつ、何の目的で、どこから、どこへ、どのような交通手段でで移動したかを調査、平日の一日のすべての移動を捉えたもの。

私事とは移動の目的のうち、通勤、通学、仕事先への訪問などのように必要に迫られての移動ではなく、その人が行きたいから行った買い物や食事、観光、習い事などでの移動を指す。そして、そこに行きたいと思う人が多い場所が私事求心力の高い場所である。

当然だが、そうした人気のある場所が集中するのは都心部。私事求心力全体で見ると都心3区に加え、新宿、文京、台東、豊島、渋谷の8区に全体の51%が集中している。それ以外では横浜市西区、同中区、同港南区、川崎市幸区、同川崎区、さいたま市大宮区、立川市、船橋市、千葉市中央区などにも私事求心力の大きなゾーンがあるという。

*この場合の東京都市圏は1都4県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県南部)

私事求心力の大きなゾーンは東京の中心部以外の、横浜市、川崎市や立川市、千葉市などの中心部にも存在する私事求心力の大きなゾーンは東京の中心部以外の、横浜市、川崎市や立川市、千葉市などの中心部にも存在する

地元で用事が済んでしまうのは下町と東急田園都市線沿線

生活の大半のニーズが地元で賄えてしまう東急田園都市線沿線。特に多摩川以遠でその傾向が強い生活の大半のニーズが地元で賄えてしまう東急田園都市線沿線。特に多摩川以遠でその傾向が強い

と、ここまでは大方の人の想定内なのだが、移動距離を加えて詳細に見ていくとへへえ!ということが分かってくる。同書では人の動きを近隣から(そのうち、ごく近くからを内々とする)、遠方からと3種類に分けて分析している。そのうち、内々での移動で私事が充足しているゾーンを見ると、都区部では北区、足立区、葛飾区、江戸川区に集中しているほか、東急田園都市線沿線にも多い。

察するに、これらのエリアではわざわざ遠方まで出かけなくても、地元で日常的な買い物、食事などの用が済んでしまうということが考えられる。場所によっては都心まで出かけるのが不便ということもあろうが、それよりも、大体の用事が地元で済んでしまう街と考えるほうが自然ではないかと思う。高齢者や子どものいるファミリーであれば、便利な街ということもできるだろう。

では、ご近所からやってくる人が多いのはどんな街だろうか。ひとつは新宿、渋谷、池袋などの繁華街のあるエリアで、近くにオフィスのある人たちがアフターファイブに飲みに来るニーズが高いと思われる。そして、もうひとつは山手線、東北本線、鶴見線、南武線、京葉線などのJR線沿いに多いという。電車で少し足を伸ばしてという行動だろう。

次に遠くからわざわざやってくる人が多いエリアである。これについては都心に集中するのは想像できるが、それ以外にも吉祥寺を擁する武蔵野市、町田、立川、川崎や横浜の中心部などが人を集めており、反対に千葉県、埼玉県には遠くからわざわざ人が来る場所はほとんど見られない。

地元から、近所から、遠くから人を集める8つのエリア

女性に人気の高い大倉山。しゃれた雰囲気の商店街が街のイメージアップに貢献している女性に人気の高い大倉山。しゃれた雰囲気の商店街が街のイメージアップに貢献している

では、これら3種類の異なる人の動きをまとめてみたらどうなるだろう。都心以外で、地元はもちろんだが、ご近所、遠方からも人が集まる街、である。同報告書では東京10km圏外の8つのゾーンを上げている*。ここには意外な街が入っている。

まず、23区内で唯一入っているのは葛飾区の亀有~立石である。亀有は漫画のおかげで全国的なネームバリューがあると思われるが、立石はモツ焼き好き、居酒屋好きでなければそうそうは知られてはいないはず。だが、活気のある商店街、飲食店街が広く人を集めているようで、武蔵野市全域、町田市町田駅周辺~玉川学園駅周辺、八王子市八王子駅周辺、所沢市新所沢駅周辺、川越市川越駅周辺、習志野市津田沼駅周辺などといった、近郊の中心地的なエリアと並び、人を集めている。

もうひとつ、ここが来たかと思ったのは横浜市港北区日吉駅~大倉山駅周辺である。日吉は東急東横線、同目黒線、横浜市営地下鉄が乗り入れ、デパートもある学生街。大倉山は瀟洒な雰囲気の商店街のある女性に人気のある街で、いずれも人が多い場所ではあるが、それほどに幅広いエリアからの人を集めているとは考えていなかった。もう少し、詳細を見たいところである。

最後にこのイベントで語られた中でひとつ、ショックだったことを。東京都市圏パーソントリップ調査からは65歳から74歳の人たちがこれまで以上に出歩くようになっていることと、対して若・青年層(5歳から39歳)の外出が減っているということが分かるという。39歳までの人口自体が減っていることもあるが、シニアよりも外出しない若・青年層とは。お若い皆さん、もう少し出歩こう。

*内々移動、隣接地から、遠方からの私事到着率がすべて上位2割以内に入っているゾーンでかつ私事到着率が1万トリップ以上/日のゾーン

2014年 03月09日 12時15分