永く住み続けられる家の新しいカタチ

「成長から成熟の時代へ、家づくりも日本は戦略を変えるべき」とは、今回アテンドいただいた相羽建設 常務取締役の迎川利夫氏 「成長から成熟の時代へ、家づくりも日本は戦略を変えるべき」とは、今回アテンドいただいた相羽建設 常務取締役の迎川利夫氏 

戦後、1代限りの消耗品になっていた住環境の反省から、今、「永く住み続けられる」家づくりに挑戦する作り手が増えてきている。相羽建設が提唱する「木造ドミノ住宅」もそのひとつ。

しかもこのドミノ住宅は価格を抑え、さらに住まい手が家を建てた後も間取りやデザインを簡単に変えられる新しい住まいのカタチを提案している。

グッドデザイン賞、エコビルド賞グランプリなど数多くの賞を受賞した「木造ドミノ住宅」。いったいどのような魅力があるのか? 開発元の 相羽建設株式会社 常務取締役 迎川利夫氏にアテンドいただきながら2つのモデルハウスを巡ってきた。

暮らしを育てる“箱”の家

手前には、子供が遊べるフリースペース。奥にはベッドルーム。さらにその奥にもまだ空間が。「自由がうれしい人」には、どんどんアイデアがわく楽しい空間手前には、子供が遊べるフリースペース。奥にはベッドルーム。さらにその奥にもまだ空間が。「自由がうれしい人」には、どんどんアイデアがわく楽しい空間

東京都東村山市にあるモデルハウス。中に入ってみると1階はキッチン、ダイニング、リビングが一体となったワンルーム。外光が注ぎとても明るい空間だ。ここまでならよくあるモデルハウスの光景と変わらないが、2階に行ってみるとその違いが分かる。普通は個室が並ぶものだが、ここでは2階にも間仕切りは存在せずワンフロアの空間が広がっている。

これが「木造ドミノ住宅」の最大の特長。スケルトン(建物の本体)とインフィル(内装や設備)を分離することで、家を建てた後も間取りや間仕切りを自由に変化させられるという。

一般的な住宅の場合、間仕切り壁の中に構造上外せない柱などが入っているため、建設当初から間仕切り壁が存在し、将来的に撤去することが難しいという。しかし、ドミノ住宅では、家の中に取り外すことのできない構造壁を置かず、大黒柱1~2本と耐力のある外周壁と強度を上げた床面でワンルーム空間を実現する。

また、住宅では構造躯体よりも電気や給排水の設備の方が先に劣化してしまうもの。ドミノ住宅では床下空間もがらんどうなため設備更新がしやすい。さらに部屋の外周には電気配線が巡らされた長押を取り付けているため、配線の追加や更新も容易に行えるという。

「子供の成長などに合わせて間取りを変えたくなっても、通常の家では壁を外したら床がないため張り替えが必要になります。柱をはずすとなると梁が持たないから天井を壊さなければならない。そうこうしているうちに“建て替えた方が早い”と30年で住宅を壊しているのが現状です。いわば、『間取り』と『設備』の変更が家を壊す理由。ならば設備を取り換えやすくし、間取りという概念もなくせば家を壊さなくてすむと考えたのです」(迎川氏)。

モデルルームではこうしたシンプルな構造を見せるためにワンルームの空間になっているが、軽量鉄骨(LGS)の間仕切り壁を設ければもちろんプライベート空間を簡単に作ることもできる。いざ「壁を取り払いたい」となった時も、ドミノ住宅では一般的な住宅よりも比較的簡単に実現する。

モデルルームのように家具で空間を仕切れば、それこそ住まい手の思いのままに空間をデザインすることもできる。

むしろ優れた耐震性や省エネ性能

天井にはOMソーラーが鎮座する。このおかげで住宅のランニングコストは格段に下がる天井にはOMソーラーが鎮座する。このおかげで住宅のランニングコストは格段に下がる

家の中には、大黒柱が1、2本存在するだけ、そのほかは自由に変えられるとなると、気になるのは耐震性だ。だが、ドミノ住宅では、基礎コンクリートの上に直接立てた大黒柱が上からの荷重を大地に逃がすしくみのほか、構造力学で重要な水平剛性にも考慮し高い耐震性を実現しているという。

その実力は、「耐震等級2(※1)」以上を確保していることでも分かる。これは、「建築基準法」の1.25倍の強さを誇るもので、数百年に一度発生する地震の1.25倍の力でも倒壊・崩壊しないものとされている。

また、省エネ性能が高い点も魅力的だ。断熱性能が高い上に太陽エネルギーを利用する「OMソーラーシステム」を標準装備している。屋根から太陽エネルギーを取り込み、床暖房や給湯、換気などに利用するこのシステムのおかげで、モデルハウスでは暖房をつけなくても寒さを強く感じることがなかった。夏場はオプションになるが熱を屋外に逃がし、家の北側の涼しい外気を取り込む「採涼換気システム」でエアコンの使用を抑えられるという。

「ドミノ住宅と一般的な住宅、どちらも府中の延床面積32坪の住宅で光熱費(電気・ガス・水道・灯油)を1年間比較したことがあります。その結果は、一般住宅に比べドミノ住宅は88%(※2)も光熱費を削減していました」(迎川氏)。

現在この府中のドミノ住宅では、東京都の「長寿命環境配慮住宅モデル事業」の一環として環境・省エネ性能を「首都大学東京 須永研究室」と共同で調べており、2年後に詳細な分析データが出されるという。

環境に優しく、ランニングコストを抑えられる点でもドミノ住宅はこれからの住まいとしてよく考えられていると思う。

(※1)品確法(住宅品質確保促進法)の住宅性能表示制度に基づく
(※2)2013年 相羽建設自社調べ

質は高めて手間を省き、リーズナブルな価格を実現

こちらのバスルームで使われていたのがサワラの木。サワラはその弱さから構造には使えないが香ではヒノキより上だという。単なるコストダウンではなく、こうした適材適所で「質」の追求をしている点も木造ドミノ住宅の魅力だこちらのバスルームで使われていたのがサワラの木。サワラはその弱さから構造には使えないが香ではヒノキより上だという。単なるコストダウンではなく、こうした適材適所で「質」の追求をしている点も木造ドミノ住宅の魅力だ

しかも、このドミノ住宅がリーズナブルな価格で提供されているのも驚きだ。「OMソーラーシステム」を入れても、坪単価50万円 (分譲地で複数棟まとめて建てる場合)を実現しているのだ。

「初めは原価だけで軽く50万円を超えていました。そこで職人さんみんなからアイデアを募って思考錯誤を繰り返しました。いきついたのが、設計作業や手間を徹底的に省くことだったのです」(迎川氏)。

ドミノ住宅は、構造を非常にシンプルにしている。四角いボックスを2段重ねたような空間をパターン化している。3間×4間の12坪の2階建て24坪ハウスを最少に、4間×5間の2階建て延べ床面積40坪が最大のパターン。ただし、このボックスを組み合わせれば様々な広さの住宅に対応できる。パターンがきっちりしているため設計作業の手間が省け、職人作業の効率化も図れるという。

「つくる方がシンプルに徹底的にシステマティックにすれば、逆に住む方は自由になる」逆説的だが、迎川さんはドミノの魅力をそう表現する。

「単なるコストダウンを私たちはやりたかったわけではないです。そこに理念がないのなら手掛ける意味はありません。私たちは時間が経っていやらしくなるようなことは避けています。いわば“時間のデザイン”をしています。ドミノで壁紙に塩化ビニールを使わずに和紙を使っているのもそのためです」(迎川氏)。

ドミノ住宅では、「木」についてもこだわりがある。集成材を使うのではなく無垢材を使う。さらに「地産地消」を目指しているという。構造材については、東京の木にこだわって使う。その土地の気候風土で育った木は、輸送コストが抑えられるだけでなく、建てた後も長年風雪に耐えられるからだ。簡単に「質」をあきらめてコストダウンをするのではなく、随所に工夫を重ねて、豊かな暮らしを育む質の高い“箱”を提供してくれているのがドミノ住宅なのだろう。

将来は将来、“今したい暮らし”を実現する

タイルがアクセントのリフォーム後の「木造ドミノ住宅」。このテイストが気に入り、はじめからこの雰囲気で住宅を建てる方もいるとかタイルがアクセントのリフォーム後の「木造ドミノ住宅」。このテイストが気に入り、はじめからこの雰囲気で住宅を建てる方もいるとか

最後に見せていただいたもう一つのモデルルームは、築5年の「木造ドミノ住宅」をデザイナーと組んでリフォームをした家だ。木の温かみを大事にしているドミノの魅力とはまた違うレトロモダンの雰囲気に仕上がっている。

キッチンを調理台下のキャビネットを残してモザイクタイルで模様替えをしたり、グラスハンガーを設置したり。玄関先にはステンドガラスのアクセントが映える。2階は、既存の壁を撤去して広々としたフリースペースに変更。ドミノであれば床や梁に傷が残りづらく、補修もほとんど不要だという。実際に元々壁があった場所の床を見てみても、ほとんどその形跡は分からなかった。

ちなみに、カラフルなウォールペイントなどは同社の女性社員がDIYに挑戦。住まい手自身が暮らしを作れる魅力も実証済みだ。

「みなさん家を一度作ったら、簡単に変えられないと思っていますよね。だから慎重になって、今やりたいことをあきらめてしまっています。でもそれは言わば“だぼだぼの服を着ている”ようなものだと思うのです。もっとその時の体にあったものを着られた方が嬉しいですよね。将来は将来、今やりたい暮らしを実現して、将来変化があればそれに合わせて変えていけばいい。その自由度を『木造ドミノ住宅』では実現しているのです」(迎川氏)。

しかもその家は環境に優しく永く住める家だ。家族が増えたら? 家族が減ったら? 家を手に入れるには将来をよくよく考えて答えを出さなければならないと思っていたが、もっと「今」を楽しんでもいいのかもしれない。そう考え直させてくれる新しいカタチの家がここに存在した。

2014年 02月26日 09時51分