自分の手元で全国8エリアの新旧地図を比較

制作者の谷謙二先生。公表されたのは2013年9月。8月に制作を開始し、地図のアップロード、画像の分割にそれぞれ1週間かかったという制作者の谷謙二先生。公表されたのは2013年9月。8月に制作を開始し、地図のアップロード、画像の分割にそれぞれ1週間かかったという

東日本大震災後、自分が住んでいる土地の来歴を知ろうと、各地の図書館には旧版地図を閲覧に来る人が増えたという。だが、普段、地図に慣れている人でなければ古い地図は読みにくい。時代によっては鉄道、道路がなく、地名も現在と異なっているためで、目標物がないので、どこを見ているのか、それが現在のどこに当たるのかが分かりにくいのである。

そんな古い地図の問題点を、現在の地図と並べ、古い地図の上に載せたカーソルが現在の地図上にも出る、古い地図と現在の地図が連動して動くという仕組みでクリアしたのが埼玉大学教育学部の谷謙二先生による今昔マップon the web。先行に「今昔マップ2」という、古い地図をダウンロードして使うWindows版ソフトがあり、私も愛用していたのだが、地図は情報量が多く、ダウンロードには時間がかかる。また、システムが古くなっていたこと、高速で常時接続が可能になったこともあり、新しくweb版を作ることにしたのだという。

このソフトで見られるのは首都圏、中京圏、京阪神圏、札幌、仙台、広島、福岡・北九州、岩手県・宮城県・福島県の海岸部。年代としては、明治から現在まで。収録されている旧版地形図は1759枚に及ぶ。

埋め立て地、川跡など災害に弱い場所を過去の地図から探す

湾岸エリアの今、昔。かつては佃、月島しかなく、それ以外の土地は後世になって埋め立てられたことが分かる湾岸エリアの今、昔。かつては佃、月島しかなく、それ以外の土地は後世になって埋め立てられたことが分かる

では、この地図を住まい選びにどう生かすか。分かりやすいのは、埋め立て地や川の跡などを調べること。ご存じのように、埋め立て地、川跡は一般に災害に弱い。埋め立て年代、方法によっても異なるが、そうした場所であることを知り、備えることは防災上大事なことである。

「湾岸を見てみると昔の海岸線がそのまま道路になっていることや、東海道線はかつて海岸ぎりぎりを走っていたことが分かりますし、自分の住んでいる場所の近くを昔から順に見ていくと、かつてあった川が無くなっていることなどを発見することもあるかもしれません」。

私も自分の住んでいる場所の周辺を見てみると、1970年代まであった川が1980年代になって埋め立てられており、現在は緑道に。都内にはこうした緑道が多いので注意が必要だ。また、名古屋のようにかつてはため池が多かったような場所も時系列で地図を見ると、発見があるかもしれない。

その際、意識したいのは日本が大きく発展した昭和30年代から40年代の、いわゆる高度経済成長期。この時代以前の土地利用は土地の高低に従ったものが中心だったが、この時代以降、日本の国土は大きく改変されている。「1970年を境にその前後を比べてみると、変化に気づきやすいと思います」。

土地の改変状況、高低などを読み取る

標高の不透明度を上げて皇居付近を見たもの。明らかに高台になっていることが分かる標高の不透明度を上げて皇居付近を見たもの。明らかに高台になっていることが分かる

土地の改変では崖を削ったり、谷を埋めたりする造成でも、方法によっては災害に弱くなる。ただ、これについては等高線から土地の高低、尾根、谷などが分からないと、高低差がなくなった=削られた、谷がなくなった=埋められたなどの改変状況が読み取れないので、まずはその読み方に慣れることが必要。今昔マップon the webはスマホでも見られるので、地図を手にして高低差のあるところを歩いてみると、等高線の意味が理解できるようになる。試してみていただきたい。

ちなみに造成方法では盛土(もりど。土を盛って造成)という方法に危険があると言われるが、これは地形図、現地を見ただけでは判断しにくいのが現実。土地が改変されていることが分かったら、造成方法については行政、造成した事業者などに聞いてみると良いだろう。

土地の高低も見ることができる。左側に不透明度という項目があり、そこにある標高、地図という選択肢のうち、標高の不透明度を上げていくと色分けが明確になり、高低が分かる仕組みだ。ただし、100%にすると地図が見えなくなってしまうので、適当に動かしながら、その時に見たいものを優先すると良いだろう。

街区の形から、その街が作られた年代が分かることも

品川駅とそのすぐ脇にあった各宮家の邸宅。現在はホテルになっており、敷地内には旧宮家の建造物が残る品川駅とそのすぐ脇にあった各宮家の邸宅。現在はホテルになっており、敷地内には旧宮家の建造物が残る

地図からは街の作られた時代も分かる。「四角い街区は戦前に耕地整理(*1)によって作られた場合が多く、公園、道路のすみ切り(*2)がないなど、現在、宅地という観点で見た時には不足があります。また、私道がないとアプローチできない区画が生じやすく、建替えできないという問題を抱えていることも多いようです。一方で細長い街区はそれ以降に宅地を意識して作られたもので、それ以前のものに比べると現代の生活にマッチ、暮らしやすいといえますね」。

個人的には●●邸などと、お屋敷の存在が分かる点も面白い。最近、分譲マンションの広告ではかつてのお屋敷跡ということをことさらに言いたがるが、それがいつの時代にどのくらいの期間、利用されていたかなど、この地図を見れば一目瞭然である。昔の地名を知る、過去にあった公共機関、寺社を知るなど、郷土の歴史を学ぶためにも役立つだろう。

2000年半ば以降、地図の上に情報を重ね合わせる技術が進み、かつ通信のスピードも速くなり、最近では簡単に複数の情報を一度に読み取れるような地図も多数開発されている。文章と違い、一目で情報が認識できるのが地図のすごいところ。上手に利用して、安全な住まい選びに役立てていただきたい。


*1、簡単に言うと、農地を区画整理することで耕作の効率をあげようとすること。昭和7年くらいまではこの方法で宅地が作られることがあった。
*2、一定の幅員未満の道路が交わる角に接する敷地で、敷地の角の一定面積を空地にしなくてはいけないという建築制限。

【今昔マップon the webはこちらから】
http://ktgis.net/kjmapw/index.html

2013年 12月10日 10時12分